転生者は朴念仁

水龍園白夜

第1話 転生

 気が付くと真っ白な空間にいた。

 辺りを見回しても何もなく、影ない白で満たされた空間。

 アニメやラノベでよくある転生というやつか?


「予想の通り、君はこれから転生することになる」

「!?」


 びっくりした!?いきなり後ろから話しかけないで欲しいな。


「それはすまない」


 普通に考えてること読まれてるし……まあ、転生って言ってたから神様なんだろうし当然か。


「……それで予想通りってことはアニメとか見たいにチート能力でもくれるわけ?」

「もちろん、望む能力を与えて希望の世界に転生させてあげよう」


 アニメやラノベみたいなご都合展開だな。

 まあ、神様の都合なんて考えても分かるわけないか。


「じゃあ、天才的な頭脳と高い身体能力、お金を稼ぐ才能、意識して覚えたものを忘れない記憶能力、パソコン並みの演算能力が欲しいかな」

「魔法や超能力みたいなものはいらないの?」


 ん?神様だから考えてること読めるんじゃないのか?


「表層で考えてることぐらいしか読むことは出来ないよ」


 そんなものなのか?いや、読もうと思えば読めるけど、面白くないとかありそうだな……

 ジトっとした目で神様を見つめていると、微笑んでいた顔が少し引きつらせた。


「まあ、その通りなんだけどね……」

「……はあ、チート能力くれるなら特に文句はないですよ」

「それはいいが、本当にファンタジー系の力はいらないの?」


 ファンタジーか、正直な話ファンタジー世界に行きたいとは思わないかな。

 魔法を使うのは楽しそうだけど、ファンタジー世界の戦いとか見るならともかく参加したいなんて思わないだろ。


「チート能力で無双すればかすり傷も負わないと思うけど、それでも嫌なのか?」

「嫌だ。戦争なんて参加しても恨まれるだけだし、無双しすぎても恐れられて暗殺されるだけだろ」

「そこはご都合展開で何とかなるさ」

「神様が言うと説得力ありますね」


 神様がご都合展開とかいうと本当にアニメやラノベと同じようなことが起こせそうだな。


「それでも嫌なの?」

「嫌です」


 三度目の確認も即答で答えると、神様も少し困った表情になったな。

 そもそもの話、家でゴロゴロしながら本読んだり、ゲームしたりしてたいんだよな~。


「もしかして、チート能力の使い道は遊ぶ時間を増やすため?」

「当然じゃないですか。俺、引きこもり気質の陰キャなオタクですよ」

「…………ちなみにどんな世界に転生したいんだ?」


 どんな世界か……普通に前世と同じ文明レベルの現代社会が一番なんだがな。


「強いて言うなら、アニメや漫画みたいに人類全員の美形の世界ですかね。物好きな女子に好かれた時に美少女だと嬉しいですし」

「恋愛がしたいなら美少女ハーレムにすることもできるけど」

「いや、いらない」


 美少女ハーレムで周りの男子に妬まれるだけだろ、同じ趣味の男友達とバカ騒ぎしたいからあんまり男子に妬まれるようなことは避けたい。

 そもそも陰キャの俺に美少女ハーレムを楽しめるとは思えないし。


「……新しい人生で変わろうとは思わないのか?」

「無理無理、変わろうと思って変われるなら前世でとっくに変わってるって」


 記憶や人格が消えないなら、前世で変わる機会くらいあっただろうさ。

 それに陰キャなオタク人生は個人的に楽しいからやめたくない。


「そういうことなら、これ以上言うことはないかな。それと転生した世界に私が干渉することはない」

「そうですか。じゃあ、転生させてください」


 干渉しないのにご都合展開起こすつもりだったのか?


「では、良い人生を」


 神様の言葉が終わると同時に眠くなり、強烈な睡魔に抗えずに意識を手放した。

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