第3話:エルフなようせいおー
勇者リサ・オノデラが異界より召喚されてから二年と数か月。
三人での旅は未だ続いていた。
旅の道中で壊滅させた、大規模な盗賊団。
その本拠地で解放した希少種族たち。
中でも、半妖精と呼ばれる者達を無事に国へ送り届けることをリサが提案―――半妖精の国家へ行きたがったことで、彼ら三人はロンディ山脈の奥地へと初めて足を踏み入れることになり。
「秘境国家エルシード……、か」
「凄い……! これが……」
「あーー。何か……、虚しくなってきた」
「―――え、何で……?」
エルシード。
単一の国家としての歴史、王家としての歴史ならば、それこそ大陸にこの国より繁栄と衰亡を知るものはないだろう。
数千年を優に超える歴史を持つ、いにしえの大国―――その切り株に生まれた新たなる芽。
そこは、ソロモン等が今まで巡った都市の中でも、一、二を争う程に進んだ文明と言えた。
山脈の下層に位置する巨大な森林部の中とは思えない程に拓けた視界には そこかしこに水路が通っており、舗装された石造りの街路が持つ、白と水の青が映える景色。
通りも広く、行き交う馬車を引く馬など、足が六本存在する紛れもない魔物で。
彼等半妖精もまた、好奇の目で三人を伺う。
そんな光景を目にした者達の反応は三者三様で。
「本当に、凄いです……。教国の都にも引けを取りませんね。しかも、水の都? これが、山脈の奥地に存在するなんて」
「―――わは……、はーー……」
リサは夢を見ているのではないだろうかという思考から抜け出せない。
強制的に、征く全てが観光地となった彼女の日常において、これ程までに完成された観光名所はいつぶりだろうか、と。
パンを求める物乞いの姿。
市民でありながら貧しい装いの人々。
そういった悲しみが一つもない、と。
覗き込んだ水面に反射した光に目を細めつつ、ただ目の前の景色に感じ入り。
「……ところで。さっきから何やってるんですか? ソロモン」
だからこそ余計に目に入るソレ。
魂の抜けた顔をしているソロモンへと声を掛けるが。
「いやさ……。僕がどれだけ小さな世界で生きてきたのかを思い知らされてるような気がして……わはぁ」
ソロモンもまた、この景色に感じ入っていた。
反応こそ違うものの、ソレは間違いなく……。
「行くぞ、二人共。無事に国へ送り届けたとて、話は通しておく必要があるだろう」
「「!」」
「世界を知る事。半妖精らを無事に送り届ける事。どちらも、あの城まで行って初めて半ばだ。その為にここまで来たのだろう?」
「―――シディアンって、本当……」
「ここまで反応薄いといっそ魂抜けてますね、貴方も」
………。
……………。
「まさか、二人も勇者様と会えるなんてーー。しかも初です、わたし初勇者ですよ? 本当、よくぞ来てくれましたーー」
「「……………」」
「エルシード国現王ティアナ・サクス・エルシード・ローレンティア。アナでも、ティアでも、ティアナでも。好きに呼んでくださいねーー」
これが、秘境国家を束ねる長命種の王なのか? と。
その後、無事に王宮へは通された三人だったが。
これまでの道中で謁見というものにも若干の慣れが生じていた故、彼等は完全にペースを乱され。
表情の死んだ守衛たち。
あわただしく動き回る学者風の文官。
形式通りの挨拶が落ち着く頃、ソロモンらは気付く。
都市を歩いていた頃こそあまり気にはしなかったものの、城内の雰囲気はあまりに物々しく。
「……あーーっと。歓迎されてないなら、すぐ出てきますよ? 僕達」
「です」
「―――ふぇ?」
或いは、そういう事なのかと。
遠慮がちに申し出た二人へ、女王は間の抜けた顔を見せる。
「あぁーー。そうじゃないんですよーー」
「そうですねぇーー」、と。
まるで緊張感のない抑揚。
ならばこの物々しさは何なのか、と。
疑問を呈しようにも霧散する緊張感は、或いはこれこそが女王の策なのか……、と。
ソロモン等の邪推が深まる頃。
「そこからの話は私がしましょう、ティアナ」
