料理の試食会

 サラダを運び、食事も始まるとサラダの受けもよく皆が完食していた。


だが、問題はリナたちも手こずってしまった虫のようなグロテスクの揚げ物である。さすがの男性陣もドン引きである。思わずゼニス男爵は、顔をしかめながら罵った。


「この島はこんなものすら食料にしてみるほど貧相な島のか」

「ずっとお静かにお座りできる犬かと思っていましたのに、やはり遠吠えしないと気が済まないのですね?口を動かすなら召し上がってはどうです?」


リナが嫌味の含めた微笑みを投げかける。


「こんなもの食えるか」


ゼニスは皿をひっくり返した。


「ちょっと貴重な食材を何するのよ」


リナはぶちぎれてゼニスを殴りつけた。それを見ていたルーミーは内心笑った。


(自分がお客様に手を上げたらだめだと言って自分がやってどうするんだよ)


すかさず前回の失敗を生かすためにサラが厨房から飛んできた。


「申し訳ござません。お怪我はございませんか」


上目遣いのサラは気品である。思わず嬉しくなったリナはサラを褒めた。


「サラすごいじゃない。ちゃんとできているじゃない」

「……はい」


恥ずかしいのか下を向いている。2人の会話を聞いたパキラは思わずフォークを落とした。


カランカラン


サラとパキラの視線が絡み合う。


「サラ……?」

「キラ……なの?」


2人の空間に妙な空気が沸き上がる。ラミレスがその雰囲気をぶっ壊した。


「リナ様、この者がキラですよ。ちゃんと探しましたよ」

「あーはいはい。偉い偉い」

「あーありがたい。そのおざなりの感謝でら、私には嬉しいです」

「相変わらず、おかしいわね」


ラミレスは喜んでいた。それの様子をボンが怖い顔をしながら見つめていた。リナは気にしないようにキラに尋ねた。


「はいはい。そこの二人は後にしてくれる。であなたはこの料理どう思う?」

「え……見た目は抵抗がありますが味はすこぶるおいしいです」

「そうよね」


テリーが言った。


「妃殿下の国のエビフリャアのようにこの虫を綺麗に衣で包み見えないようしてはどうですか」

「あーその手があったわね。よく知っているわね。アドバイスありがとう」


とお礼を言うと、なぜか見つめ合う形になってしまう。


(やっぱりリクに似ているけどこんなところにいるわけないものね。どうしよう。重なってしまい胸が苦しい……)


見つめ合う二人をにやにやと見つめるゲイトは、テリーがなぜあんなに珍しく必死になっていたのかすべてが理解できたのであった。


その様子を見てランドは疑問に思う。


(もしや、テリーはリナリアのことが好きなのか……?そんなバカな……あいつはリナリアの護衛だったのでは?)


ランドはなぜかその二人の中のよさそうな雰囲気を見て、胸が痛んだ。


「リナリアよ。魔石はいつ渡せばいいのだ」


気付けば二人の邪魔をする発言をしていたのだった。



  リナは「魔石」という言葉に現実に戻る。


(恋愛とかに現を抜かしている場合じゃなかった)


「ありがとう。でも、うちのお父様が、魔石をよく渡してくれたわね。どうやってもらったの?」

「いや、我が国にある魔石だ」

「そう。ランドの国も魔石なんかあったのね。意外だわ。あとでもらうから今は食事を楽しんで」


そう言うとリナは厨房へと戻っていった。


ランドとの会話は業務的な話であり、視線すら合っているかどうかすら怪しい。なぜかそれが悔しかった。


ボンとミーシャが肉を運んでくる。


一同はそれを見て驚愕した。


「なんだ。この動物の死骸は……」

「おいっ。こんなものを客に見せるでない」


ランドとゼニスはわめきだすが、冷静に褒めたたえる者もいた。


「おーこれはすごい。インパクトがあるから宣伝にもってこいだな。さすがは妃殿下ですね」

「ブルト閣下にそのようにおっしゃって頂けて嬉しいですわ」

「閣下の言う通りですね。これは素晴らしい。いい見世物になる」


ゲイトも興奮しているようである。


「ありがとうございます。しかし、これからが本番ですのよ」


リナはボンからナイフを受け取る。ラミレスは思わずランドの目の前に立った。


「キリンさんは何をしているのかしら?」

「殿下をお守りせねばと思いまして。というよりあわよくばそのナイフを私に投げてくれないかな……なんて思ったり?」

「はぁ、変態なのはもういいから。心配しないで。切り取るだけよ」

「殿下は脂身たっぷりかヘルシーはどちらがお好みですか」

「そうだな。中間はないのか」

「あーわかりました」


リナは中間の部位を切り取った。


「ミーシャこれにソースを盛り付けて。できるわよね?」

「はい」


ミーシャは綺麗に盛り付けていく。さすがはミーシャ、器用である。


その間に他の者たちにも一人ずつ確認していき、盛り付けていった。7人切り取ってもまだまだ部位が切り取れるほど残っている。結局ソースはバルサミコ酢風の酢を使った味付けに変更しておいた。


テリーが食べ、思わず声を上げた。


「これうまっ。今までの中で最高だよ」

「そうだな。これはいい」

「見た目はちょっとあれだが……考えようによったらおもしろいのかもな」


それぞれが自分たちの思いを口々に話していた。


リナはその様子に手ごたえを感じていたのだった。


ミーシャもまた、ブルトの威厳さある態度と判断力の高さに父親像を重ねていたのだった。


ゲイトもクオリティーの高さに驚いていた。隣にいたテリーに耳打ちする。


「この島、マジで大化けするんじゃないか」

「そうだな……さすがはリナだと思う……」

「やっぱり、妃殿下目当てなのか。でも、王子の妃だぞ?本気か」

「違う。まだ妃じゃない」

「えぇ―!! どういうことだ」


ゲイトが叫んでしまったことで2人は注目を集めてしまったのだった。










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