第11話 連休
勉強会から一週間経ち、五月初めの連休が始まった。
連休の間も勉強会をしようなどと言われたが、全力で断った。
そもそも休日は休むためにあるのに、なんでやりたくもないことをしないとならんのだ。
「あー、連休最高!」
最後の日は実家に帰ることになってるが、それ以外は特に予定ないしゆっくりと寝よう。
そんな考えをしていると、インターホンが鳴った。
まさか、あれだけ断ったのに勉強会するなんてないよな…………
「……なんだ、黒羽か」
「どうかしたんですか?」
玄関を開けた先にいたのが黒羽であったため俺は安堵のため息をついた。
俺の反応を予想していなかった黒羽は可愛らしく小首を傾げる。
「いや、優香だったら勉強やらされるからな」
「なるほど、そういえば二週間連続で勉強をさせられていたんでしたね」
「ああ、今回は全力で断ったが、もしかしたらと思ってな」
苦笑しながら優香のことを話すと、黒羽は微笑んで返してきた。
「流石の優香さんも十六夜さんが本気で嫌がることはしないと思いますよ」
「まあ、普段ならそうなんだが、今回は俺が優香に唯の勉強を押し付けたからな……」
「それは……私にもどうなるか分かりません」
「だよな……」
唯のことを話すと黒羽も苦笑しているので本当に分からないのだろう。
まあ、押し付ける時に条件を付けられたから大丈夫だとは思うが……
「そういえば、今日はどうしたんだ?」
「先週見れなかったアニメを一緒に見ようと思ってきました」
「それにしては大荷物なようだうが?」
アニメを見に来たにしては明らかに荷物が多い。
それに食料品まで買って来たみたいだし、もしかして……
「泊りで見ようと思いまして。あ、親には許可は取ってあるのでご心配なく」
「そんな心配はしてないよ。まあ、黒羽のおすすめのアニメなら徹夜でもいいか」
「お菓子とジュースも買って来たので眠くなるまでじっくりと見れますよ」
「そうだな。折角の連休だ何も気にせずに過ごすか」
「はい」
食料品を含めて色々と入っている買い物袋を持ち上げながら満面の笑みで言う黒羽。
そんな黒羽を見て俺も微笑んで返した。
黒羽と一緒にリビングに移動し、黒羽が泊まるための荷物を部屋の端に置いた。
「じゃあ、先に買って来たもの冷蔵庫に入れて昼食でも作るか」
「そうですね。私もお昼はまだ食べてませんし、私が作りますよ」
「いや、今日は俺も一緒に作るよ。二人で作った方が早いだろ」
「……そうですね。では、一緒に作りましょうか」
俺の言葉に黒羽はほんの少し考えてから頷いた。
黒羽一人に任せると、料理出来るまで俺が暇になるしな。
前は京谷や黒羽が持ってきた本があったけど、今日は何もないし。
そういえば、休日に京谷が遊びに来ないとは……
「少し意外だな」
「ん?どうかしました?」
俺の独り言に黒羽がまた可愛らしく小首を傾げる。
「連休でゆっくり遊べるのに京谷が遊びに来ないことが少し意外だっただけだ」
「京谷さんも十六夜さん以外に遊ぶ友達もいるのですから、他に予定があるのでしょう」
「それもそうだな。あいつ、俺と違って友達多いし」
「まあ、私と十六夜さんが少ないだけでしょうけどね」
「……そうだよな」
黒羽に苦笑しながら返されて俺も苦笑してしまう。
「今回は似た者同士ゆっくり楽しみましょう」
「そうだな。なら、余計な事考えるのはやめて飯作るか」
「はい」
黒羽と一緒に昼食を作り、食べている途中で黒羽に唯より美味しいと言われて心の中でガッツポーズをした。
先週の勉強会ではあれだけ自信満々で言ったのに、唯の方が美味しいなんて言われたら心が折れる。
「それにしても十六夜さんは本当に何でも出来ますよね」
「何でもは出来ないがな」
「別に十六夜さんが全能とは言ってませんよ」
「……じゃあ、どの範囲での話だ?」
てか、普通そんな返しするか?
何でも出来る=全能で考えて適当に流すのは黒羽相手だと許してくれないか。
てか、チート能力使ってるんだから大体は出来て当たり前なんだよな~
「一般的な勉学やスポーツの範囲で、十六夜さんは全て平均以上に出来ますよね」
「まあ、そういう意味なら何でも出来るけど……」
「前から思ってたんですけど、十六夜さんかなり謙虚ですよね」
「そうか?」
得意なことはそれなりに自信をもって話すから、謙虚ってわけではないと思うが……
「ええ、テストで全教科満点を取れば普通は勉強が得意だと言いますよ」
「そういうものか……」
なるほど、確かにチート能力で出来ることに対してはあんまり威張ったりしないな。
そもそもの話、楽するために貰った能力だし、好きなことでもないから結果にも興味ないんだよな。
「料理や理系の知識に関してはそこまで謙虚ではありませんけど……」
「……あれだ、興味があるかないかの差だ」
「……なるほど、確かに十六夜さん興味が無いことはそもそも自分から一切話しませんね」
俺の言葉に黒羽は少し考えて納得してくれた。
実際に謙虚なんじゃなくて全く興味が無いだけだしな。
正直、興味ないことあんまり気にしたくないからチート能力貰ったわけだし。
「まあ、そんなどうでもいい話は置いといて、早く片付けてアニメ見ようぜ」
「そうですね」
さっさと昼食の片付けをしてアニメ鑑賞を始める。
お菓子とジュースを用意してアニメを一話から最終話まで一気見する。
終わった後は、お互いの良かったと思う場所を話しながら飛ばし飛ばしで見返す。
お互いに細かいところまでしっかり見てることもあり、細かい描写の話をじっくりとする。
こういう話が出来る黒羽と一緒にいるのはやっぱり楽しいな。
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