幕間2-2
「ふうぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜……」
「お、お
最後の救護所を
任務を終えてヒヨウきゅんと別れてきた私は、ソラとともにテントにて休息を取ることになった──いや疲れたわ!! MPについてはまだまだ
私はふぅ、と再び
「……本当に……お疲れ様でした。ミレーナ様はやっぱりすごいですね」
「え?」
「あんなに多くの人をお助けになって……ザックロー様が
「……そう、かもしれないわね……」
ソラの
再会した直後はほとんど話もできなかったソラだが、その後私が救護所を回るのについてきて、また各所で私が人を癒していくのを見て、少しずつ普段の調子を取り戻していったのだ。
彼女は私の奇跡に元気づけられたと話してくれた。私としても、誰かを死の
ふと私が横を見ると、カンテラの明かりでできた自分の
「……ありがとうございます。お先に失礼しますね、ミレーナ様……」
ソラが
自分のテントへ戻ったソラを見送ってから、私は何度目かも分からない溜息を吐いていた。疲れはまだ取れていない。しかしその一方、頭の中はグルグルと整理できないままで空回っていた。私はベッドに腰かけながら、
そうこうしていると、不意にテントの向こうから「ミレーナ様?」と私を呼ぶ声がした。
その声に、
「あ……アレクシス様!?」
「ええ、私です。少しお話しができればと思って訪れたのですが……お休み中でしたか? もしお疲れでしたら、また……」
「いいいいえ、ちょうど寝つきが悪いと思っていたところなので! どうぞお入りくださいませ!!」
周りの
カンテラの明かりが、
アレクは
「おっ、お疲れ様ですアレク様! こんなことになってしまって、さぞ大変かと……!」
「……それはこちらの台詞ですよ」
私の口をついて出た言葉に、アレクが
ただ、彼の台詞を聞いて、私の
「あ……い、いえ、そんな。できることをしているだけですよ……私には、これくらいのことしかできないので……」
「十二分に過ぎる働きです」なおもアレクは私に言う。
「サラマンダから聞きましたが、鉱山でも多くの鉱員たちをお救いになったそうではありませんか。それからザックローからも、街でのご
「……そう、ですよね……」
アレクが熱っぽく褒めてくれるのを聞きながら、それでも私は
瞬いた
少しして、私は
「あの……『オーアインの聖女』が【家を建て直す奇跡】を覚えたことって、今まであったりしませんでしたかね?」
「【家を建て直す奇跡】ですか?」アレクは少し考えた後、申し訳なさそうに私に答えた。
「……
「……そうですよね……」
二人の間にまた少し
「我々や、私に何かできることはありませんか? お話を聞くくらいしかできないかもしれませんが……それでも私は貴女の助けになりたいのです。以前、ミレーナ様がそうしてくださったように」
「……アレク様……」
私は顔を上げてアレクのことを見る。テントの入り口にいるアレクの表情からは、私を
「私……今までは、奇跡を唱えたらそれでみんな笑顔になってくれていたじゃないですか。病気やケガを治したり、力や加護を
ああ、言っているうちに段々と、私にのしかかるものの正体が分かってきた。
私は街の人たちのケガを全部治したけれど、失われた彼らの家や財産を取り戻すことまではできなかった。そして、それでは彼らを救ったことにはならないんじゃないかと、そう思っていたのだ……もし私が前世で宿なし一文なしになったら、それこそ残るのは絶望しかなかっただろうから。
「……みんなこれからのことが不安そうで……私はケガは治せても、そんな先のことまでは……私、『オーアインの聖女』のはず、なのに……」
「ミレーナ様……」
アレクの前で、また私は顔を伏せてしまう。
私は『オーアインの聖女』なのだ──その力は絶大で、目に留まる人たちのことはみんな助けられるはずで、助けてきた。今回も鉱山での仕事は
ただ、街に帰ってきて、ケガが治ってなお
この力でもできないことはある。じゃあ、今回のような災害や事件が続けば? 私が
私は
「……貴女は、背負いすぎている」
「え?」
不意に、アレクが
「……えっ!? あ、アアアレク様!?」
「ご無礼をお許しください、ミレーナ様。少し、私の昔話を聞いていただけますか?」