謁見の間の大扉から、良い意味で落ち着きのある女性が現れる。
装いもまた、豪奢とは思わぬ範囲に高貴さを感じさせ……女王をこのように呼べる存在である事を踏まえれば、この半妖精もまた王家に連なる事が予想できた。
「歓迎しますよ。勇者ソロモン、そして勇者リサ・オノデラ」
「「……………」」
「碌な歓待も出来ず、必要のない気を使わせてしまい―――申し訳ありません。今現在、エルシードは未知の脅威に晒されているのです」
………。
先代女王を名乗った女性の口から語られる、国に迫る脅威。
脳天に弓を射かけられても、倒れる事無く進み続ける。
四肢を切り落としても、即座に再生する異形の存在。
「それは、アンデットとも異なる存在。伝承に存在する―――魔人、とでも呼称すべきでしょうか」
「魔人?」
「……ですか?」
それは、ソロモンとリサにとって初めての名で。
「一部の宗教国に伝わる伝説上の存在ですねーー。魔素の異常適応により発生した厄災の魔、とも。淵冥神の御使いと取引してしまった成れ果ての生、とも呼ばれています。発生要因は完全に不明ですけど。そんなのが、なんとなんとの大量発生ですーー」
「現在は【エブリース国】を始めとする近隣国家と連携して発生源の捜査に当たってはいますが、何も分かってはいない状況にあり……」
「僕達、協力します!」
「なにか私達に出来ることはありませんか?」
………。
……………。
「―――ふふふ」
「ふふっ」
何を言われるでもなく、即座に反応を見せた勇者ら。
女王たちは、その様子にとても満足で。
「やはり、貴方達もまた、伝えられるべき存在……―――ティアナ」
「はーーぃ、お母さま。先に、ですねーー? ささ、皆さん私について来てくださいな」
玉座をぴょんと飛び降り。
先導するように歩いていくティアナ。
果たして、歴史上を返してこのような謁見の終了があったかと。
これにはさすがに面食らいながらも、三人は揚々と歩いていく女王に続くが。
「剣士シディアン」
謁見の間、その大扉を潜るところで呼び止められる剣士。
声をかけたのは、女王ティアナと同様―――否、彼女より濃い金色の長髪を持ち、翠の瞳を持つ少女。
気の強そうな面こそあれ、その容姿はやはり女王に似通った所もあり。
「貴方は残りなさい。話があります」
「―――あの。貴女は?」
「セレーネ・アルス・エルシード・ローレンティア……現王ティアナの妹です。セレーネ、と。そう呼んでいただければ。勇者様オノデラさま」
「―――みなさーーん? こっちですよ? 迷っちゃいますよーー?」
会話の最中であろうとお構いなしという事なのか。
声に彼等が振り向けば、既に小さくなってる姿。
果たして先導する気があるのだろうかと、しかしどうすべきかと迷う二人へ、剣士はひらひらと手を振り。
「―――ソロモン。行きましょう」
「うん? ……うーーん」
やがて、勇者らはティアナを追い小走りに去っていく。
………。
それを見届け。
「何故―――何故っ、貴方が勇者さまたちといるのですかッ!?」
音を完全に遮断する謁見の空間。
しかし、それがあって尚軽率ともとれる言葉を叫ぶ少女。
「別任務の兼ね合いです、殿下」
「―――ならば、その説明をっ」
「セレーネ」
「……お母様」
「私達に、魔王の騎士を従えるだけの権はありません。それ以上はなりませんよ」
少女を制し、宥める女性。
しかし、彼女もまた剣士がこの場にいる理由を求めているのは明白で。
「女王ミラミリス」
「元、ですよ。騎士アルモス。既に王位はティアナに譲ったと、使いを送らせた筈です」
「……だが。未だ細かな政は貴方がしている」
シディアンは騎士としての礼を取り、先代女王へ敬意を払う。
その姿に、やはりこの男は変わらないと。
そう理解した彼女は、目を細め。
「魔王の騎士―――アルモス。情報に長けた貴方の事、旅中でも聞いていた筈です。或いは、旅そのものがその為の任なのかもしれませんが。貴方は、この件についてどう考えますか?」
