第21話 黒羽との日常

 生徒会に入って一週間ちょっと経ったが、今のところ割り振られる仕事は簡単ですぐに終わる。

 その上、生徒会役員の特権で宿題が無いおかげで週末は前よりゆっくりできる。

 いつも以上に気楽な気分で寝ていると、いつも時間にインターホンがなり黒羽が来た。


「おはようございます。十六夜さん」

「おはよう。いつも通りの時間だな」


 黒羽を家に入れると、普段と違い少し荷物が多いようだ。

 今日は泊っていくのか?


「それと今日は泊っても大丈夫ですか?」

「ああ、問題ないよ。いつも通り、明日も予定はないから」

「分かりました」


 どうやら予想通りだったようだな。

 まあ、黒羽ならいつ泊まりに来ても構わないが……

 一応一人暮らしの男の部屋なんだからもう少し警戒しろよな。


「それじゃあ、お昼作ってきます」

「ああ、いつもありがとう」

「いえいえ、お気になさらず」


 お礼を言うと黒羽はいつもより少し嬉しそうに微笑んでキッチンに向かった。

 いつもあんなこと言ってるけど、やっぱりお礼言われると嬉しいんだろうな、黒羽も。

 これからはたまにはお礼を言うか。


「俺も先週買いだめした本でも読むかな」


 輝夜の買い物に付き合った結果、面白そうな本をいっぱい買っちまったからな。

 さっさと読んで消費していかないとな。


「お待たせしました」

「そんなに待ってないから気にするな」


 黒羽に返事をしながら読み終わった本を本棚に片付ける。

 俺が本棚に片付けていると、黒羽が近づいてきた。


「また、たくさん本を買ったんですね」

「ああ、広い部屋にしておいて正解だな」

「十六夜さんのペースで本を買っていたら小さい部屋だと本で埋まってしまいますからね」

「最近は一日三冊くらいしか読んでないんだけどな」

「この厚さの本を一日三冊も読むのは十六夜さんか私くらいだと思いますけど……」


 黒羽は買いだめしてある本を一冊手に取り苦笑しながら返してきた。

 まあ、前世の俺もこんな本を三冊は読めないな。

 というか、こんな大量に買うお金もなかったし、まあ、読む人もいるかもしれないがな。


「まあ、本は後にして料理が冷める前に食べようか」

「そうですね。お茶を持ってくるので先に座っていてください」

「分かった」


 黒羽に言われた通りに料理の並べられたテーブルの近くに座る。

 ん?普通家主の俺がお茶を持ってくるべきなのか?

 まあ、深く考えるべきじゃないな。

 けど、黒羽がいるからと言って任せきりになるのは悪い気もするな。


「お待たせしました。食べましょうか」

「ああ、そうだな」


 ちょうど戻ってきた黒羽が俺の隣に座り手を合わせた。

 俺も手を合わせる。


「「いただきます」」


 一緒に料理を食べ始める。

 相変わらず黒羽の料理はおいしいな。

 そうだ。

 たまには俺が料理を作ってやろうかな。


「黒羽、今晩は俺が料理作ろうか?」

「え!?どうして?私の料理に飽きてしまいましたか?」


 思いついたことを問い変えると、黒羽は驚き何か焦っているようだが?

 俺が料理をするのはそんなにおかしいことだろうか?


「いや、いつも黒羽に任せきりだからな。たまには俺がやるべきかなと」

「ああ、そういうことですか。……そうですね、たまには十六夜さんの手料理も食べたいですし、お願いします」

「分かった。じゃあ、今晩は俺が作るよ」


 黒羽は少し安心したような顔をして少し考えた後に返してきた。

 まあ、今まで作って貰ってた分、俺が出来る最高に美味しい晩御飯にしよう。

 取り合えず、晩飯の決意は置いといて、今はゆっくりと食べますか。


「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」


 食べ終わると黒羽が何も言わずに食器をまとめてキッチンに持って行った。

 相変わらず黒羽は働き者だな。

 少しは黒羽に何かお礼した方がいいだろうな。


「終わりました」

「おう、お疲れ」


 毎週のようにやっているから慣れたんだろうな……かなり、片付けが早すぎる。

 いや、少しでも長く遊ぶために早く終わらせてるのか?


