島到着

ゼニス男爵は、にんまりと笑い思わず生唾を飲んだのだった。


船が島に着くと、女性たちが花の首飾りをつけてくれる。最初に降りた船員にすら首飾りをつけようとしたルーミーに手で制止するリナ。冷静な態度を心掛けながらも、リナは目を円くして一人の男性を凝視していたのだった。


一番目に降りてきたのは、やはりランドだった。ルーミーはまさかの相手に驚きながらも、首飾りを着けに行く。


「ハッピー島へようこそおいで下さいました。リロリロ」

「お前は誰だ。この島の者か……?それにリロリロとはなんなのだ」

「ランド殿下、そんな来たばかりで質問してはこの者も困ります」


ラミレスはランドを制止すると、リナに合図を送っていた。


(リナ様、やりましたよ。これでいいんですよね。早く褒めてけなしてください)


期待を込めてリナを見ていたが、リナは安定のスルーだった。


(さすがは、リナ様です。それでいいんですよ。その無視が私にはご褒美ですから)


次々と船から降りてくる。ラミレスにはサラが、ブルトにはミーシャが、ゲイトにはジェシーが、ゼニスにはチェリ、アレクとテリーにだけ掛ける人がいない。慌ててリナが掛けることにした。首飾りを掛けるとリクに似ていると思っていた男性が、にこやかに微笑したのだった。


 その様子を見ていたアレクは感じ取る。この佇まいと異常な魔力を持っている姫さんで間違いなさそうだな。リクの思い人はコイツなのか。そう思うと少し意地悪したくなってしまった。


「あー美しい姫よ。我が妻に娶りたい」

「おいっ……アレク何やってるんだよ」


リナは固まっていたが、すぐに接客バージョンへと切り替える。


「ありがとうございます。しかし、わたくしはそこにいるランド殿下の妃ですの。申し訳ございませんがレストランではお酌もさせていただきますのでお許しを」


華麗な礼で見事にアレクの挑発を交わしたのだった。


「おーそうか、このレストランはそんなサービスを行っているのか。それはよい」


ゼニス男爵は、気持ち悪い吐き気が出そうな程いやらしい笑みを浮かべていた。リナは「コイツ。絶対変態だ」と要注意と頭に叩き込んだのだった。


「それでは、早速レストランへとご案内します。ボン、頼むわね」

「えっ、はいっ」


いきなり呼ばれたボンは仰天しながらも、人好きのする表情を作り、案内することにした。


テリーはリナがすっぴんだったことに内心安堵していた。もし、リナが本気の化粧をしていたならランドに気づかれてしまう。


ランドはキョロキョロしていたのできっとあの時の美女がここにいる可能性を考えたのだろう。必死で探していたが、いないのを確認するとがっくりと肩を落としていた。


その姿を見るだけで、ランドの相手の女性への思いが深いことがうかがえる。


(絶対に、思い人がリナだとバレてはいけない)


テリーはばれないように注意を払わなければならないと警戒するのであった。

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