第32話 悪い話
昼食を食べ終わった後、洗い物などの片付けを黒羽達に任せて大人数で遊べるものを探すために部屋に戻った。
探してみると、大人数で遊べるボードゲームが見つかったのでボードゲームを持ってリビングに戻ると、片付けは終わったようで談笑して待っていた。
「取り合えず、八人で遊べるボードゲームが見つかった」
「……十六夜、虐殺される未来しか見えないんだが?」
「そうか。未来が見えるなら勝てるかもしれないぞ、京谷」
「だから、虐殺される未来しか見えないって言ってるだろ!?」
「冗談だからそんな大声出すな」
全く、マジレスじゃなくてもう少し面白い返しは出来ないのか?
「安心しろ、戦略も大事だが運要素が大きいボードゲームだから一方的な結果にはならんさ」
「……戦略も運もいい奴が相手の場合どうしたらいいんだ?」
「勝ち目がないから諦めろ」
「駄目じゃないか!?」
そんなこと言われてもな。
戦略と運の両方が良い奴が勝てないゲームなんてそもそもあるのか?
そんな奴が相手なら勝ち目が本当にない。
「ただの遊びだから勝ち負けに拘らず楽しめばいいだろうに」
「……まあ、それもそうだな」
「ルールとかは教えてやるから準備するぞ」
俺と黒羽を中心にしてボードゲームの準備を進める。
準備をした後は簡単にルールの説明をしてボードゲームを始める。
澪と龍桜はすぐにルールを理解して各々自分なりの戦略で遊び始める。
優香と京谷もルールは分かったようだが、まだ戦略などは思いついてなさそうだ。
唯と輝夜に関しては遊ぶのに問題ない程度には理解してるようだし、大丈夫そうだな。
「そういえば、十六夜」
「ん?どうしたんですか、会長?ルールが分からなくて泣きそうなんですか?」
「お前は話すたびに喧嘩を売らないと気が済まないのか?」
「そんなわけないじゃないですか。それでどうしたんですか?」
話しかけてきた龍桜に視線も向けずに適当に返すと、龍桜からため息が聞こえてきた。
俺の適当な返しをいつものことと諦めたのだろう。
龍桜のいつも以上に真剣な声が聞こえた。
「君と同じクラスで学校一の美少女、高橋加奈のことをどう思っている」
「どう思ってるか…………ん?高橋さん?」
予想外の人物の名前に視線を龍桜に向けると、龍桜は真剣な顔でこちらを見ていた。
龍桜の言葉に全員の視線が俺に集まる。
そもそもの話なぜ、高橋さんの名前がここで出て来るんだ?
「高橋さんがどうかしたのか?」
「細かいことは気にせずに質問に答えてくれ」
「高橋さんのことをどう思ってるかって……」
どうとも思ってないんだが、なんて答えたらいいんだ?
綺麗な人でたくさんの人に囲まれて大変そうだが、そんな客観的な意見が聞きたいわけじゃないだろうしな。
俺が一生懸命に考えているせいで、全員がボードゲームのことなど忘れて真剣な顔で俺を見て来る。
「そうだな。出来れば関わりたくない相手だな」
「ほー、珍しい意見だな。普通は出来れば関わりたいと思うものだろう」
「はあ、あんな分かりやすい高嶺の花に関わりたいわけないだろ」
「男なら手を伸ばすくらいしたらどうだ。あんなに綺麗で可愛い美少女はまずいないぞ」
「別に高橋さん事態にそこまで興味ないですし、付き合いたいとも思わないので」
「あんないい子に興味が無い!?」
俺の言葉を聞いて龍桜が目を見開いて驚いているが、そんなことは知ったことではない。
そもそも美少女だけで付き合いたいなんて思うほど恋愛に対して積極的ではない。
「会長、十六夜が高橋さんと関わりたくないのは、彼女と関わると自然とたくさんの人に囲まれることになるからですよ」
「……なるほど、確かに彼女はいつもたくさんの人に囲まれているな」
「なんで、十六夜が学校で関わりたくない人ランキングで圧倒的な一位ですよ、高橋さん」
「まあ、学校で十六夜が関わりたいと思ってる人なんていないと思うけどね」
「確かに、十六夜が自分から人に話しかけるところを想像できない」
なぜだろうか、事実を言われているだけなのに腹が立つのは。
京谷も優香も龍桜も間違ったことは何も言ってないのに煽られてる気がしてならない。
いや、煽ってるのか?煽ってるんだな?
よし、何も言い返せないからボードゲームでボコボコにしてやる。
「そもそもどうして高橋さんのことを聞いたんですか?」
「ん?二学期から彼女も生徒会に入るからだよ」
「…………は?」
今なんて言ったこいつ?
二学期から高橋さんが生徒会に入る?
何か?新手の嫌がらせか?
順番が回ってきたが、今はボードゲームどころじゃない。
「どうして高橋さんが生徒会に入るんですか?」
「お前のせいだよ」
「は?」
龍桜の言ってることが分からずに素っ頓狂な声が出たが、それどころではない。
俺のせい?なんで?
え?本当に俺に対する嫌がらせのためだけに高橋さんを生徒会に入れる気なのか?
「分からないって顔してるな」
「それはそうでしょう。俺のせいで入れることになったと言われても心当たりが全くないので」
「本来なら澪と十六夜の二人が一年のメンバーになる予定だったんだ」
「それがどうして高橋さんも入ることになったんですか?」
俺が龍桜に問いかけると、全員が視線を龍桜に向ける。
龍桜は視線が集中していることなど気にせずに俺にジトっとした目を向けて続ける。
「お前が人と関わる仕事が嫌だと言ったからだろうが」
「……あ」
「あ、じゃない!?澪も人と関わりたがらないが、お前は初対面の相手とまともに会話も出来ないじゃないか!?」
「まさか、対人関係の仕事を任せるために高橋さんを?」
「そうだ。加奈ほど対人スキルの高い一年はいないし、成績も上位に入っているからな」
「…………対人スキルはゼロだな、コミュニケーション能力なんて生まれた時からなかった」
龍桜のジトっとした目に申し訳なくなり視線を逸らす。
視線を逸らすと、黒羽と唯以外が龍桜と同じでジトっとした目を俺に向けて来るのが見えた。
黒羽は十六夜さんらしいなっと言いたそうな顔で微笑んでいるが、唯に関しては苦笑している。
コミュニケーション能力がないことは自覚してるからそんな目で見ないで欲しい。
これに関しては本当に申し訳ないと思っているから、そんな目をされると本当に傷つく。
「加奈と関わりたくないそうだが、お前が原因なんだ。加奈と仲良く仕事してくれるよな」
「……………………善処します」
「安心しろ、夏休みの間に仲良くなれるように私が親睦会を開いてやる」
「……出来るだけ回数を少なくしてくれると嬉しいです」
「なら、少ない回数で仲良くなることだな」
「はい……」
ああ、俺の幸せな夏休みが地獄に変わっていくのはどうしてだろうか……
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