「―――魔人。それを可能とするのは、我が国の技術、といえるでしょう。それ以外には、あり得ないと」
「では、やはりこの国へは……いえ。貴方が勇者様たちと共にいるのは」
「……その調査の為。“念話”を始めとする極秘開発の魔術群に、魔人の特徴を持った人間の襲撃。これらの情報が此方側へ流れているのは、あり得ない。重ね―――許される事ではない」
一体、何者がその様な事を。
調査すれども分からなかった。
だからこそ、彼は国を離れ長期の旅として情報の収集を行っていた。
その過程で勇者らと邂逅したのは、完全な偶然だが。
「しかし―――私は、彼等に。あの二人に掛けてみることにしました。この件は、お任せを。私が、そして勇者たちが、必ずや収めましょう」
「……ふふ。そう、ですか」
騎士の言葉に、彼女は満足げに頷くも。
傍らの少女は未だ納得のいかない表情で。
そんな少女の頭に手を伸ばし、先代女王は微笑む。
「お母さま」
「大丈夫ですよ、セレーネ。―――無論、信じますとも。貴方が約束を違えた事は、一度としてないのですから」
◇
「何で、シディアンだけ別行動なんだろ。……ホントに大丈夫かな。寡黙だし……ちゃんと話とか出来てるのかな。だんまりだと向こうも困るだろうし。迷子とかなってない?」
「お城も広そうですし……、気になりますよね、保護者側としては。―――ティアナ様」
「さぁ、何ででしょうねーー?」
国家を束ねている筈の女王は、欠伸でもするかのように呑気な声色で答える。
実際、寝てしまいそうなほど景色も暗い。
地下室へ向かっているのだろう。
薄暗い階段を降りていく程に、感じる肌寒さも増し。
「さ、着きましたよーー」
「「―――――」」
辿り着いた場所、その景色に。
都市へ着いた時と同じ程、或いはそれ以上の衝撃を受ける二人。
「これ……もしかして」
「歴代勇者―――ですか?」
「まさしくそうです」
月夜のような優しい光が照らす、細長の空間。
そこに存在していたのは一……二……都合六区画に分けられた石像と、その台座で。
ソロモンとリサ……二人は知っている。
何故か、瞬時に理解できた。
ここに存在する像は、全てが歴代の召喚勇者のものであるのだと。
「―――はい。この空間こそ、数百年に及ぶあなた達勇者の歴史を記録する聖域。異界の勇者が主でこそありますが、同時期に活躍していた場合は六大神の加護を授かった勇者も共に祀られる事になっています。手前が、先代の勇者様ですね」
「……悲劇の勇者ムラサ、ですか。歴代勇者、皆という事は……」
「僕とリサもここに並ぶことになる……ってコト?」
「そうなりますねーー。後で型を取るのに協力してください」
型を取る。
その言葉にどのような方法なのかを想像しつつ。
同時に、頬を染める二人。
「何か恥ずかしいね、それ」
「ずっと残るわけですからね、私達の顔―――かお?」
先代勇者の石像に近付いて、リサが気付く。
いや、あるいはこの石像だけか……と。
順々に確認し、やはり全てがそうなのだと気付く。
六区画が存在する石像群だが―――それ等には、表情がない。
目や鼻、口がないわけではないが……絶妙に人相が分からぬようにぼかされている。
「あぁ。決まりなんです。外見は完璧に、しかし容貌はぼかすように……って。顔に自信のない方でも居たんじゃないですかねーー」
「……のっぺらぼうですね」
「それはそれで怖いような」
「良いじゃないですかぁ。後世まで自分の逸話が語り継がれるって。憧れますよーー?」
「その後世まで生きてそうな人が言うと微妙ですけど」
「―――それに、寂しいじゃないですか」
「……寂しい、ですか?」
「だって……どれだけ賞賛されるような、輝かんばかりの偉業を成し遂げても、時が流れるうちに、忘れられちゃうんですよ? 物語が残ったとして、その多くは大まかな旅の流れのみ。旅立ち、強くなり、そして斃れた。或いは、めでたしめでたし……幸せに暮らしました、と。そんなあっさりとした結果のみ。彼等の足跡……、その大半は、全部忘れられちゃうんですよ?」
