第4話 日常
入学直後の実力テストが終わり、普通の高校生活を送っていた。
実力テストの採点が終わり返却された週末の土曜日。
「なんで、お前ら俺の家にいるんだよ」
「テストの間違えたところを教えてもらうため」
「ついでに、遊ぶため」
「京谷はそれがメインだろ」
土曜日だというのに午前中から来た優香と京谷に冷たいお茶が入ったコップを渡してため息をつく。
優香は本気で勉強をしに来ているが、京谷に関しては勉強はおまけでしかないだろう。
「十六夜だって遊びたいだろ」
「俺はもう少し寝ていたい」
「だめ。十六夜は教える役、京谷じゃ役に立たない」
「相変わらず、優香ははっきり言うな」
遠慮なく言い切る優香に京谷は苦笑しているが、事実だから何も言い返せない。
京谷の成績が悪いわけではないが、普段から真面目に勉強している優香の成績が良すぎるから仕方ない。
「そもそも優香は学年で上位十名に入るんだから別に教えられなくても出来るんじゃないのか?」
「むしろ、トップテンだからこそ一位の十六夜くらいしか教えられないんじゃないのか?」
「俺は人に教えるのが苦手だってなんども言ってるんだがな」
そもそもがチート能力を活用してるんだから全教科満点くらいは余裕だが、勉強方法もアドバイスもチート能力の理系以外はチート能力のごり押しだから教えられるわけがない。
それなのに優香は気にしないと言いたげな顔で俺を見ている。
「大丈夫。いつも通りどうやって解いたか教えてくれれば後は自分で考える」
「だとさ。優香が終わるまでは俺もテストの直しやってるから、さっさと教えて三人でゲームしようぜ」
「はあ。なら、さっさと始めるか」
俺の言葉を聞いてリビングのテーブルの上に勉強道具を並べ始めた。
俺は優香に教えやすいように優香の対面に座り、優香が分からないという場所を一つ一つしっかりと説明した。
優香の間違えた問題が少ないのもあり、一時間ちょっとで勉強は終了した。
時間は十二時少し前なのを優香が確認して立ち上がった。
「お昼適当に作るのに、冷蔵庫の中のもの使っていい?」
「おお、作ってくれるのは助かるな。大したものは入ってないが好きに使ってくれ」
「分かった」
優香がキッチンの方に移動するのを見送って京谷に視線を向けると、勉強道具を片付けていた。
本当に俺達が終わったらやめやがった。
「せめて優香が昼飯作ってくるまではやっとけよ」
「一時間真面目に勉強したんだからいいだろ」
「まあ、お前の問題だからいいが、赤点とっても知らないぞ」
「本当にやばい時は優香に助けてもらうさ」
「勉強が出来る可愛い幼馴染に感謝しないとな」
京谷の言葉に俺は鼻で笑って冗談のように言うと、京谷は少し意外そうな顔をした。
ん?普段だったら冗談を返してくるはずなんだが?
「お前でも、女子をほめることあるんだな」
「お前は俺を何だと思ってるんだ」
「いや、十六夜が女子をほめたこと今までなかったから。二次元に対してもあんまり可愛いとか言わないし」
「特に聞かれたことが無かったし、女子と関わる機会も少なかったしな」
「少なかったのか?」
京谷がなぜか首を傾げているが、俺は基本的に男友達と遊ぶことが多いから女子とそんなに関わっていないはずだ。
そもそも仲の良い女子なんて輝夜を除くと優香と黒羽ぐらいだ。
確かに学校で世間話くらいはたまにするが、正直会話の内容にあまり興味を持てないから苦手だ。
さっきから京谷は何か考えているようだが、そんなに考えることあったか?
「女子に興味があるというなら、十六夜はどういうタイプの女子が好きなんだ」
「……難しい質問だな」
「そんなに悩むことか?」
「じゃあ、京谷はどんな女子が好みなんだ?」
「そんなの決まってるだろ」
俺が問い返すと京谷は不敵に笑って堂々と答えた。
「美しさと可愛さが同居した美貌に凛々しい佇まい。真面目な努力家で、誰に対しても優しい女神様のような包容力のある、高橋さんみたいな人だ」
「高橋さん以外にその条件当てはまる人いるのか?」
「いない!」
断言しやがった。
てか、それは女子の好みというより、好きな女子の話だろ。
「やっぱり、お前は馬鹿だな」
「なんで馬鹿にされたんだ!?」
「前も言ったが、あの人と一緒にいると疲れるだけだと思うがね」
「高橋さんほど理想的な女子はいないと思うが……」
「正直、俺は高橋さん苦手なタイプだからな」
あれだけ完璧だと裏があるとしか思えないし、仮に裏が無かったらそれはそれで怖い。
無償の善意が無いとは思わないが、何でもいいからちょっとした見返りを要求された方がいいな。
「じゃあ、お前はどんな女子が好みなんだよ」
「それは……この話はここまでだな」
キッチンから優香が出てくるのが見えたので話を終わらせると、京谷もキッチンの方に視線を向けた。
「ん?ああ、そうだな」
「京谷、お昼出来たから運ぶの手伝って」
「なんで俺だけ」
「十六夜は勉強教えてくれたし、家を使わせてくれてる。私はお昼を作った。京谷は?」
「……何もしてないです」
「じゃあ、手伝う」
「はい」
優香の言い分に京谷は諦めてため息をついて優香と一緒にキッチンに向かった。
二人の背中を苦笑しながら見送り、先ほどまでの話を忘れてお茶を飲む。
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