リナの限界
リナは手を叩き、招集をかける。
「みんなお疲れ様。ジェシーにやってもらったようによろしくね。初めは少々ミスしても怒らないけど3回以上ミスったら罰を与えるからね」
「おいっ、罰ってなんだよ」
ルーミーがビクビクしながら聞く。
「まぁ、ミスしなければいいだけの話よ」
「こわっ」
ルーミーはその罰が気になってしまったが、これ以上聞くと自分で試されそうな気がしたのでやめた。たぶん例の電流だろう。
「あーでも、ルーミーはあれよ。妹バージョンだからね」
「妹バージョンってどういうことだよ? まさか前みたいにしろとか言うんじゃないだろうな……」
「わかっているじゃない。あれはもうテンプレってか妹専用のセリフがあるから今度書いて渡すから心配いらないわ。よしっ、今日はこれで解散にしましょう」
「はいっ」
全員持ち場に戻り、片付けを始めた。アレクにボンを頼むことにする。
「アレク、ボンを家まで運んであげて。家わかる?」
「あぁ、わかるぞ。任せておけ。リナ嬢も罪深いオナゴだな」
「はい? 何の話よ」
「まぁいい。ではな」
アレクはボンを肩に背負った。ボンの家に着きベッドへと運ぼうかと思ったが面倒だったのでソファーに寝転ばせるとボンが何か言っている。
「リナ様、なぜあなたはリナ様なのですか……」
「おいおい、何わけのわからないこと言ってるんだ。それにしても、こやつは本当に報われないな。我が少し手を貸してやらねばならないな」
アレクはよからぬ構想を立てていたのだった。
※※※
みなが解散し、1人になったリナは疲れており、その場にへたり込んだ。
(なんで最近こんなにも疲れやすいのかしら。魔法の使い過ぎかな。って魔石がもうあと2個しかなないんだった)
リナは水を飲んで、一息ついてからランドへと連絡した。
「あぁ、ランド? 先日はありがとう。でね、まだ作りたいものたくさんあるから魔石持ってきてくれない? 3日以内でお願いできる」
「相変わらずいきなり連絡するなよ。驚くだろうが。ってなんか声にいつものような毒気がないかどうした? 何かあったか?」
「えぇっ……?」
リナは驚いてしまう。そんなにも声に張りがなかっただろうか。自分が思っている以上に相当疲れているのかもしれない。
「おいっ、聞こえているか? 大丈夫か。倒れていないか?」
異常なほど心配そうに声をかけるランド。その優しさになぜか心を打たれるものがあったのか、それとも、疲れからなのかはわからないが涙が一粒伝っていた。
(私本当だったら、この人と結婚して今頃幸せに暮らしていたのよね……なのになんでこんなことしているんだろう……)
意味がわからない感情が沸き上がってきて、声を出すことができない。
「おいっ、まさか泣いているのか……?」
「……っ、泣いて……ないっ」
「嘘つけ、泣いているじゃないか……どうした? 何が辛い? 言ってみろ」
「バカッ、全部あんたのせいでしょ。もういいわ。もう連絡しないから」
リナは思わず感情に任せて切ってしまった。
「あっ……魔石」
そこにミーシャが大きな声を出していたリナに気づき駆け寄ると抱きしめて、優しく謝った。
「ごめんなさいね。ずっと1人で気を張ってたのよね。本当にごめん。これからが私がもっとしっかりするから」
ミーシャの優しい言葉にリナは堪えていた全ての感情があふれ出してしまい、子供のようにワンワンと泣きだしてしまった。
ミーシャはそんなリナの背中をトントンと叩き、慰めていた。
その大きな叫び声に近い泣き声に反応した令嬢たちも心配になり、リビングへとやってきた。もっと頑張らなくてはと心を入れ替え、リナ様のためにもこのレストランへ島開発のためになることを考えようと各自ができることを考えるようになったのであった。
その光景を見ていたアレクは、リナが限界だと判断し独自に一度王国へ行き、テリーへと報告に行こうと旅立ったのである。
リナはこのように感情の赴くままに泣いたのは今まで初めてだった。
涙で顔もぐちゃぐちゃでしゃがみ込んでいた。だからこそ、リナを令嬢たちが取り囲い込んでいることさえ気づいていなかった。
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