第2話 朴念仁補正
白い空間で意識を手放して眠りについてから目が覚めるとまともに動けなかった。
「あう?」
転生って赤ちゃんからか。
せめて、歩ける一歳くらいにしてくれたらいいものを……。
『転生なのですから、赤ちゃんからで当然でしょう』
「!?」
神様!?
転生後の世界に干渉しないといってませんでしたか?
というか、驚くからいきなり頭の中に話しかけないで欲しい。
『干渉するつもりはないよ。言い忘れたことを伝えに来ただけさ』
言い忘れたこと?
わざわざ言いに来るほど重要なことを忘れていたのか?
『君が少し特殊だったからね。本来ならチート能力の代償として次から次へと事件に巻き込まれる補正能力を付けるのですが、君の場合はそういう面倒ごとは嫌いだろう』
当たり前だろ。
好き好んで面倒ごとに巻き込まれたい奴の方が頭がおかしいんだ。
『だから君には朴念仁補正をつけておいた。もともと恋愛も出来ればいい程度の認識だったようだし、ちょうどいいだろう。それでは今度こそさようならだ』
おい、せめて朴念仁補正の説明くらいしていけよ。
……説明なしですか、そうですか……まあ、何とかなるだろ。
転生してからなんだかんだ十六年くらいたったな。
四月から高校入学か、記憶力はチート能力のおかげですごくいいが転生してから二歳までの記憶は綺麗に忘れたな、嫌なことは忘れるに限る。
二歳からアニメや漫画、ラノベを読み始めたせいで天才だなんだと両親が騒いでいたが気にしない。
小一の頃から前世での夢だったラノベ作家になれたし、チート能力のおかげで興味ないことに時間かけなくていいって最高だ。
「十六夜。中学の制服着ないだろうから片付けておきなさいよ。それと高校から一人暮らしするなら、引っ越しの準備もしておかないとだめよ」
「はーい」
俺の部屋の扉を開けて用件を言ってすぐに出て行った母さんを見送り、部屋の壁付近にかけてある学ランに視線を向けた。
「面倒だな」
はあ、どうせもう着ないんだから捨てるか寄付すればいいのに。
ため息をつきながら立ち上がり、学ランを手に取って何か違和感を感じた。
ん?違和感の正体を確認するために学ランをしっかりと見つめると、第二ボタンがなかった。
「なんで第二ボタンないんだ?」
卒業式の時はついてたからその後になくしたんだろうけど、いつ無くしたんだ……
あ、思い出した。あいつに『第二ボタンが欲しい』って言われたからあげたんだ。
そういえば、なんであいつ第二ボタンが欲しいなんて言ったんだ?
第二ボタンになんか意味があった気もするが、まあ分からないことを気にしてもしょうがない。
「さっさと片付けて引っ越しの準備を終わらせよ」
一人暮らし、誰にも邪魔されずにゲームしたり、ラノベ読んだり、一日中寝て過ごすことが出来る。
今まで妹や両親のせいで自由に過ごすことが出来なかったが、ようやく自由な生活を送れる。
チート能力のおかげで俺のことを天才と思ってる両親の説得は簡単だったし、妹は少し不機嫌だったが気にしない。
「兄さん、勉強を教えて欲しいんだけど、今忙しい?」
「……今は無理かな。引っ越しの準備が終わったらな」
学ランを片付けて部屋に戻ると、ノックもなしに入ってきた妹の輝夜にジトっとした目を向けながら返す。
妹はそんなこと気にしてないようで、床に置いてある引っ越し用の段ボールに視線を向けた。
「準備手伝おうか?」
「それは助かるな。と言ってもパソコンと私服を二、三着、後はラノベを持っていくだけなんだがな」
「少しは服装に気を遣ったら?」
「いいだろ別に」
休日はほとんど家に引きこもる予定なんだから、安くてシンプルな服が少しあれば十分だろ。
輝夜は俺の言葉にため息をついて何か小さい声で呟いたが、すぐにラノベが大量に並んでいる本棚の前に移動した。
「それで、これ全部持っていくの?」
「ああ、ラノベは全部だ。そっちの化学や心理学の本はおいていくから入れなくていいぞ」
「分かった」
俺の話を聞き終わると輝夜は返事をして段ボールにラノベを移し始めた。
それを見て俺も持っていく服とパソコンを段ボールに入れ、輝夜と一緒にラノベを段ボールに入れる。
引っ越したら入学式までのんびりゴロゴロとして過ごそ。
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