テリーの登場

 個性豊かで、写真映えしそうな美味しい料理にリナは興奮していた。最後のデザートはどうしようかしら。


「で、最後のデザートは何出すの?」

「デザートとは何ですか?」

「ケーキとかフルーツとかよ」


リナは、デザートが通じないことにイライラしていた。


「あぁ、フルーツならここは豊富にありますよ。少し待ってください」

「5分以内で用意して」


相変わらず容赦ない指示に令嬢たちも驚いた。


ルーミーがリナに質問する。


「この料理が決まったら、どうするんだ?人がいないぞ?」

「そうなのよね―それが一番の問題よね」


リナは考えた。あとはお客様を待ち受けるまでだけど、この島には誰も来られないのよね。さて、どうしましょう。


ボンが提案する。


「実はキラ以外にも向こうに知り合いがいるんだよ。だから、そいつらとか元島にいた住人を招待すればいいんじゃないか?」

「あんた、やっぱりバカね。ここの島以外の人たちに来てもらうから意味があるのよ」

「あんたは、キラッて子に連絡しなさいよ?」

「いやいや、できるならしますけど、連絡手段が……」

「そうだったわね。なら王子に相談しましょう」


リナは王子に魔法で連絡した。



 突然ランドは、耳から声が聞こえ驚いて、持っていたペンを落としてしまう。


「チッ、またあいつかよ」

「ちょっと、いつからそんな態度が大きくなったのかしら?」

「うっ、すまん。で?今度は何だ?」

「キラッて子探してるんだけど、知らない?」

「そんな奴知るかよ?一国の王子だぞ?1人1人の庶民の名前なんか憶えてられるか?」

「はいはい。貴族様はそんなんだからろくに土地も管理できないのよ。まぁいいわ。探しておいてね。明日まで。キリンに頼めば大丈夫でしょ?」

「はぁ?キリンって誰だよ?」


たまたま横で書類整理をしていた宰相が喜んで返事する。


「はい、リナ様、ランド様の仕事より早くやります。ぼくは今から外出します」

「おい、ラミレス?仕事を放置するとは何事だ!!」


ラミレスは、リナの舎弟に近いと勝手に思っていた。本能で扉から飛び出していた。呆れながら、ランドが言う。


「お前、ラミレスに何言ったんだよ?アイツ女に興味ないはずだったんだが?」

「あ?そんなの知らないよ。でさー島にレストラン作ったから、10人ほどなんか権力ある人たち島に案内してくれない?」

「はぁ、お前はいったいその島で何をしてるんだよ。権力あるって、また説明がざっくりしてるなー」

「あら?あなた王子だから、1言えば10お分かりになりますわよね?では、それは準備も含めて3日あげるからね。よろしくー」

「おい」


と、抗議しようと思ったが、もう通信は切れていたようだ。ランドは思う。この魔法は早く俺も手にしたい。島へ権力のあるやつと言ってるんだから、俺も問題ないはずだ。俺とラミレスとあとは、貴族たちの数人連れて行けば大丈夫か。


ランドは、貴族の一人である公爵であるテリーを呼びつけた。


テリーは、ダルそうに謁見の間まで、歩いていた。


なんで、俺はこのろくでもない王子のために働かなくてはならないのだろうか。約束が違う。俺はなんのためにここにやってきたのだろうか。好きな女一人もろくに守れやしない。テリーは王子を恨んでいた。


しぶしぶ敬意を示すために、膝をつき、頭を下げながら黙って、王子が話しだすまで黙っていた。王子からの許可がない限り貴族であっても話すことなど許されないらしい。正直俺にとってはどうでもいいのだけど。


「テリーよ、顔を上げよ。貴族の中で顔が広い奴らを7人集めよ」

「はい?どうしてでしょうか。理由がわからねば集めることすらできませぬ」


ランドは、イラっとしながらテリーの推察力に感心していた。


「あぁそうだな。この国が持つ一つの島であるココ島にレストランをオープンしたのだが、それを宣伝してもらいたい。もちろん、俺とリム、この件に関わることになったお前も行くのは決定だからな」

「あんな島にレストランが?誰がそんな無意味なことをやりだしたのですか」

「……俺の妃であるリナリアだ……」

「さすがは、リナですね」

「あぁ、できそうか?期限は3日だ」

「え?そんな無理ですよ……」

「お前の人たらし力ならなんとかなるだろ。頼むぞ。では出ていけ」


なんて勝手な話があるのだろうか。テリーは王子に思わず食ってかかってしまった。


「なら、3日で準備できたら、俺は貴族辞めてもいいですか」

「はぁ?お前みたいな優秀な奴辞めさせるわけにはいかない」

「よく言いますよ……俺のこと無理やり公爵にさせたくせに……」

「……それは言わない約束だろうが……まぁ、考えておいてやろう」


ランドは上から目線でテリーの肩を叩く。


テリーは謁見の間から出てから貴族たちの家に駆けまわり、そのレストランがいかに素晴らしいか知らないくせに適当に吹き込んでいった。


「島を開発して、レストランができたそうなんですが、それが素晴らしいレストランだそうですよ」

「おぉ、どんななのだ?」


侯爵ブルトが興味を示した。


「それがですね、美しい景色と美味しい料理が味わえるのですよ」

「そうか。なら行ってみよう」


1人目を準備できた。


  次の日、同じ公爵であるゲイトに相談した。


「王子にまた無茶振りされたんだよ。助けてくれ」

「あ?またか。お前王子に好かれているな。仕方ないな」

「ゲイト、持つべきものは権力ではなく友達だな」


テリーはゲイトに感謝しつつ、2人目も見つかったので、次のターゲットを探しに行くことにした。


夜になり、噂好きな男爵たちが集まる飲み屋に行くことにした。


「やぁ、皆さんおそろいでよかったです」


テリーが来たことで、飲み屋の雰囲気は一気に興ざめしている。自分たちより上の階級が来たのだから無理もないだろう。


「こんな場所にテリー殿のような貴族様がどうされたのですか?お似合いになりませんよ」

「ハハハ、そんなこと言うなよ。今夜は君たちにいい話があるのだよ」

「なんでしょうか?金になる話でしょうか」


1人のゲス男爵として有名なゼニスが気持ちの悪い笑みを浮かべた。


「金になるかはお前たち次第だが、美しい女性たちが経営しているらしいぞ」


これは事実である。リナはもちろん、他も綺麗どころを集めたはずだ。それだって俺がそろえたのだから間違いない。


「なに?美人だと?それは一度行くべきだな」


さすがは、娼婦通いのエロ男爵である。他の男爵たちもニヤリと笑っていた。


となんとか2日で人数を集めることができたテリーだった。


明日の期限ギリギリに王子には報告に行こうと思い、テリーはゆっくりと自宅で過ごし、島へ行くための荷造りの準備をすることにした。


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