ギョッとして
「そう……あれは数年前、私がとある村を視察に訪れた時です。その村は小高い
「村……?」
「……フフ」私の疑問を聞いて、アレクは少し笑う。「話を続けますね。その日、
「…………」
「私は村の若者一人と、必死に村の畑を守りに行きました。
そこでアレクは、
「実を言うと……その日私はほとんど
「大丈夫だったんですか?」
「ええ。次の日、昨日
「『……おかげさまで、助かりました。あんたがたが手伝ってくれたから、思っていたよりもずっと多くの家と畑が無事でした。あんたがたがいてくれて、よかった』……と」
「……えっ、今の口調って……」
「失礼します」
その時だった。私がアレクのモノマネに何か言おうとしたタイミングで、不意にテントの入り口からまた声がしたのだ。私はそれにビクッとしたけれど、やはり今の声も聞き慣れた人のものだったので、すぐさま気を取り直す。
「さ、サラマンダ様……? どうしてこちらに?」
「こんばんは、ミレーナ様。こちらにアレクシス様がいると聞いて来たのですが……」
静かだが力強い言葉が入り口の布
「え、ええ……どうぞ、お入りになってください、サラマンダ様」
「……それは……いえ、失礼します、ミレーナ様」
アレクと同じく、少しの逡巡の後でテントに入ってくるサラくん。彼の顔もまた
「申し訳ありません、夜分遅くに……アレクシス様、こちらで何を?」
「いや、ミレーナ様への挨拶にな……そして今さっきまで、お前の話をしていたんだ、サラマンダ」
「……え?」
「あ、や、やっぱりさっきの若者って、サラく……サラマンダ様のことだったんですね!?」
キャッと、目を光らせてアレクとサラくんを交互に見る私。きょとんとしているサラくんにアレクがさっきまでの話を
「……昔のことです。それに、あの時は
「いや、気にしてはいないよ」サラくんの謝罪に、アレクは
「ただ、ミレーナ様にもあの日のことをお伝えたしたくてな」
「……アレクシス様たちが、俺の村を助けてくださったこと、ですか?」
「いや、違う」そこでアレクは立ち上がると、サラくんと私を交互に見て言った。
「『私たち』で、『協力して』村を守ったことを、だよ」
「……あ……」
アレクの台詞を聞いた私はぱちぱちと瞬きし、それを見たアレクがふっと笑う。
「あの日、私は独りで嵐に立ち向かっているつもりになっていました。けれど違った……本当は、あの日村にいた全員が戦っていたんです。村の若者に礼を言われて初めて、私は彼が、私と一緒に戦ってくれていたことに気付けました」
「…………」
アレクの言葉を聞いて、サラくんが照れくさそうに目を伏せる。それにアレクはまた笑うと、彼の横に並んで私に向き直った。
「ミレーナ様。先が見えない時は、いつでも、誰であっても不安なのだと思います。けれど、その時に
「……!」
アレクの言葉が、そして彼の横で力強く頷いてくれたサラくんの姿が、私の胸を打つ。
私は
ならば私は、
「……少しでも、肩の
目を
「ありがとうございます、アレクシス様。私、明日からもまた頑張れそうです」
「それはよかった……ああいや、お礼はサラマンダにも。私はただ彼のことを話しただけなので」
「い、いえ、そんな、俺は……」
急にアレクに話を振られて、サラくんが慌てて言葉を
二人と別れた後、残された私は再びテントの中を見回す。
テントの布地には、
(明日も頼りにさせてください、ミレーナ様。我々も、必ず貴女をお支えしますから)
(……おやすみなさいませ。また明日、ミレーナ様……)
気付くと、私の背筋がシャンとしている。
「……また明日、か……」
私は自分の
そうだ、地震がなんぼのもんじゃい。たとえ国中の大工さんがケガしたって、私がみんな治してやるもんね! 自然様だかなんだか知らないけれど、気合を入れた人間様を簡単にポッキリいけると思わないでもらおうかしら!!
「おやすみなさいっ」
私は誰へともなくそう言って目を閉じた。瞼の裏では、さっき見た『推し』二人の背中が揺れている──ああやっぱ、大変な時こそ『推し』って大事だわ。二人の
▲ジョブレベルが上がりました。
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