それだけって、なんの物語でもないじゃないですか……と。
目を細める女王。
その表情に、二人は初めてこの女性の持つ思慮の片鱗を感じ。
「だから、勇者さまの仰る通り。後世まで生きているであろう、長い寿命を持つ私達だけでも覚えておいてあげるんです。語り継いであげるんです。それが、我々の役目。そう思いますよ? 私は」
改めて、ソロモンは思う。
幾度か謁見した者達と重ね、気付く。
目の前の女性は、確かに半妖精を束ねるに足る思慮深さを持つ王なのだ、と。
その後。
三人は、ゆったりと石像を見て回る事になったが。
「―――ところで、リサ。この文字読める?」
「……私も読めないんです」
そこには、障害が一つ。
異界の勇者は、この世界における主要な言語を解する力を授かるが。
そんな彼女でも読めない文字の存在で。
「ティアナ様。この文字は?」
「あ、これです? これはですね―――」
「―――これは……!?」
「「あ、出た」」
リサの問いかけにえへんと胸を張る女王だったが。
彼女の説明より早く、空間に新たな客人が現れ。
「大丈夫だった? シディアン」
「お話できましたか? 迷子になりませんでしたか?」
心配そうにのぞき込む二人を無視するまま。
現れた剣士は、まず空間そのものに目を見張り。
「―――始まりの勇者。堕落の勇者。伝道の勇者。双刃の勇者。厄災の勇者。悲劇の勇者……歴代勇者の像が、全て……」
「そういえばシディアンって難しい言語の本とか偶に読んでたりするよね。こういう未知の言語って憧れない?」
太古の記憶に思いを馳せるは男のロマンだと。
常日頃からそのような話題を振り続けるソロモンは、剣士をズズイと台座の元へと引っ張る。
「な……!?」
「あ、反応した」
「今日は反応が良いんですね」
普段ならば軽く付き合う程度に収めるだろう剣士は、ソロモンの言葉にその文字列を一瞥するや膝をつき。
台座に彫られた文字を指で幾度も撫でる。
「違う。だが……」
「すご……あのシディアンが」
「こんなに動揺してるの、初めてかもしれませんね」
「―――始まりの勇者レート。異界の神の加護により果てなる身体強化を与えられし者。数多の上位魔族を退けるが、魔王討伐に赴き帰らぬモノとなる……」
「「え」」
それは。
紛れもなく、台座に刻まれた文字を読んでいるかのような。
「―――読めるの!? シディアン!!」
「凄いです!」
「……わたしも、素直に驚きですねーー」
「女王ティアナ。この文字を、一体何処で……?」
「これですか? 古く、千年以上前。東よりやってきた亜人族の賢者によって伝えられた言語です。この国でも読める人は長老衆のごく僅かで……。で、確かぁ、ろーど? ……ろすと? いやいや―――んぅ?」
「ロイド―――あぁ、そうです! ……東の亜人ロイド!」
「―――――」
「……シディアン?」
思い出した高揚にはしゃぐかのような女王へ注意を向けていたリサは気付かなかったが。
ソロモンは、シディアンが今まで見せた事のない哀愁を漂わせていることに気付く。
が、それも一瞬で。
「……東の亜人。数多の技術を伝えた、流浪の賢者、か」
「えぇーー、その通り! この文字も、その賢者が伝えたとされているんです。……まぁ、名前に関しては諸説ありますけどねーー。そもそも、亜人ではなく魔物であったとか。色々、色々ですよ」
「東の亜人……確かに、そのような名前を書籍で読んだ覚えがありますね」
「―――え。もしかして知らないのボクだけ!?」
「「……………」」
「嘘ぉ!? 僕だって本は沢山―――」
「英雄譚とか冒険ものの話ばっかりですよね」
………。
……………。
「―――――伝令―――伝令ッッ!!」
歴代勇者らを祀る聖域から戻り。
今一度今後について女王と話す事になったソロモン等は、応接の部屋へと通される事になったが。
「エブリース国が……我がエルシードへ……、宣戦布告をッ!!」
