アレクの違和感
その頃、魔石を取り終わり、リナのことを城へと報告するために向かったテリーはブルトと会った。
「どうしたのですか? そんなに慌てて?」
「おいっ、まさか、アイツから聞いていないのか……殿下が居なくなった」
「えっ」
「あーもう時間がないんだ。お前も早く探せ。それかあの護衛が連れ去ったかもしれない」
「いえ、アイツはうちにリナが魔石が必要だと言いに来たんです。だから、殿下を連れ去るなんか……」
「お前妃殿下を呼び捨てなど侮辱罪でって今はそんなことどうでもいい。今すぐ殿下を探せ」
テリーは思わず、アレクの話を途中で切り上げたのを後悔した。アレクを探せばきっと殿下の行方は分かるはずだ。テリーは家に帰り、アレクが呼んでいた書物を探すことにした。
「あの本に魔石の並び方が書いてあった気がするんだよな。アイツどこにやったんだろう」
アレクがいつも食後に本を読んでいたので、何を読んでいるのか聞いたことがあった。魔力の使い方が書かれていると言っていたはずだ。自分のやり方とは違うから面白いと夢中で読んでいたのだ。
テリーは必死で家の中を探しまくる。隠すかのようにベッドの奥深くの下に隠されていた。
テリーはその魔法書の「召喚」というページをを片手に魔石を全部並べてみる。これだけあればアレクを呼ぶことができるかもしれない。その本に書かれている呪文を唱えてみることにした。
「ルアララ・ナラララ。アレクをここに召喚なり。召喚」
ボッと魔石が光始めた瞬間、犬が現れた。
「えっ、アレクなのか?」
「あぁ? ここはどこだ?」
「あーそのやけに老いた話し方はアレクだ。やった。俺魔法使えたぞ……」
テリーは魔力欠乏により、意識を失った。
「おいおい、初心者が召喚とか無茶しすぎだろう。授けた能力が意味なかったじゃないか。マジでテリーはダメだな。使えないにもほどがある」
アレクは倒れたテリーの横に置いてあった魔法書を見た。
その魔法は召喚ではなく、中身の入れ替えだった。だからさっきから胸が苦しかったのだ。そのままアレクも意識がなくなってしまった。
目が覚めるとアレクはやはりテリーの姿に変わっていた。力がなぜかみなぎっているがこの力はアレク自身のモノでも、もちろんテリー自身のモノでもない。このおかしな魔力の流れを生み出しているのは……オクトのものだ。海に沈んだあの時に何か押し付けられた気がしたが俺に魂を植え付けていたのか?
そう気づいた時にはすでに精神までもがオクトに乗っ取られていた。
「久々に人間の姿になったが、ちいせぇな。まぁ、この姿の方が人間どもに紛れ込みやすいな。魔力の高い人間から食って、人間たちに仕返ししてやる。やっと俺たち魔物の世界の時代がやって来たぜ」
オクトは、魔力が高まっている場所を探知魔法で探る。二カ所あったが、最近急激に魔力の流れが波立っているある島へと向かうことにした。
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