ビジネス話

 リナはドリンクの注文も取ろうとしたが、まだメニュー表がない今出すことができない。無難に水を出すことにしたのだが、レモネを絞ったレモン水のようにしておいた。


水を飲んだブルトが興味を示したようだ。


「この水はレモネを使用しているのか?」

「はい。レモネは高級ですがこの島では簡単に採取できます」


ミーシャが答えていた。やはり、場慣れしているのは大きい。落ち着いているようだ。


「そうなのか。これは美味だな。お金を取ってメニュー表に入れてはどうだろうか」

「……オーナーに確認しないと私には判断できません」


ミーシャはリナへと視線を送った。リナはブルトに説明をする。


「このレモネ水はうちのレストランのサービスで行っているのでそれは致しません」

「そうか。もったいないがそのようなコンセプトなら仕方あるまい。しかし、内装はこれほどまで煌びやかに装飾するのであれば、外装との差異が激しいのではないか」

「はい。それはそうなのですが、何しろ人手が足らない上に材料もございませんので……」

「そうか。なら支援しよう。このビジネスは儲けが期待できる」

「ありがとうございます。それでは人手と外観の工事をお願い致します。費用はどのようにさせていただければよろしいでしょうか」


リナは内心ガッツポーズをしたかった。大企業のパトロンができたようなものなのだ。鬼に金棒である。しかしながら、きっとビジネスには必ず裏がある。それは何かを懸念した。


「外観工事においては、投資ということで私からの殿下との結婚祝いにさせていただくことにしよう」

「本当によろしいのですか。ありがとうございます」

「あぁ。ただしそちらのレストランは私からの紹介がないといけないということにしてもらいたい」

「いわゆる独占契約ですね」

「さすがは妃殿下、知識が豊富でいらっしゃる。その仲介手数料として売り上げの20パーセントをこちらに付与していただく」

「はい? 20パーセントはやりすぎでは? 普通は15パーセントが相場でしょう。吹っ掛けないでもらえます?」


リナはブルトを睨んだ、周囲の者は焦っている。いくら妃殿下とはいえ、目上の者、ましてや、古株貴族に対してそのような態度は不躾すぎる。ランドは間に入るべきか悩んでいると、ブルトが大声で笑った。


「はははは。すごいな。ビジネスとは無縁だと思っていた妃殿下がここまで精通しているとは……申し訳ございません。なら15パーセントでお願いします」

「バカにしないでいただける? こちらは本気で国いや、世界ナンバーワンレストランを目指しているのよ。きっと今後活躍して評判になれば引く手あまただと思いますので、そんな不利益を被る契約など致しません」

「うぅ……ん。そうか、では13パーセントでどうだろうか」

「いえ、10パーセントでも多いくらいですわ。5パーセントでどうでしょう」

「おい、本気か……言葉が乱れてしまい申し訳ございません。8パーセントでどうでしょうか」

「仕方がないですわね。それで契約いたしましょう。ただし、毎月最低100名以上の集客ができなかった場合はコミッションはお渡ししません」

「はぁ。こんなやり手な相手は今までいなかった。観光事業も力を入れていけば大丈夫でしょう。早速書類を作成します」

「お願いします」


周囲は二人のビジネストークを聞いてて、ひやひやしていた。


(こいつらは絶対的に回してはいけない)


皆が思ったのであった。ゲイトは観光事業という言葉に反応した。


「なら、観光事情はうちの商会が支援いたします。もちろん手数料はいただきますが、それまでの開発に関わるお金は全てこちらが負担いたします。修繕まで面倒を見ましょう。妃殿下どうでしょうか?」

「そうね。それなら8パーセントでいいわよ。観光事業はこの島の柱となってもらうつもりだし、入場料も取るから大丈夫だと思う」

「ありがとうございます。至急準備いたします」


リナはとんとん拍子に運ぶビジネス話に喜んでいた。


「申し訳ございません。お料理が遅くなっていまいましたね。今から島の名物をコース料理にしてお出ししたいと思います。ぜひご堪能してくださいませ」


リナは厨房へと下がり、令嬢たちへと運ぶのを促したのであった。


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