ラミレスの違和感
ラミレスはテリーに対して不信感しか抱いていない。この男はいつの間にか貴族の仲間入りし、ランドと知り合いになっていた。身のこなし方も貴族らしくない。なにしろ、ラミレス自身が知らないということが一番の違和感である。コイツはいったい、何者なんだろうか。
考えながら、通路を歩いているとテリーに出会った。
「あ、テリー様ランド王子がお呼びですので、ご一緒願います」
「ゲッ、また何かやっかいごとを押し付けられそうな気が……」
「さようでございます。リナ様が魔石をご所望でして」
「マジか……あいついったい今度は何する気なんだよ………さすがはじゃじゃ馬なんだから。変わっていないな」
遠い目をし、リナのことを思っているのかにこやかに微笑んだ。
ラミレスは下僕として知らないことがあってはいけないと、思わず尋ねていた。つまり、嫉妬なのだが……
「テリー様は、リナ様のお知り合いなのですか? 私の知るところあなた様は貴族ではないはず」
「あ? まぁ俺からは言えねえ約束なんだわ。行くぞ」
黙って早々と歩き出す。リナ様をアイツと呼ぶ当たりかなり親しいご様子に嫉妬してしまうリムだった。
トントン
「ラミレスですが、テリー様をお連れしました」
「入れ」
テリーは礼を取ろうと座ろうとしたが、ランドが制止した。
「テリー、そのような振る舞いはいらない。早速本題に入る」
「はい。魔石が必要なのですよね?宰相から聞きました」
「そうだ。頼めるか」
「確か、この国には魔石がないのでしたよね……それなら国に帰るしか方法が……」
「あぁ、でも、お前を国に帰らすとなると、リナの父親に詮索をされる可能性がある。それだけは避けたいんだ」
「また無茶振りですね……確か、昔は魔術師もいたのでしたよね?」
「そうだな。50年以上前には存在していたらしいが、魔石が取れなくなり徐々に衰退してしまったらしい」
「そうだったんですね。ちなみに、その魔術師たちが住んでいた場所ってここから近いですか?」
「あー馬を走らせた3時間ほどで着くマジク森だ」
「一度そちらに向かってみます。この借りは必ずいつか返してくださいよ」
「そうだな……覚えておこう」
テリーはそのまま馬小屋に行き、馬を調達し向かったのだった。
「ランド様、1人で向かわせてよかったのですか?あそこは今……」
「アイツのことだ。大丈夫だろ」
「どこまでテリー様を信用なさっているのかはわかりかねますが、あまり信用されると裏切られたときのショックが大きいですよ」
「まぁそうだろうが、アイツはリナがいる限り裏切ったりはしないよ」
「なぜ、ここでリナ様が出てくるのですか?」
「まぁいいじゃないか。準備は整ったのか?他の貴族たちにある程度の情報を知らせておけ」
「あっはい」
ラミレスは納得いかなかったが、命令に背くことはできないのでそのまま書類作成に励むことにした。
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