温泉完成
次の日、レストランに皆集まっていた。リナは前回の反省を生かし、揚げ物は変更するように指示を出し、接客のレベルを上げるため何度も練習をさせた。
次第にみな自然と笑顔で接客できるレベルにもなっていた。ボンの迷惑客バージョンも難なくこなせるようになり、夫妻たちが作り出す料理のスピードも上がっており、ピアス式のインカムも相重なり、全て効率よく動けるようになっていたのだった。
レストランはこれで問題ない。あとは観光地である。
ブルトやゲイトに任せているが、温泉地を人手を利用して開拓していては何年かかるかわからない。リナはもうすぐにでも営業を始めたいのだ。それでは間に合わない。
接客や料理レベルも向上したことで、ご褒美として休日を与えることにした。
「1か月ぶりの休日だな。リナ様はやっぱり厳しいな」
ルーミーが言った言葉でリナはハッとさせられた。
「え?1カ月休みなしだった?」
リナはその事実を誰もつっこまない人々に感謝しつつ、ワンマンだったことを反省した。
(休みなしで働かせるとかどんなブラック企業なのよ。あまりに夢中だったから忘れていたわ。みんなごめん)
リナは休みを利用し、温泉と花畑を見学することにした。
「アレク、魔石を準備してついてきて」
「あーわかった」
そこにボンが割り込んだ。
「リナ様はまだ場所わからないでしょう? 案内しますよ?」」
「いいの? ありがとう」
「お安い御用ですよ」
ボンは嬉しそうな笑みを浮かべたリナに癒されていたのだった。
アレクはテリーのことを思うと、複雑だった。
(テリーよ。リナ嬢にはこの男の方がいいのではないかな。こやつの方はよっぽどリナ嬢を心配している。想うだけが愛することではないのだぞ)
そして、3人は温泉へとたどり着いた。
「なによ。これ。本当に土からお湯が沸き出ているだけじゃないの……もっとマシなのを想像していたのに……」
「だから、そのまま言ったじゃないですか」
「この規模じゃ魔石が何個あっても足らないし、どうしよう」
「リナ嬢何をそんなに困っているのだ?」
不思議そうにアレクはリナに尋ねた。
「アレク、この出てくるお湯を利用して入浴するようなバスタブじゃないわ。この世界ではなんだっけな。思い出せない」
「あーあの令嬢が湯あみをするために侍女たちが持って行くあの大きな桶か?」
「そうそう。それよ。できるかしら?」
「難しいな……まぁ、やってみようか。魔石を30個消費することになるかいいか? それに成功するかは半分の確立だが」
「う……ん。待って。絵で説明するわ」
そう言うとリナは魔石を利用し、紙と鉛筆を出し、温泉の絵を描いた。絵心がなく大きな大浴場ではなく、五右衛門風呂のようなイメージになってしまったが仕方ない。本当なら露天風呂とか作りたいのだが、欲は言えない。
「……どう? わかるかしら?」
「その桶を大きくして石でコーティングすればいいわけだな。これなら65パーセントくらいで成功するかもしれぬ」
「うっ……15パーしか変わっていないし。ルーミーだったら100パーセントにできるだろうに悔しい。仕方ないわ。よろしく」
ボンは二人の話を聞いて、この人物も魔術師であることが理解できた。この雰囲気の魔術師をどこかで見た気がするか気のせいだろうか。ボンはボーと眺めていた。
アレクは魔石を並べ、リナが描いた絵をイメージする。すると、土からお湯が沸き出ていたのが一度止まったかと思うと、光に包まれた後、確認してみると大浴場へと早変わりしていたのである。しかも、男女混浴の外湯の露天風呂のようになっており、思っていた以上の仕上がりに驚いた。
「アレク、すごいわっ。完璧じゃないの。これで着替え小屋はブルクに任せるだけで済むわ」
興奮して喜んでいたリナはアレクに抱き着いていた。ボンは嫉妬で慌てて興奮するリナに声を掛ける。
「次は花畑だが、今度は上手くいくわからないぞ。早く行こう」
「あっ、そうね」
リナはアレクから離れて向かうことにする。アレクは突然のリナの行動に驚いた。
(こんなに子供のようにはしゃぐ一面を持っているとは本当に人は見かけによらぬものだな。おもしろい。それにしても、この男本当にリナ嬢が好きなのがわかるな)
リナは、まだ興奮が収まっていなかった。
「もう完璧だわ。これで着替える場所を作ったとしても、さすがにこの世界の人に裸で入れとは無理だから水着を魔石で作って水着で入るようにさせて、そこであのトロピカルなジュースを移動販売したら儲けられるわ。あっ、その前に貨幣をつくらなきゃね。相場も考えて。あっ、両替所もいるじゃない」
1人観光地事業の思考を巡らせていたのだった。
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