彼等が話し合う部屋へ転がるようにして飛び込んできた守衛が伝えたソレは、予定全てを破壊するに足るもので。
「どういう事なのですか!? これは!!」
「セレーネ。落ち着いてください」
曰く、エブリースはエルシードと距離を近くする大陸中央部の国で、共に魔人への対処を行っていた国家。
規模としては都市国家並みではあるが、ここ数十年―――これまで友好関係を保っていた国家が、突然に宣戦布告を仕掛けてきたのだ。
取り乱すなという方が無理があるのかもしれない。
「―――かの国は……確か、国王は老齢だった筈だが」
「……えぇ。ほんの三年前に代替わりしたとの使節団が、我が国に。ですが、ここ近年の関係も非常に良好で……こんなはず」
「あの。国が丸々何者かに乗っ取られた……とか?」
「―――えぇッ!?」
小難しい話は分からぬと。
もっぱらリアクション役に徹していたソロモンだが、その言葉だけは理解し、衝撃を覚えたように目を吊り上げる。
「あり得るの!? そんな事!」
「あり得るあり得ないの話ではなく。事実として、そうなっていると考えても良いという事だ。むしろ、いい機会だな。こういった閉所での戦闘。対軍戦闘に慣れておく必要はあるだろう」
「……本当に何なんですかね、この人」
「対応力高すぎだよシディアンは!?」
あくまで一つの説として述べただけのリサだったが。
強く肯定するまま、意味の分からない事を言い始めるシディアンへはソロモンと共に目を剥き。
一度鎮まった空間。
ソロモンとリサへ視線を向けたシディアンは、重々しく呟く。
「ならば、国を出るか?」
「「…………」」
「今なら、まだ関わり合いにならぬで通せるかもしれない。彼女等には、コッソリと……」
「私達の前で言いますか!!」
「―――セレーネ、落ち着いて……」
……単純に。
今回ばかりは、勇者らも迷いがあった。
ただ単純に悪しきを挫き、弱きを助けるというのなら分かりやすいから。
しかし。
旅の中で、国家というものの何たるかを少しでも理解していた彼等は。
それを敵に回す―――罪のない一般の人々まで巻き込む可能性というものを考慮していたリサは、すぐにソレを断じることは出来ず。
「―――ううん。やっぱり、滞在するよ」
ソロモンが、腹を決めたように頷く。
「このまま終わるとは思えないんだもん」
「……また、それですか?」
それは、ある種の予知にも近しい能力。
旅の予定など、大まかなものは常にリサが決めることになっているが、この突発的なルート変更などをソロモンが提案する事は非常に多く。
その上で、それに従う事で二人は多くの冒険を経験してきた。
ある意味では、信じるに値する情報であり。
「それに、僕達が討伐した盗賊たちは希少種族を狙ってた。リーダーが言ってたよね? 別に、売り払うわけではないって」
「「…………」」
「それってさ。多分、何かもっと別の目的があったんだ。それこそ……もっと大きな、何か。一盗賊団のもうけ話で終わるものじゃない、陰謀染みた何かが」
ソロモンという元村人は、教育という教育は受けてはいないものの、思考力においては目を見張るものがあるのは確かで。
「元より、私は賛成だ」
「……シディアンまで」
「勿論、全てを救えるなんて思ってないよ。ただ、目の前にいる人を救いたいだけなんだ。それすら無理っていうのなら、何一つできないよね? リサ。僕達は、勇者になりたいんだから」
「勇者ソロモン?」
「……もうなってますよーー?」
彼の言葉に、怪訝な顔を見せるティアナとセレーネ。
ソロモンは、二人へ顔をくしゃりと歪めて、人の良い満面の笑みを見せる。
「そうじゃないんだ。ね? リサ」
「……です、ね。……なら、私も」
「そうさ。勇者だから、救うんじゃない。沢山救ったから、勇者になるんだ。僕たちの物語は、まだまだこれからなんだ。―――ね、女王様! 僕達を祀る石像の文字、沢山書いてくれるよね!?」
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