第10話 午後の勉強会
昼食を食べている途中に十六夜に気になったことを聞いたのがいけなかった。
十六夜が唯より料理が得意だと自信満々に答えた。
その答えを聞いて唯は十六夜の料理に興味を持ったようで十六夜をじっと見つめ、黒羽と優香がジト目で十六夜を睨む。
そんな視線に気づかない十六夜に二人は辛辣な言葉を投げかける。
流石の十六夜も少しショックを受けたようだったので、ちょっとした悪ふざけで言ってしまった。
「お前に度胸とコミュニケーション能力があればかなりモテるだろうに」
「ないない」
俺の言葉に十六夜は即答して何事もなかったように食べることに集中する。
しかし、十六夜に向いていたジト目が俺に向き、余計なことを言うなと言いたげな視線で睨んでくる。
二人に睨まれているためとても俺一人だけが居心地が悪いなか昼食を食べることになった。
昼食を食べ終わり食器の片付けを終え、午後の勉強会が始める準備を始めた。
勉強会の準備をしていると、黒羽が京谷に声を掛けた。
「京谷さん、勉強中に食べるお菓子と飲み物を買ってきてください。それと私はこのジュースが良いのですが、少し遠いお店にしか売っていないので走って行ってくださいね」
黒羽は自分のスマホでジュースの画像を見せながら京谷に頼んでいた。
遠いなら諦めればいいんじゃないのか?
「えっと、違うジュースにするって選択は?」
「ないです」
「……はい、行ってきます」
黒羽の満面の笑みに京谷は諦めて肩を落とした。
え!?行くの!?
京谷、お前なんか黒羽と優香に対して弱すぎないか?
そんなに黒羽と優香が怖いか?
「それでは勉強を始めましょうか」
「じゃあ、唯。午後はこの範囲の数学と化学をするわよ」
「…………分かりました」
唯は京谷が不憫に思ったようだが、二人が怖いのか京谷を見捨てた。
京谷は肩を落として午前と同じように買い物に向かった。
あいつも大変だな……
「勉強はいいが、数学と化学だけでいいのか?」
「文系は基本的に暗記だから、やり方を教えれば家で出来るわ」
「それは十六夜君が休みたいだけですよね」
「…………」
俺の問いを聞いた唯はジトっとした目で俺を見ながら確信したかのように言ってくる。
唯の言う通りであるため、取り合えず視線を逸らす。
どうやら俺も大変なようだ。
「十六夜さん、私も一緒に教えるので少しは休めますよ」
「ありがとう!黒羽!」
前言撤回、楽が出来る!
黒羽の手を両手で包むように握り、黒羽の目をしっかりと見ながら心からの感謝を伝える。
午前に黒羽を勉強に誘った俺、ナイスだ!
そして遊びに来てくれた黒羽まじでありがとう!
「二人ともふざけてないで早く始めるわよ」
「一ミリもふざけてないぞ」
「ええ、ふざけてないですよ」
「どうでもいいから始めるわよ」
ジトっとした目で俺と黒羽を見ながらいう優香に真面目に返すと、優香はジトっとした目で睨まれて強制的に勉強が開始した。
唯はそんなに勉強したくないのかといいたげな視線を俺に向けながら呆れた顔をしている。
ああ、京谷ほど大変じゃないが、俺の扱いも酷いんだな。
「じゃあ、最初は私が教えますから、十六夜さんは少しの間休んでいていいですよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて休むわ」
「はい。それでは唯さんよろしくお願いします」
「よろしくね、黒羽ちゃん」
俺はお茶を飲みながら唯に解く問題を支持している優香と唯が分からない問題の解き方を教える黒羽を見ながらしばらくして黒羽と交代した。
俺が教え始めて少しして汗だくの京谷が息を切らして戻ってきた。
「お菓子と、飲み物、買って、きた、ぞ……」
「大丈夫か、京谷?」
「これが、大丈夫に、見える、のか?」
「いや、全然見えない」
「なら、聞くな」
「お疲れ」
かなり疲れている京谷に同情しながら、俺はキンキンに冷えた麦茶が入ったコップを京谷の前に置いてやる。
京谷はコップをがっしりと掴み一気に麦茶を飲みほし、コップを置いて邪魔にならない場所に寝っ転がった。
取り合えず、汗を拭けるようにタオルを持ってきてやるか。
「少し待っていてくれ」
唯達に一声かけてリビングを出てタオルを取りに行き、タオルを持ってリビングに戻り京谷の頭に投げてやる。
それからしばらくして体力が回復した京谷も優香により勉強に強制参加させられた。
俺としては勉強を教える相手が増えると休む時間が減るので正直もう少し倒れていて欲しかった。
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