ラミレスのセクハラ事件

 リナは昨夜の出来事を思い出していた。


(それにしても、ランドも来るし、夫妻たちやボンもやってくるし、結婚していないとバレてしまうし本当に踏んだり蹴ったりの日だったわね)


リビングへ行くと、テーブルの上には朝食が準備されていた。ランドやボンはどこにもいなかった。もしかすると、レストランへ行ったのかもしれないと朝食を食べ、向かうことにした。


レストランでは、開店準備が行われており、セッティングされている机の上にはメニューがバッチリ置かれていた。そして、1輪挿しの小さな花もそれぞれのテーブルに置かれている。


「ねぇ、このお花誰が置いたの?」

「えっと……私ですけどダメでしたか?」


可愛く手を上げたのはジェシーだった。


「いえ、素敵よ。私が居なくてもなんだか大丈夫そうね」

「そんなことないですよ。リナ様がいるから私たちは頑張れるのです]



うるうるとした目が本当に美しい。そのジェシーを見つめていたのはランドだった。


やはり若くてかわいい子がいいのだろうか。ボンといいランドといい男って……


そう考えた瞬間に胸が痛い。どうしてだろう。不思議に思ったが最近の体調不良と似たようなものだろうと気にしないことにした。


制服もピアスも完璧だった。いつの間にかヘアセットも自分たちでできるようになっているのだから、驚きである。リナは嬉しいような悲しいような気持ちになった。子供が巣立つときってこんな気持ちなのかしらと母親のような気持ちになっていた。


その優しい眼差しを見ていたランドとボンは、思わず微笑んでしまっていた。それに気づいたラミレスが突っ込む。


「ちょっと、殿下もですけどそこの人も、美しい令嬢ばかりだからって顔が緩みっぱなしですよ」

「いや……違う。お前自分だけずるいぞ」


ランドはラミレスに抗議したが、ラミレスはしてやったりの顔で素知らぬ振りをしていた。


ボンは喜ぶリナを見て、安心していた。このままこうやってみんなで楽しく過ごせればいいなと思っていたのだった。


リナは招集をかける。


「みんな集まって。今日はせっかくなので本番の練習をします。お客は殿下とキリンと私ね。今日も指示は出さないから自分たちで考えて行動して」


「「はい」」


接客が始まり、無難にドリンク提供を終えたところでカクテルの開発が進んでいないことをリナは思い出す。あーまだまだ駄目ね。準備が整ったようで全然できていない。そして、料理が運ばれていた。


「おいっ、前回の時よりグレードアップしているぞ。見た目もそうだが、器が美しい」

「やっぱり貴族ね。そうなのよ。漂流物を拾っていたら結構使えそうなものいっぱいあってね。それを使ったの」

「ゲッ……不潔じゃないか」

「大丈夫よ。洗浄パワーで除菌できているわよ」

「うっ……」

「ランドって潔癖だったの? やだわ。そんな男は嫌われるわよ」


リナがそう言うといきなり夢中で食べ始めたのだった。その様子を見たリナはなんて負けず嫌いなのかしらと思っていた。


そして、メインのお肉の時にルーミーがお皿を持ってきていた。殿下の前で緊張していたのか皿がカタカタと音がしている。落とさないか冷や冷やして見ていたがなんとかここまでたどり着き、テーブルの上に置いた。


「あっ、あの……ちょっと失礼」


ラミレスは何を思ったのか、ルーミーのお尻を触った。


「キャッ、嫌ッ、なに? やめてっ。発動」


ルーミーはビリビリ腕輪を発動させた。リムはこんがり真っ黒になり髪の毛は爆弾先生のようにボンバーヘアになっていた。ちょっと面白いが、それにしてもラミレスの行動が気になる。


「キリン、どうしたの? あなたセクハラとかするようなキャラじゃないでしょうに……あなたまで欲求不満になっちゃたの? 男って嫌だわ」


「違いますよ。あの……このビリビリ痛いけど癖になりそうって……セクハラって私がですか!! やめてくださいよ。スカートに黒い虫が着いていたので取ろうとしただけですよ? あの虫は血を吸うので危険ですから、とはいえ、臀部付近を触るのだからもう少し気を付けるべきでした。申し訳ありません」


「あーそういうことねっ。おかしいと思ったわ。でも、使い方の確認もできてよかったわ。ナイスな仕事したわね、キリン」


「えっ、あっ、リナ様に褒めていただけるなんて嬉しいぃ」


そのままラミレスは倒れこんだ。まだ、電圧が強いのだろうか。でもまぁ、話せる気力があったしこれくらいの威力なら大丈夫そうね。


そして、肉を食べ、最後のデザートが出てきたとき事件が起きた。


いつものデザートではなく、大きなケーキがカートに乗せられてきた。リナは戸惑う。まるでウェディングケーキのようである。


こんなデザートなんか知らない。驚いているとランドが膝立ちになっていた。


「リナリア、俺と……」


カランカラン


レストランの扉が開くと、そこにはテリー(リク)がいた。

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