ルーミーは天才画家

 リナは二人が出ていくのを確認して、ルーミーに声を掛けた。


「ルーミーメニュー表はどこ? 見せてくれる」

「了解、部屋にあるから見に来てくれ」

「わかったわ。ミーシャ片付けを悪いけど頼んでもいいかしら?」

「はい。大丈夫です」

「では、よろしくね」


ルーミーの部屋に入ると、足の踏み場もないくらい汚かった。


「ルーミーこれはひどすぎるわ。汚部屋じゃないの」

「失礼な。これでもどこになにがあるかわかっているから問題ない」


そういうと、ベッドの奥深くから何かを取り出していた。


「なんで、そんなとこにあるのよ。普通は机の上とか引き出しから出てくるでしょうに……」


「はいはい。そんなことどうでもいいだろう。これでどうだ……?」


渡された絵を確認すると、男っぽい話し方とは真逆の繊細で柔らかい線のタッチで描かれていた美しい風景画に驚くリナ。


「すごいっ」


リナは、その素晴らしい絵に感動してしまう。ルーミーの絵は美しくて心に響くものがあった


エメラルドグリーンの海とウィス木、そして、恋人神殿が描かれており、そこには男女が描かれている。これは結婚式のパンフレットに利用できそうなくらい見た目も出来も完璧で最高級であった。


目に涙を浮かべるリナに気づいたルーミーは焦っていた。


「おいっ、どうしたんだよ。そんなに泣くほどダメか? リナが泣くとか天地がひっくり返った気がして、世界が崩壊してしまうんじゃないかと不安になるからやめてくれよ」


そう言って、その絵を破ろうとした。


「ダメッ。違うのよ。なんか荒れていた心が洗われるなってね。私もあなたと同じで口も悪いし、喧嘩早いじゃない……なんか姫さんだったし、色々と全部考えちゃってね。私って何やってるだろうってね」


「あーそれわかる。令嬢だからちゃんとしなきゃいけないとかアイツら心が狭いというか、型にはまったことしか認めないもんな」


「そうなのよ。だから、ここに来てちゃんと人間らしい生き方したかったのにまだまだだわね」


「そうか? 十分口は悪いが、リナは優しいときもあるし、今のままでいいんじゃないか? まぁ無理していなきゃだけど……」


「ルーミーありがとう。あなたのこと見直したわ。男ならここでキスって言うくだりだわね」


「おいっ、きもいからやめろよ」


「うそうそ。意外に心は乙女なんだからかわいいわね」


「茶化すのはやめてくれ」



2人はクスクスと笑い合った。そして、リナは絵の裏にメニューを書くつもりだが、字だけでは面白みがない。空いたスペースに書く用のワイングラスや地元の料理のイラストなど考えておくようにとルーミーに頼んでおくことにした。


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