花畑神殿

 花畑には、赤、青、黄色と3色のチューリップに似た花がたくさん咲いていたのだが、土地が整備されておらずに通路がない状態だった。これは観光としては不向きである。


通路を確保するためにはいくつかのお花を引き抜かなくてはならない。もったいない。これは魔石というより人力に頼るしかなさそうだと判断する。


その奥には美しいパルテノン神殿のような外観の建物があった。鐘もならせそうだ。ここの入り口に入園料を設置して、この神殿で鐘を鳴らしたものは幸せになれるとか宣伝して1回鳴らすのにも利用料を取ればいいわね。


いいわ。いいわよ。稼げるわね。リナは1人欲にまみれた顔で1人にやけていたのだった。


ボンはその顔を見て、やはりリナ様は変わらない、このように悪だくみしている方が性に合うなと思い、ほほえましく見ていた。


そして、その二人の様子を見たアレクは、やはりテリーではなくボンを応援しようと決める。


リナは、今ここには1人ではなかったことを思いだし、我に返り、ボンに問いかける。


「そうそう、ホテルはどこにしようかしら?」


「ホテルとは何ですか?」


「えぇ……宿泊施設のことよ。それならあの温泉とやらのところに作るんじゃなかったですか?」


「あーそれなら、温泉施設は別のレジャー施設として開業するから却下よ」


「レ……ジャ? ってなにか分かりませんが、他の土地となるともう残りはキラの家畜場の横しかありません」


「家畜場の横はだめね……」


リナはここにきて厄介な事実に気づいた。本来なら家畜場をつぶしてしまえばいいがあの鳥は料理に必要である。さてと、どうすべきか……


持ち帰り案件として考えることにしたのだった。だいたいこの島は半日もあれば全て回り切れそうだった。先程のレストランから温泉施設まで徒歩で約1時間。温泉施設からここの花畑まで2時間。


そして、この花畑からキラの家畜場まで2時間もかかる。徒歩だけでは確実に無理である。


ここは魔石を利用して、タクシー的なものか、観光バスを作り出す外なさそうである。他にも海を眺めれるいい景色の場所もあるので、その陸地には展望台なども作り、さらに入場料を取れるという算段である。


なんなら、島に入る島民税のようなものも徴収することができれば大儲け間違いなさそうである。


しかしながら、さすがに3時間歩きっぱなしだと足が疲れた。少し休むことにした。


「少し休みましょう。小腹が空いたけど何もないわね……」


「あーそれならミーシャがリナ様が準備に行っている間に軽食を持たせてくれましたよ?」


ボンが持っていたかごからサンドウィッチのようなものを出した。リナはミーシャに感謝したのだった。


「じゃあ、みんなでいただきましょう」


「いえ……急だったからとリナ様1人分しか作れなかったそうなんで俺たちは大丈夫です」


「そう……わかったわ」


リナはそう言うとそのサンドウィッチ風のものを3つに分けた。


「みんなでわけましょう。帰りも歩かなくてはいけないから」


「……リナ様、そこで優しいとかやめてくださいよ。抱きしめちゃいそうになります」


「ボンマジでどうしたのよっ……疲れた? ハゲだから日差しが直接当たりすぎて頭おかしくなったの。大丈夫?」


「ハハハ。リナ嬢は本当に男心をわかっていないのですな」


アレクが笑ったが、リナには全く意味が解らなかったのだった。


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