揺れ動くリナの感情

 リナの大声に気づいたジェシーがリナの部屋にノックをしてから入室してきた。


「大丈夫ですかって……リナ様何があったのですか?」

「こいつに聞いて。あと、殿下の美しいお顔に傷つけてはいけないので冷たいタオルの準備をお願い」

「あっ、はい」


ジェシーが再びキッチンへと向かい、部屋にはまた二人きりになった。


「リナリア悪かった……が、そんなにかわいいお前が悪い」

「……っ。だから、やめてよ。本当に最近みんなどうしたのかしら」

「おいっ、他にも誰かいるのか?」

「はぁ。もう何でもいいけど他の令嬢たちには手を出さないでよね」

「お前っ、俺はそんなだれかれ構わずこういうことはしない」

「よく言うわよ。綺麗な令嬢を見たら鼻の下伸びまくるくせに」

「はぁ? 俺がいつどこでそんな顔をしたと言うんだ」

「覚えていないなら、別にいいわよ」


リナはなぜか、ランドとのテンポのいい会話が楽しく感じられていたが、あくまでリナとランドは契約結婚であって本当の夫婦とは違う。そう思うとなぜか、胸がキュッと閉まる気がした。


「それでだけどね、ジェシーには夫婦喧嘩ってことにしておいてよね」

「おう。お前の浮気が原因だと言ってやる」

「なんですって。もういいわ。私疲れているのよ。あなたも下に降りて」

「あーわかった」


ランドはしぶしぶ階段を下りることにした。


「はあ。なんか本当に私疲れているわね。それにしてもアレク大丈夫かしら。てかチェリも心配だわね。あーもうやらきゃいけないことや考えなきゃいけないことがたくさんありすぎてしんどいわね。もう寝よう」


リナは疲れに耐えきれずに眠ることにした。


 ランドが下りてきたのを確認したミーシャはリナの部屋へと入室しようと扉の前でいたが、中からリナの声が聞こえてきたので、入室するのをやめて、休ませてあげることにしたのだった。


リビングでは、ジェシーが顔を真っ赤にしながらランドの頬を冷やしていた。


「殿下、大丈夫ですか」

「あぁ? あぁ」


ぶっきらぼうに答えるランドの様子に、ラミレスは珍しいなと思った。


(いつもは女性に対してここまで態度が悪いことなどなかったのに。それに大勢の人がいる中ここまで不貞腐れた態度を取るなど今までなかったが、何かあったのだろうか)


悩んでいるラミレスの顔を見たランドが怪訝そうに言った。


「おいっ、ラミレス。今余計なこと考えていなかったか?」

「いや、滅相もありません。アレクのことを心配しておりました」


ラミレスはいけしゃあしゃあと出まかせを言った。そのアレクという言葉に反応したのはチェリだった。


「アレク様がどうかしたのでしょうか……さきほどオクトに……」


チェリは考えただけでもおぞましかったのか震えていた。その震えるチェリをミーシャが励ます。


「アレク様はリナ様を手伝うことができるほどの魔力持ちよ。きっと大丈夫よ」

「そうかしら……」

「そうよ。私たちはこの島に来たのは自分を見つめ直すために連れて来られたと思うようになったの。もっと精神的にも強くなって人に頼ったり、心配したりするだけで何も自分では行動や努力しないようではダメなのよ。今どうすべきかを考えまずは自分から行動すべきではないかしら」

「そうね。私もここに来て色々かわったもの。アレク様が戻って来るのを信じて自分磨き頑張るわ」

「う……ん。そうね。私が言いたかったのはそういうこととはちょっと違うのだけどまぁ元気になったならいいわ」


ミーシャはチェリが一番どんどん前を向き成長しているなと感じていたが、それを聞いていたルーミーもそのまま何も言わずに部屋へと戻り、イラスト作成に取り掛かることにした。

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