3 推しの仕事を見学しに行ったら色んな意味で死ぬ目にあった
3-1
前世において、私が
私が特に覚えているのは、彼らがそこそこ有名になってきて、それなりに大きな
お決まりの曲が流れるなり、同じブロックのファンが通路側のフェンスに
時間にして数秒、通り過ぎざまに
たったそれだけの記憶だけれども、私にとっては忘れられない思い出だ。有名になってしまった推したちにとって、私なんてもはや
っていうかなんの話だったっけ。あそうだ、そういうわけなので、私は推したちのことを
──ただ、そんな私に最近は過激なイベントが降り注ぎまくっている。『推し』である三
そう、だから私は推しに近づきたいとは思いつつ、
「──あ、あの、サラマンダ様、私その、
「……ミレーナ様……」
「は、はい!」
「……
そのサラマンダ様の声は、私の耳元で
目の前にはたくましい
そう今、私は推しの一人である『
◇◆◇
ことの
またその一方、各村各山には定期的に聖騎士が査察として
──そして、ちょうど今日。私は確かな情報筋(ソラが聞いてきた騎士たちの話)から、サラマンダ様が都市からほど近い鉱山に査察に出ると耳にしたのである!
私は査察について、どんなものか話には聞いていたけれど、実際どういう感じなのかは前から興味があった。何より、推しの仕事姿を直接見られたらすごい楽しそうって思ってたんだよねぇ!! ……ということで、偶然
いや……一応私『オーアインの聖女』なんですけど、こんな簡単に遠出できていいんですかね……なんて出発間近になって心配した私だったが、王様とアレクはサラマンダ様のことをとても
「聖女様……俺が必ずお守りします。命に代えても……」
なんて言うもんだから、これはもうはい喜んでと。やっぱりぜひ行かせていただきますとね。なりましたよねもう。ちなみにヒヨウきゅんは「『紅竜』なんかに任せて本当に
「おぉぉ……これは……」
そんなこんなで、ふかふかクッション付きの馬車に座って三時間半。私は馬車の小窓から、近づいてきた鉱山地帯の様子を
山の中腹、そこからすり
近づくにつれて、ツルハシやシャベルの金属音がけたたましさを強める。ここまで鉄と火薬と
「……ここはそんなに
「ひゃいっ!」
と、そんな私に馬車の外から声が飛んでくる。
私が小窓から
「あの……このような場所を
「ああ、いえ……そういうわけではなくて……」
私の謝罪に、サラマンダ様はぼそぼそと言葉を繫ぐ。
「……俺は……ああいや、私はよく、鉱山の視察に出向くのですが……その分、当たり前の光景になってしまって。ですので、それほど喜んでいただけるのが
「サラマンダ様……」
う〜〜〜〜〜〜ん!!!!!! 尊い!!!!!!!!
▲ジョブレベルが上がりました。
照れたように目を
そうなんだよなぁオレ様キャラっぽい顔してるけど内心すっっっっっっごい
……などと私が拝んでいると、ゆっくり進んでいた馬車が止まった。あれ、と私が小窓から前を見ると、馬車の前にはドワーフみたいにずんぐりした鉱員が二人、ツルハシを
「あ、あの……」
「オイオイ、なんだこの金ピカの馬車はよう。新しいトロッコかぁ?」
「ひぃ!」
「サラマンダの
「おいお前たち、口の
「ちょぉぉおっっと待ったぁぁぁぁ!!」
と、今度はサラマンダ様の声に
「今あなたたち、サラマンダ『の旦那』って
「ぐ、グリム・サラマンダ様、だろ?」
「そうです!!!!!!」
鉱員Aの回答に、私はぶんぶんと
「だ、旦那、誰ですかいこの女は」
「……口の利き方に気をつけろ。その
「「はぁっ!?」」
サラマンダ様の台詞を聞いて、鉱員ABはギョッとして私から
「お、落ち着いてくださいサラマンダ様! 今のは私への言葉に怒ったわけではなくて、その……」
「……申し訳ありません聖女様。こいつら、調子に乗りやすい性格で……根は悪くないのですが、慣れてる俺相手だからと気を
「いやいやいや! 大丈夫ですんで!」
しまった、また推し関連で反射的に動いた結果大事になってしまった……! まあこの前のアレクの時もそうだったし、もはやいつものことって言ってもいい感じはあるけどね……なんて
ちなみに、
そりゃね、来るの決まったの今朝だったからね。ごめんね。
それから私とサラマンダ様は、鉱員ABの案内のもと査察の任務に精を出した。
オーアインの街にほど近く、しかも
「サラマンダの旦那、また来てくれたのか」
「見とくれよこれ、プラチナだぜ! こんな浅層で出るとはたまげたがな!」
「……分かったから、仕事に戻れ。まだ
「分かってるって。あんたがいる間は
「いや、いつだって俺らは大真面目に働いてらぁ! サイコロの
「
そう言ってドワァと笑う鉱員たち。彼らを見るサラマンダ様は
「旦那はいつも、俺たちのことをしっかり見てくださってるんでさぁ、聖女様」
サラマンダ様の後ろについていきながら、私は鉱員Bの話を聞く。ちなみにこのBさんが副鉱員長で、今はサラマンダ様の横にいるAさんが鉱員長だったらしい。旦那呼びはもう許しました。いずれ私も言ってやるからな……!
「数年前から旦那が査察に来るようになったんですが、あの人はいい。無口で無愛想だが、俺たちのことはちゃんと評価してくれるんでさ。前までのジジイは
「なるほど……」
「それにちょいと前、ここが今より大雑把で
とそこで、Bさんがでへへと
「実を言うと、旦那は俺の命の恩人で……あの人が暴走した古トロッコを止めてくれなかったら、俺ぁ今頃レールのシミになってまさぁ」
「……そうですか……」
熱っぽく語るBさんを見て、小さく頷く私。うんうん、それもまた尊みよね。
サラマンダ様は
……しかし、そうか。
そこで私はふと、今聞いた言葉に思いを
前世の記憶がコップの
──ただ、結局何か思い出す前に、私の耳には「ミレーナ様」という声が響いていた。
「あ……サラマンダ様」
「すみません、目を
「いえ、全然」
「おいおいあんまりだぜ旦那」サラマンダ様に
「…………」
「
そう言って、再びドワァと笑うBさん。サラマンダ様はそれに呆れつつ、ぺこりと私に頭を下げた。
「すみません、ミレーナ様……こんな者どもしかいなくて、さぞむさ苦しいでしょう」
「いえいえ、私なら大丈夫ですよ」
サラマンダ様の言葉に、私は笑いながら首を
今の言葉に噓はない。なぜなら、前世の私の実家は男ばっかりの板金屋で、車の修理やらパイプの成形やら、
「むしろ
「聖女様ぁ……!」
私の言葉を聞いて、Bさんはほぉっと嬉しそうな顔をする。一方のサラマンダ様は、驚いたような表情で私をまじまじと見つめた。
「……ミレーナ様は、鉱員たちにもお
「言いませんよ、そんなこと」
サラマンダ様の話を聞いて、私はムッと言葉を返す。いや、サラマンダ様に怒ったのではなく、貴族の奴らの言い方がムカついたのだ。偉そうにしやがって、一回文なし寸前まで
「……
プリプリしている様子の私を見ながら、サラマンダ様はニッと笑ってそう言った。
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