レストランの内装

 次の日、皆で朝食を食べ、レストランのリノベーションを行うことにした。


設備は整っているから、内装をいじるだけだった。さすがは、主婦やら伯爵令嬢だったり、流行りの知っている若い子である。


慣れた様子で、テーブルクロス、カーテン、インテリグッズを飾り付け、センスのいい感じに仕上げていく。


もちろん、このクロスなどはハゲに用意させた。空き家になっている家から取ってきたらしい。みるみるうちに、華麗なレストランへと変身した。


これで、ハード面は完璧である。あとは、中身を充実させないと。彼女たちに化粧の仕方を教えていく。化粧はできるけど、どうしてもみんなナチュラルメイクになってしまう。


なので、おしろいはアツノリで、肌の色が見えないくらい真っ白に、アイメイクは目の周りをガッツリ囲む。マスカラなんか何重も塗り重ねると説明する。


それにしても、この世界に化粧品なんかよくあったわねと1人リナリアは感心していたのだった。


 みんな器用に化けていた。もはや誰かわからない。あとは、髪の毛である。みんな長い髪なので、盛り髪が作れる。いくら器用でも、キャバクラの盛り髪は難しかったようだ。


リナリアが出勤前にヘアセットをすることに決めた。初めは無理でもきっと練習すれば、自分でできるようになるだろう。


みんなにお店の概要と内容を説明して、聞いてみることにした。


「……料理提供が主なんだけどね。要望があればお酌や席についてお話してあげてほしいんだけど、大丈夫かな?」


ルーミーが言った


「あんた、喧嘩売ってるの? ここに連れてこられたのはあんたの駒になれってこと。いちいち確認すんなよ!」


「あーそうだったわね。なら一つだけ忠告ね。お客様にはそんな下品な口調で喋らないでね」


「は? わかってるよ! そんなこと」


「なら、いいけど。みんなには魔道具を一人ずつ耳につけてもらう。へましたときなんかに私が電流を流したり、危険な場合は、魔道具を利用して、悪い奴を拘束しちゃうからね」


どや顔で言うリナリア。怖がりながらもミーシャが聞いた。


「魔道具ってなに?」


「あー魔法を封じ込めているお守りみたいなものよ。あなたたちを基本は守るためにつけてもらおうかと思って。まだ道具がないから作ってないんだけどね」


「嘘つけ、今ミスったら電流流すって言っただろうか。もう忘れたのかよ」


「あぁ、本当にうるさいお猿さんだこと。その下品な話し方もどうにかならないかしら?」


「あんたにだけは言われたくない」


ルーミーがリナリアに言ったが、全くリナリアには答えていなかった。


「で、他に質問は?」


「その魔道具を身に着けて、危険なことは絶対ない?」


不安げに聞くジェシー。


「お触りや行儀の悪い奴は、卒倒させるレベルの電流を流すつもりだから安心して。もちろん、ソイツだけよ。あなたたちには害がないと思うわよ。ミスや問題行動を起こさなければね」


「なら、私頑張ってみる。なんか楽しそうだし」


ジェシーは少し安心したのか、肩を撫でおろしていたが、ルーミーはまだ文句を言っていた。


「絶対嘘だよ。あの性格からして苛立たったら、すぐに電流を流すつもりだろう。口先ばっかいいやがって」


「ルーミー? 何か言った? 言いたいことあるならいつでも喧嘩買うわよ」


リナリアの凄みのある威圧っぷりにルーミーはそれ以上黙ることにした。


 すると、どこからかか細い声が聞こえてきた。


「……チェリは、新しい土地で、一歩を踏み出したい」


「え? あんた話せたのかよ」


ルーミーが驚いて尋ねたが、リナリア自身も驚いていた。


チェリは話せるのに話したくなかっただけだったのだとわかってはいたが、こんなにも早く話せるようになるとは思ってもいなかった。


やはり、場所が変わると気分も変わるのだろう。リナリアは少しその変化に喜んでいた。


 他の令嬢たちも、誰も嫌だというと反対する女性はいなかった。


「なら、働いてもらうね。名前はどうする?本当の名前じゃなくていいよ。せっかくみんな元々美人だったけど、さらに美女に生まれ変わったんだから」


「チェリはチエリにする。あんまり名前変わると反応できないと思うから」


「ならミーシャはミシヤに短くするわ」


ジェシーとルーミーは名前を反対にしようと言った。


サラは、バレても私は恥ずかしいことないからそのままの名前で行くと言った。


リナリアもあんまり頭良くないし、これ以上新しい名前になったらわからないからリナリアを略してリナにすることにした。


きっと、こちらのリナの名前でいる方が自分らしくいられるし、反応がいいと思う。姫様という鎧を脱いだ瞬間だった。


 各自の名前が決まったところで、ミーシャが肝心なことを質問した。


「ねぇ、リナ様? 誰が料理を作るの? たぶん私たちみんなメイドや執事が準備してたから何もできないわよ」


「そうよね。ぬくぬくと育った令嬢に水仕事なんかできないわよね。そんなことわかっているわよ。一応島にいた人に頼んだから問題ないと思うわ」


「あんたの場合は、頼むってか脅すだろ?」


「まぁ、そうとも言うわね」


時間を見てみると、昼ご飯の時間になっていた。ハゲを呼ぶことにした。持っていた笛を鳴らす。


ピィーピィー


リナは、時計の秒数を図りだす。1.2、3、4……15……28」


「はぁ、はぁ、はい、リナ様何でしょうか?」


ダッシュで走って来るハゲだった。


「ねぇ、ボン他の4人呼んできてくれない?ちなみに今日はギリギリだったわよ。次は20秒以内に来なさいよ」


「え?はい?そんな今日はめっちゃ走りましたよ? てか俺走るの早くなった気がするし」


「いや、もうそんな説明とかいいから早く呼んできて。あと昼食作ってもらうつもりだから食材も準備させてね」


「はいっ……鬼だな」


「なんか言ったかしら?」


「いえ……行ってきます」


ボンは汗をタラタラ流しながら、再び走り、4人を呼びに行った。

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