再会
高速で飛べるように改良したスレイサに乗ったフェルサがテスジェペに到着したのは半日してからだった。
焼かれた大地を空から眺める度にフェルサの心が痛んだ。
テスジェペの地下街の入口に着陸して操縦席から降りたフェルサをラックが迎えた。
「会いたかったぜ。フェルサ」
「ああ、俺もだ」
フェルサはラックと握手をして喜んだ。
「全く、たまには連絡しろよな。お前の兄貴としては辛いんだからな」
「何で勝手に俺の兄貴になってんだよ。でも嬉しいよ」
二人は話しながら地下街に入った。
「ベリフとチャミはゾルサムで町の立て直しに帰ったよ。五日後に来る予定さ」
「……レンディは?」
「ああ、いるよ。この作戦のリーダーだよ。コンファはモスランダに帰ったよ」
「そうなんだ。レンディは一人で頑張っているんだな」
「ちょっとカリカリ気味だけどな。まあフェルサが来ると更にカリカリしそうだが」
「そう言うなよ。あいつも必死なんだ」
フェルサはため息をついて微笑んだ。
研究室に入るとレンディが技術者たちに作戦の説明をしていた。レンディとフェルサは目が会ったがお互いにすぐに目をそらした。
「よお、レンディ。大変だな」
「全く。お前も手伝えよ。フェルサ、久しぶりだな」
さっきのよそよそしい雰囲気と変わってレンディの顔が穏やかになった。
「ああ、レンディも元気そうだな。それとごめん……あの時、食ってかかって」
「気にするな。私も言い過ぎたと思っている。すまなかったな。でもお前にはお前の戦いをして欲しかったのは本当だ」
フェルサも「ああ、わかっているよ」と明るく答えた。
「お前はやっぱり血より油の匂いが似合っている。設計図の件だな。もう頼んである」
レンディは研究員から薄型の端末を受け取るとそれをフェルサに渡した。
「ありがとう。俺達も戦えるよ」
「良かった。少し、話をしないか?」
近くの席でラックも含めて三人は話をした。
「そうか……コンファが長老の代理になったんだ」
「ああ、私が戻るべき所だったんだが、ここの長老と父上が話し合ってそうなったんだ。ベリフ達は一旦帰る事になったが、それは向こうでの仕事を引き継ぐ為で終わったら戻ってくるようになっているよ」
「まあ、そういう事だよ」
ラックが水を飲みながら答えた。フェルサは笑った。
「お前は本当に変わらないな。今何をやっているんだ」
「壊れたギランクスに侵入してお宝を盗む計画」
「ラック……そんな事を考えている暇があるなら私達を手伝えよ」
レンディがため息をついて呆れた。
「俺、そういうみんなで一緒に頑張ろうとか向いてないし」
「ああ、わかるわ。それ。窮屈だもんな。ハハハ似ているよな」
二人が明るく話しているとレンディが「お前ら……」と睨んだ。
「いや、そういう訳じゃないんだ。じゃあ俺、戻るわ。作戦近いんだろう?必ず応援に来るからさ。頑張れよ」
フェルサが苦笑しながら言って立ち上がった。
「ああ、待っているぞ」
レンディが微笑んで右手を差し出した。フェルサはレンディと握手した後、ラックと一緒に部屋を出た。
「レンディ、痩せたな……」
フェルサが呟いた。
「ああ、親父から重大な責任負わされて気を張ってさ。見ていると辛くなるよ」
「あいつ、いつもそうだもんな。家系ばかり優先で自分の気持ちは後回しでさ」
「だけどそれであいつは強くなれたんだろう。俺はいつもフラフラしているけどさ、そういう所はあいつを尊敬しているんだ」
フェルサは「へえ、意外だな」とラックを見た。
「フェルサだってそういうレンディに言われたから、おとなしくグノンバルに行って修業しているんだろう」
「まあな。俺達も頑張らないとな」
しばらく歩きながら話をすると町の出口に来た。
二人は別れの挨拶を交わしてフェルサはスレイサで帰路についた。
「レンディ、待っていろよ」
フェルサは機体の下に広がる雲の海を眺めて呟いた。
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