第24話 夏休み前
期末テストが問題なく終わり、結果が張り出される日が来た。
普段学校では一人か京谷と二人で過ごしているのだが、今日は人が多い。
「唯は今回は自信ある?」
「優香と十六夜君に教えて貰ったから大分自信があります」
「俺はいつも通り平均だろうな」
「京谷には聴いてない」
「俺に対して酷くないか?」
京谷だけでなく優香に唯、そして……
「澪は自信あるのか?」
「十六夜以外には負けてないと思いますよ」
「全教科満点取る十六夜と比べるものじゃないさ」
「そういう会長はどうなんですか?」
「今回は全教科満点取れた気がするんだが、結果を見てみないと分からないな」
「わー会長すごーい」
「すごいと思うならもっと感情を込めたらどうだ」
「嫌です」
龍桜の言葉に棒読みで答えると、龍桜がジトっとした目で俺のことを見てきた。
それにしてもこいつらは何で俺についてくるんだ?
「どうしてついてくるんだって考えてるだろ」
「分かってるなら答えを教えて欲しいものだね」
「そんなことも分からないとは、本当に頭が良いのか?」
「そんなことも分からないですけど、テストで満点は取れますよ」
俺の考えてることに気づいた京谷に聞くと、なぜか龍桜が話に入って来た。
龍桜にジト目を向けて返してやると、鼻で笑われた。
「勉強しか出来ないとは寂しい男だな」
「勉強より遊ぶことの方が大好きですよ。会長こそ、俺達と一緒にいますけど友達いないんですか?」
「お前と違って私は友達がたくさんいるぞ」
「たくさんいるのに一人もついてきてくれないなんて、会長人脈ないんですね」
「お前ほどではないさ」
俺も龍桜も薄っすらと笑いながら話しているが、お互いに目が全然に笑ってない。
俺達の会話に京谷は苦笑し、澪はいつも通りと無視し、唯は怯え、優香は少し意外そうな顔をしていた。
龍桜と少しの間話していると、期末テストの結果が見えてきたので話をやめる。
突然話をやめた俺達に澪以外は驚いているが、生徒会室ではよくあることだしな。
まあ、そんなことよりテストの結果だな。
「十六夜の結果は変わらずか、優香は前より少し上がったな」
「もっと頑張らないとだめね。唯はどうだった?」
「上位三十位に入ってます!?」
「まじか、すごいじゃないか」
「優香と十六夜君のおかげです。ありがとうございました!?」
「教えたのは俺達だけど、頑張ったのは唯だろ。勉強教えてもやらない奴がここにいるからな」
お礼を言う唯に京谷を指さしながら返すと、京谷は苦笑していた。
こいつはもう少し勉強にやる気を持った方がいいな。
さて、残るは澪の結果は?
化学と英語以外が満点か、しかも化学も前回より点数が良い。
「澪も前回より点数が良くなってるな」
「ん-、英語どこかスペルミスしたかも」
「ああ、点数的にそうだろうな。これからは凡ミスも気を付けることだな」
「……十六夜はどうして凡ミスしないの?」
「見直し十回しても時間が余るからな」
澪の問いに対して返すと、周りの奴がため息をついていた。
確かに参考にならないかもしれないが、見直し以外凡ミスしない理由はないだろ。
俺達がテストの結果の確認を終えると、龍桜も確認したようで戻って来た。
「どうでした会長?」
「ああ、無事に満点だったよ」
「そうですか」
「もう少し反応があってもいいんじゃないか」
「何言っても嫌みに聞こえるでしょ」
俺の成績を指さしながら返すと、会長は肩を竦める。
「天才と思っていたが、予想以上の化け物だったようだ」
「誰が化け物だ。人より少し能力値が高いだけだよ」
「そんなわけないだろ」
「ないな」
「ないわね」
「ないですね」
「見方もいないわね」
俺の言葉に龍桜、京谷、優香、唯、澪が順番に答えた。
いや、龍桜を煽るつもりで言ったのに、なんでみんなに責められてるの?
確かに、全然少しではないけど、チートだけども、みんなで責める必要なくない?
何より、龍桜の勝ち誇った顔が腹が立つ!?
「そんなことが今日あったんだよ」
「煽ろうとした十六夜さんの自爆では?」
珍しく金曜日の夜に来た黒羽に昼のことを話すと、黒羽も見方ではなかったようだ。
え?化け物って言われたから煽ったのに、ダメだったの?
「それにしても十六夜さんが誰かを煽るなんて珍しいですね」
「ん?そうか?」
「はい、今まで誰かを煽ったことなくないですか?」
言われてみれば、誰かを煽ったことはないな。
「煽るほど気に食わない奴がいなかっただけだろ」
「まあ、十六夜さんは交友関係狭いですしね」
「……」
事実だが、直球で言わなくてよくない?
いつもより黒羽が冷たい。
「そんなことより、夕ご飯にしましょう」
「……そうだな」
これ以上話を続けても悲しくなるだけだろうし、さっさと飯食べて遊ぶか。
いつも通り黒羽が作った夕飯を食べていると、黒羽が話しかけてきた。
「十六夜さん、来週の土曜日何か用事ありますか?」
「来週の水曜から夏休みだし、予定は特にないぞ」
「なら、二人で花火大会行きませんか?」
「ああ、近所でやる奴か」
「はい、二人で浴衣着て行くの良くないですか?」
「んー」
花火大会に行くのは良いが、俺浴衣持ってないんだよな。
黒羽も結構楽しみにしてるようだし、浴衣くらい買ってもいいか。
「分かった。けど、浴衣持ってないから買いに行く時付き合えよ」
「はい、明日行きましょう」
「……もしかして、そのために今日来たのか?」
「はい」
なるほど、遊びに来たんじゃなくて、明日早く起きれるように夜更かしさせないために来たのか。
満面の笑顔で即答する黒羽の顔を見て苦笑しか出てこない。
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