第3話狩猟部
わたしがいつも利用している水飲み場は校舎の裏側にある。
さすがにクラスメイトには見られたくないので、人気のないここをいつも利用している。
ところが今日に限って、いつもは無人の水飲み場に人影が見える。
女性で、セーラー服のスカーフの色から3年生のようだ。
背丈は私と同じくらいで、髪はポニーテール。ちょっとヤンキーっぽい。
困った。ここはいつも無人なのに。他の場所だと誰かに見られるかも。
そんなことを悩んでいたら、向こうから声をかけてきた。
「なあ、毎日ここで見かけるけど、あんた名前は」
それから20分ほど後、わたしは狩猟部の部室で、あまりの美味しさに、声を上げながら、ミリ飯を貪り食っていた。
「おいしー、おいしすぎるよー、ああー、このハンバーグちゃんと肉の味がする。豆腐じゃない本物の肉だー、カレーにも肉と野菜が入ってる。具入りカレー食べたのいつぶりだろう。あとこのチキン、鳩じゃなくて、鶏だー」
わたしの感激っぷりに、狩谷先輩はしばらく呆然と見ていたが、
「こ、こんなに感激してもらえるとは、こっちもご馳走したかいがあるわ」
わたしは口に食べ物を頬張ったまま、
「ありがとうございます。ありがとうございます。この御恩は一生忘れません」
と、本気で泣きながらお礼を言った。
「そんな大げさな」
「いえ、例え明日餓死したとしても守護霊になって、一生先輩のこと見守りますから」
「いや、遠慮するわ。それより、ほら、お茶でも飲んで一服しな」
先輩が用意してくれたミリ飯=自衛隊戦闘糧食Ⅱ型三人分を5分もしないうちに完食した私は、ようやくここで一息ついた。そして改めて部室の中を見渡した。
「ここが狩猟部の部室ですか」
「うん、ここがアッシらの梁山泊ってところかな」
木造の部室棟の二階にある8畳ほどの部屋の中は物置のような状態で、いろんな物がごちゃごちゃに積まれて、床も足の踏み場もないほど散らかっていた。
「狩猟部ってことは狩りとかするんですか」
「いんや、大昔は実際高尾山や山梨のほうまでいって狩りとかしてたらしいけど、狩猟法が改正されたり、動物愛護派がうるさくなってからは、狩りはしてないね」
「じゃあ、今はなにをやってるんですか」
「ふふふ、これよ、これ」
そういうと、狩谷部長は積んである長方形の1メートほどの箱の中からビニールに包まれた、一目でやばい、物騒なブツを取り出した。
「じゃーん、どう、これ、かっこいいっしょ」
それは明らかに散弾銃などではない、軍用のライフルだった。
「64式自動小銃。いま自衛隊で使ってる89式の前の自衛隊正式ライフル。まあ、いまでも一部使用している部隊も残ってるけどね」
やばい。なにこの人たちテロリストかなんかなの。
「性能的には89式のほうがいいけど、やっぱりこの武骨なデザイン。モロ兵器っていう感じがたまらないよね。ほら、もってみ」
手渡された64式ライフルはずっしりと重く、肩に当てるストックという部分は木で出来ているが、ほとんどの箇所は鉄製で、どう見ても玩具とは思えない。
やっぱりここは日本〇軍とか〇✖同盟とか、やばい人たちのアジトだったのだろうか。
昼飯につられてのこのこついてきちゃったけど、この先どうなるか心配になってきた。
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