2-2
はーこれだよこれ! アレクくんの全方位最強優しみキャノン! そりゃ
──などと興奮していた私。しかし、はっと我に返ると、アレクは私の本を見て、そして自分が持ってきた本を見下ろして、ふうと息を
「……アレク様?」
「っと、すみません……ひょっとして今、
「ええまあ……」
「アレクシス様、お
ズバッと、子どもながらの
「申し訳ありません。
「でもでも、お休みすることだって大切ですよ!」そう言ってソラが
「昔、私が
「ほう……」
「ああもう、やめてソラ、そんなこと……」
ただ、そんな大人げない私を見て、アレクはハハハと笑ってくれた。
「いや、
「……アレクシス様……」
ソラの口に手を当てながら、同時にじっとアレクの顔を見つめる私。ああ、彼は男性ではあるけれど、聖騎士のトップという
こんな推しの顔も味わい深くていい……じゃなくて。かつてブラック
私はなけなしの勇気を振り
「あ、あの、私にとって当然なんです。働き過ぎたら休むというのは……私は
「…………」
「何かおありだったんですか、アレクシス様。わ、私でよければ、お聞きしますけど」
「……貴女にそう言われて、断れる者はこの国にはいませんよ」
そう言って、また苦笑いを浮かべるアレク。
現王「ワシと
現王家「分家の出だけどアレクめっちゃ良くない? 次期王でよくない?」
現王派「
王の弟「いやアレクは良いけど
王弟派「そうだそうだ!」「そうだそうだ!」
現王派「いやアレク良いって王弟も言ってんじゃん!」
王弟派「それとこれとは違うんだよバーカ! アレクは良いけど!」
現王派「アレク良いって言ってんじゃんお前らの方がバーカ!」
王弟派「うるせえアレクだけ残してお前ら
現王派「滅びませんー! アレクくんはうちで大事にするんですぅー!」
王弟派「!!!!!!!!」
現王派「!!!!!!!!」
──以上。なんだろうこれ……
「まあそんな具合で、いつまでも平行線のまま話が進まないのです。というか、当の私が騎士代表として話し合いに参加しているのですが、他の方々は自分たちの意見を戦わせるのに
「……大人の世界は難しいんですね。私バカだから、よく分かんないや」
「いや、君の頭が悪いのではない。あの場にいると私も……その、何だろうな。剣を振るっている時ほど元気ではいられないというか……」
「──その会議は
「えっ」と、そこでアレクが私を見た。その顔は明らかに
「い、いや、そんな、そんなことは……というか、な、なぜ貴女がそんなことを……」
「分かりますよ」
「えっ」と、再度アレクが私を見る。その表情に向かって、私はうんうんと頷きながら、心からの共感を
「自分に発言権のない会議に参加する時ほど、
「…………」
「そもそも本当は、アレクシス様のお気持ちが一番大事だと思うんですけれどね。そこを周りの方が聞いてくださらないから、いつまでも会議が終わらないんでしょうに……」
アレクが言葉もなく私を見つめている。私はなおも深々頷いていたけれど、そこで隣に座るソラが、キョトンとした顔で私に尋ねてきた。
「あの……ミレーナ様は何かそういった会議に出られたことがあるのですか? まるでアレクシス様と同じようなことを経験してきたみたいですけれど」
「え? え、えぇっと、そうね、まあ昔、ちょっとね」
ソラに向かって、私はしどろもどろになりながらも
ヤバい、そういえばこれ前世の記憶だった……! あの
ていうか本当何やってんだよ元老院。いっそ『アレクを
……などと考えていたけども。そこで私はハッとなって、探るようにアレクの顔を見た。
当たり前のことだけど、つまんない会議だからといって寝こけるなんてのは、社会通念上は好ましくないことだ。実際そうしていたとして、それを
ただ、おずおずと視線を向けた私に、アレクはふっと笑って言葉を発した。
「全く……貴女という方はいつもこちらの想像を超えてきますね」
「へ……」
「規格外の奇跡の行使や、それを可能にする
アレクは胸に左手を当てて、ニコリと微笑んだ。
「貴女の経験については存じ上げませんが、自分の悩みについてこれほど心からの共感を頂いたことはかつてありません。いえ、
「アレクシス様……」
「しかしだからこそ」少しさっぱりした顔になってアレクが笑う。
「貴女が私を責めないでいてくれて、私の『分かってもらえない気持ち』を分かってくれて、
「……!!」
アレクの笑みを見て、私は胸にグッとくるものを感じていた。
前世と今では世界が違う。かつては当たり前だった会社での経験が、こちらではそうではない。私にとっては普通の考え方や共感だって、アレクにとっては
なんでもいいよ。それで推しの心を少しでも癒せるのなら、私は私にとって普通のままで、周りから見て変わり者のままでいい。
「お……お役に立てたのなら幸いです」
私がぺこりと頭を下げると、隣のソラが「あっ!」と大発見をしたような
「そういうことならアレク様、私やミレーナ様と
「ほほう……」
「いいいいやちょっと、ソラ! すみませんこの子ったら……それにもう、アレク様、なんて言っちゃダメでしょ……!」
私はまたソラの口に手をやる。あのね、推しとお昼寝イベントとか尊さどころの話じゃないから! 身体中から体液
一方、当のソラは不満げに私を見て、プハっと手から
「え〜……ズルイですよミレーナ様。私と二人の時にはアレクシス様のこと、ご自分でよくアレク様って言ってるのに。私も同じようにお呼びしたいです!」
「え。……え、あ、えっ!?!? 口に出してた私!?!?!?」
「アレク、ですか……」
しかし、アレクはふっと表情を
「構いませんよ。愛称で呼ばれるなどいつぶりでしょうか……なんだか
「あ、アレク様……」
「あっ、ミレーナ様さっそく! じゃあ私も!」
そう言って、アレク様アレク様と連呼し始めるソラ。彼女を見ながら、アレクは
……うちの推し、
ウオオオオオオオオオアレクウウウウウウウウウ!!!!!!
……と
やっぱり、前世から何も変わってないな、私……。
▲ジョブレベルが上がりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます