第25話 <回答編1>見つけられない「啓」

 ――やれやれ、何とかなったな。


 長谷川さんから受け取った回覧板をぽいと床に放り投げて、何か飲み物でも飲もうかとキッチンに向かった。冷凍庫から氷を取り出し、グラスに水道水を注いでいると、車のドアが乱暴に閉められる音が外から聞こえてきた。しばらくした後、アパートの外付け階段を誰かが上ってくる音がした。

 知らない女が、玄関の前でわめき散らかしている。どうやら鍵を持っているらしく今にも侵入してきそうな雰囲気だった。

 やっかいなことになった。ベランダから逃げ出すしかないだろう。

 ベランダに駆けつけ、地面を見下ろしてみると、幸運なことに真下にはレジャーシートが敷かれていた。障害物も何もない。


 よし、飛び降りるか。


 意を決してベランダから身を乗り出し、なるべく衝撃が少なくなるようにベランダの手摺に捕まりながら、ゆっくりと飛び降りた。


「犯人が降ってきた」

「えっ?」


 飛び降りた先にいたのは、あいつ――藤山駿之介にそっくりな顔立ちの男だった。

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