「それで今日は何をするんだ?」

「ちょっと待ってください」

「ん?」


 黒羽は持ってきた荷物に近づくと何かを探し始めた。

 少しするとゲームソフトを見せてきた。


「これをやろうと思って持って来たのですが、どうですか?」

「ふむ、人生ゲームものか」

「はい。こういうゲーム十六夜さん好きですよね」

「ああ、俺は好きだから良いんだが……かなり長い間やることになると思うがいいのか?」

「はい。私もこういうゲーム好きですから」


 俺の質問に嬉しそうに微笑んで返してくれるのはいいが……

 京谷と優香は散々突き合せたせいで一緒にやってくれなくなったんだよな……


「まあ、やめたくなったらいつでも言ってくれ」

「大丈夫って言ってるのに……まあ、分かりました」


 黒羽は頬を少し膨らませて不満そうな顔をするが、すぐにいつものように微笑み了承した。

 まあ、俺がこういうゲームが好きなのは最高額を目指したり、縛りプレイをしたりいろいろ試すのが楽しいからなんだけど、本当についてこれるのかな?

 一応、やめていいって言ったから、流石に黒羽でも疲れたら言うだろう。


 一時少し前から始めたゲームは十時間ぶっ通しで続いた。

 俺と黒羽はお互いに最高額や最低額を目指したり、CPを相手に引き分けを狙ったりと様々な縛りをつけて何度かやり直しているうちに深夜になっていた。


「そろそろ飯と風呂にするか」

「そうですね。ちょうど切りが良いですし、それでどちらを先にしますか?」

「少し待ってろ、風呂掃除してくるから先に入ってこい」

「十六夜さんはどうするんですか?」

「俺は黒羽が入っている間に晩飯を作るよ」

「分かりました。お風呂に入る準備をしておきます」


 黒羽がリビングに置いてある荷物の傍に行ったので、俺は風呂場に移動して掃除をさっさと終わらせた。

 掃除を終えてすぐに風呂を沸かし、黒羽に入るように声を掛けてキッチンに向かう。


「さて、何を作りますかね」


 時間をかけて最高の料理を作ろうと思ってたんだが、遊びすぎたせいであんまり時間がないな。

 だからと言って黒羽へのお礼も兼ねてるからあんまり手を抜くことも出来ないしな。


「出来る限りに最高のものを作るか」


 それから一時間をかけて料理を作ると、ちょうどいいタイミングで黒羽が風呂から上がって来た。

 風呂上がりのせいでまだ髪が乾いてないからかタオルで水を拭き取っている。


「ちょうどいいな。けど、その前に髪を乾かすか?」

「はい、料理が少し冷めるかもしれませんが、いいですか?」

「ああ、気にしなくていい。少し冷めるくらいがちょうどいいさ」

「分かりました」


 黒羽はタオルで水を拭き取りながら持ってきた荷物の中からドライヤーを取り出した。

 髪が長いせいでまだ水が拭き取れてないようだな。


「黒羽、髪乾かすの手伝おうか?」

「え?……お願いします」

「じゃあ、ドライヤー貸してくれ」


 黒羽からドライヤーを受け取り、ドライヤーで髪を乾かしながら手櫛で髪を梳いてやる。

 黒羽の耳が少し赤い気がするが、風呂上がりだからか。

 ドライヤーで根元から毛先までしっかりと乾いたことを確認して立ち上がり声を掛ける。


「終わったぞ。じゃあ、晩飯を食べようか」

「はい」


 ん?少しいつもより嬉しそうに見えるが……俺の料理を食べれるが嬉しいからか?

 まあ、俺の手料理は我ながら美味しいからな。

 手料理で喜んでもらえるなら今度からたまには俺が作ってやるかな。

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