第2話野々原玉子

東京の僻地、八王子には異世界とつながる空間がある。

          都内の中高生に伝わる都市伝説




わたしの名前は野々原玉子。高校1年生。両親が離婚したので、都内のマンションから、母の実家の八王子にある市立八王子高校に母とともに転校してきた。


両親が離婚した理由は詳しくは知らないが、父が会社のお金を横領したらしい。会社も不祥事が明るみになるのは避けたかったようで、横領したお金を返済することで警察に告訴しないことになったそうだ。


というわけで、うちは物凄く貧乏だ。


母と住むことになった築30年のボロアパートは西向きの角部屋で、一応風呂と洋式トイレつきだが、風呂はよく故障する。また玄関も狭く、洗濯機が置けないので、もっぱら近くのコインランドリーを利用している。


母が近くのスーパーのパートで働くことになったが、蓄えも乏しく、食費は月1万ぐらいしか使えないので、三食ごはんと福神漬けということも日常茶飯事だ。




「冷蔵庫が壊れたんで買いなおすから、しばらくお昼はぬきで我慢してね」


10日ほど前突如我が家の冷蔵庫が故障し、新しく買いなおしたため、とうとう昼飯ぬきということになった。やっぱりリサイクル品はだめだ。


それまでもお昼は塩お結び二個とか、かなり悲惨な状況だったのだが、ついに昼飯ぬきという最悪な事態にまで陥った。


「あ~、お腹が減った~、肉、肉が食いたい~」


などと、昼休みになると、まるでホラー映画のゾンビのようにふらふらと校内をうろつくわたしにもちろん友達などできるはずがない。


「仕方ない、今日も水で腹を満たすか」


わたしは校庭の一番目立たないところにある水飲み場に、向かって歩いて行った、



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