ランドのプロポーズ

 オクトは今制御不能のようだ。ランドたちがリクとアレクを安全なところまで避難させた。ジェシーはリクの傷を治療しているようだ。チェリは泣きながらアレクの顔を触っていた。


リナはランドに宣言する。


「あなたに励まされるなんて私も落ちたものだわね。まぁ、2人も助かったしこれで思い切りぶん殴ってきていいかしらね?」


「あぁそうだな。リナリアの威力があんなものじゃないと思っていたよ。じゃじゃ馬姫で暴れん坊の姫さんなんだからな」


「その言葉を聞いて安心したわ。あなたの好みは、おしとやか清楚系令嬢だものね。だから、私も婚約破棄されたのだし? 今までのランドの発言や行動は、やはり欲求不満からくる一時的なものだったのね。よかったわ」


リナはそう言いながらも、少しまた胸がチクッと痛んだ気がした。


「はぁ、なんかわからないけど胸がモヤモヤするし、オクトでストレス発散してくるわね」

「おいっ、今のはだな……お前も励ますためで、まさかそのような嫌味に取られるとは思わなかった……俺はお前を好きになって……」

「……行ってきます」


ランドの声はリナには届かなかったようだ。無言で出撃していくリナを見送ったボンはランドの肩をポンと叩いた。。


「どんまい。けど、最後オクトに向かっていくリナ様の耳、真っ赤だったから、悔しいけど聞こえていたと思うぜ」

「マジか……お前っていい奴だな」

「お前もな」

「言葉遣い……って今は無礼講にしといてやるよ」


 その後、2人はリナがオクトと戦っていたが、あらゆる地域に被害が被っていたのだが、戦いの夢中のリナは全く気付いていない。ただ必死にみんなのために死闘を繰り広げていた。


が、やっとオクトも力がなくなってきたようである。その瞬間リナは最後のとどめだと言わんばかりにめった刺しにしていた。


思わずその悲惨な光景に、みな顔をしかめていた。リナはウキウキしながら「たこやき、たこやき、大阪名物たこ焼きが作れる」と謡っていたので、オクトが叫ぼうと何しようとお構いなしに、グサグサと足を一本ずつ切り取っている。はたから見るとホラーでしかない。


「はいよ。いっちょあがり。あーすっきりした。久々に暴れたわ。ついでにこれタコ焼きにするからこの足は冷蔵庫に入れておいてね」


「えっ……はい」


ミーシャはその戦場の空気にどんよりとされていたのだが、冷蔵庫という言葉で仕事モードに切り替わっていたのだった。根っからのキャリアウーマンタイプのようだ。


リナは、すがすがしい気持ちで気分も爽快で胸のモヤモヤも消えていたのだった。


「それにしても、やりすぎじゃないですか……リナ様」


ボンに言われて島の様子を見て、リナは驚愕した。


「うそっ!島が破壊されてるじゃない。今までの苦労はどうするのよっ。私の島が……みんなのハッピー島が」


ショックを隠せないリナの肩を抱いたのは、ラミレスだった。


まさかの行動に出たラミレスにランドは怒りが爆発しそうだった。


「そこは俺の出番だろうが……なぜお前が……俺を出し抜くんじゃない、引っ込んでろよっ!」


ラミレスはランドに対し静かに笑みを浮かべて、リナに提案する。


「リナ様、大丈夫ですよ。あの魔術師アレクと、リナ様の国の魔術師を集めればすぐに復興できます。それなら貴族たちにもマージン払わなくてすみますよ?」


「ちょっと、キリン、あなた最高じゃない。お主もわるよの」


「お主こそやるの」


「ってなにやらせるのよ。でも、私だけじゃなくてみんなも色々頑張ったから謝らなきゃ」


リナが反省していると、ランドが声を裏返させ話し始める。


「でリナリア、俺とけっ、けっこ……」


「アレク様? アレク様が目覚めたわ」


チェリの興奮気味の声でランドの声はかき消されてしまう。アレクはチェリに支えられながら、上半身を起き上がらせた。


「あっ……ここは? ってどうして島にいるんだ」


チェリは嬉しそうに答える。


「アレク様、ご無事で何よりです。リナ様が全部片づけてくれましたよ」


「さすがはリナ嬢って……その剣は……」


アレクはリナの持つ剣に反応した。


「あぁ、なんか私聖女だったらしいよ」


「だから、あの凄まじい魔力量だったんだな。納得した」


「でテリーはどこだ?」


「あそこにってリクなのよね」


「あぁ、バレたのか。そうだぞ」


ジェシーは、リクから出ている大量の汗を拭いてあげている。ミーシャが厨房から戻ってきたのかリナに問いかける。


「リナ様は聖女様になられたということはトラクスへと帰られるのですか?」


「えっ……私は……」


ミーシャは続ける。


「もうこれ以上無理や我慢はしないでください。リナ様が帰りたいと思うのなら構いません。私達はこの島で頑張りますので」


「あなたたちは私がいらないのね。そうなのね」


リナはミーシャから聖女の私はいらないと言われたようで悲しかった。子供のように拗ねるリナをランドが抱きしめる。


「誰もいらないとは言っていない。皆お前が心配なだけだ。遅くなったが、俺と結婚してくれ。俺ならもう一度この島を再建できる力と金がある」


「ちょっとっ、なんでいきなりなのよっ! それにこの島の復興をダシにするなんてずるいわよっ!」


「いきなりではないぞ。見て見ろっ。あーぐちゃぐちゃになっているがケーキの上に愛していると俺が書いたんだぞ」


「えっ、うそ。なにそれっ……そんなの知らないわよ」


思わずリナは熟れた果実のように首から顔まで真っ赤になっていた。ルーミーがいたずらっ子のようにはにかんだ。


「それはそうだよ。朝起きるといきなり殿下が皆に頼みがあるって土下座してくるし。一国の王子がだよ? びっくりしたけど、そんなにもリナ様が好きならって……みんなで協力したんだよ。だから、あとはリナ様の気持ち次第だ」


「みんな……ばかっ……」


気付けば涙が零れ落ちていた。

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