第4話 セーラー服とマシンガン

「あのー、先輩、そろそろ昼休みも終わりなんで、今日はご馳走様でした」


これ以上この人たちと関係するのはマズイと本能的に感じたわたしは、64式ライフルを狩谷先輩に返すと、そそくさと部室を立ち去ろうとした。


その時、いきなり部室のドアが開き、わたしの眼前に黒く光る銃口が迫ってきた。


「ひいー」


思わず悲鳴を上げるわたしの顔に、目の前の銃口が食い込んできた。


「スパイね、こいつスパイに違いないわ。さあ、観念して吐きなさい。あんた、生徒会の犬なんでしょ。うちの部のこと探りにきたのね」


わたしに銃を突き付けていたのは小柄な、わたしと同じ1年生の女子で、髪は金髪でツインテール、可愛らしい顔をしており、とてもこんな物騒な人たちの仲間とは思えない美少女だった。


「さっさと、吐かないと、このMP40があんたの顔を親が見ても分からなくなるほどズタズタにしてあげるから」


ツインテールちゃんが持ってた銃は、いわゆる短機関銃というやつで、映画でギャングなんかがよく持ってる銃だ。このMP40というのは、昔の戦争映画とかでドイツ軍が持ってるタイプの短機関銃で、こちらも銃口に詰め物など入っておらず、やはり鉄製で、どう見ても本物にしか見えない。


「わ、わたし、スパイなんかじゃ、ありません。生徒会に知り合いもいないし」


「じゃあ、教員ね。教員からいくらもらってアタシたちをスパイしてるの」


「教員のスパイでもありません。狩谷先輩にお昼をご馳走になってただけです」


しばらく様子を伺っていた狩谷先輩がようやく助け船を出してくれた。


「モーちゃん、その子はスパイじゃないよ。アッシが昼飯に誘っただけ」


一瞬、狩谷先輩の言葉に心を動かされたようだが、すぐにまたわたしに銃口を突き付けて、


「部長は甘いです。いいですかCIAは年間600億円つかって、世界中の通信を盗聴してるんですよ。今や全国民、スマホ時代。国民全員がカメラと盗聴器を持ってるのと同じなんですから」


ダメだ。この子完全にパラノイアだ。わたし、スマホもケータイも持ってないんだけど、どーせ何を言っても信用しないだろう。


ツインテールちゃんは、はあ、はあ、と荒い息をたてながら、震える指を引き金に当てて、


「スパイは銃殺よ、この薄汚い雌犬、地獄に堕ちて後悔するがいいわ」


と、本気でわたしを射殺するつもりでいる。


なんか、この子危ない薬でもやってませんか!目がマジなんですけど。


「狩谷先輩、面白そうに見てないで助けて下さいよ!」


「死ねー、このドブネズ・・・うげ!」


彼女が引き金を引こうとした瞬間、彼女の頭の上から大型の銃のストックが垂直に落ちてきて直撃し、そのまま気絶した。


「あら、あら、モーちゃんたら、相変わらず人見知りなんだから」


いや、この子人見知りとかいうレベルじゃないでしょ。完全にキ〇ガイですよ。


ツインテールちゃんを気絶させたのは180㎝近い背丈の2年生の女子で、髪は茶色のゆるふわロングヘアー、物凄い巨乳の持ち主だった。


「こんにちは、あなた新人さん?わたしは有坂恵子。2年でこの部の副部長よ。よろしくね。この子はマリア・高峰・モーゼルちゃん、1年よ」


と、有坂先輩は愛想よくそういうと、大型の銃(米軍のⅯ60軽機関銃というらしい)を部室の床に置き、気絶したモーちゃんを部室の隅のボロボロのソファに寝かせた。






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