自己紹介と部屋割り
リナリアは、来ていた女性たちをハゲの道案内にて大きな屋敷へと案内した。
この島の土地勘が全然わからず、覚えることができない。同じような緑や花ばかりだし、目立つ印のようなものもない。覚えたのは、ここの人々の扱いだけだった。
案内後、ハゲは持ち場に戻るように言うと、逃げるように帰っていった。
「改めて、ご挨拶ね。私はリナリアね。ここではリナ様って呼んでもらってるからよろしく」
すると、一番年上っぽい女性の一人が言った。
「私たちは、なぜここに集められたのでしょうか?お手伝いと聞かされていますが……」
「あぁ、そうねぇ。詳しいことは後でゆっくり話すから、先に自己紹介してくれる?」
リナリアは既に苛立っていた。
(あのキリンさん履歴書みたいな書類1つ持ってこなかったのかしら。使えないわねー!まぁいいわ)
右の女性を指さし、「右側の人からお願い」と言った。
おどおどして、金髪のお団子ヘアのかわいい雰囲気の女性が話した。
「あっ、あっ、初めまして。ジェシーです。18歳です」
「ジェシーね。ここに来る人は何かしら訳ありだと思うんだけど、理由も教えてくれる?」
「えぇ。婚約したトーマスが違う女性と駆け落ちしてしまっただけなのですけど……」
「訳ありではないけど、捨てられた女としては令嬢として価値はもうなくなってしまったわね」
冷たくきついことを平気で言うリナリア。泣きそうになるジェシー。
「ちょっと、さっきからあんた言い方ってもんがあるだろうに」
「あなたは、三番目だからもう少し黙っててねー。次」
リナリアは、ヤジは基本無視するタイプだった。
「えっと、サラ、24歳です。元カレが行方不明になり、忘れられないまま違う人と結婚しましたが、やはり元カレが忘れられずに元カレと似ている人と不倫しました……そして離婚されました」
「はいはい、あなた見た目は良妻賢母そのものなのに、意外だわねぇ!」
サラの見た目は、赤髪の三つ編みおさげだった。リナリアは過去の記憶からおさげイコール真面目のイメージがあったのかもしれない。
サラもさすがに何も言えないのか下を向いている。
「はい、あなたの番よ。うるさいおさるさん」
「キィー!!なんだと?」
「ほらほら、そうやってキーキーうるさいところがお猿にそっくりよ。落ち着いてくれる?」
周囲の女性がその女性を必死でなだめる。
「ほら、妃殿下なんだから逆らったら、殺されちゃわよ」
「あっ、そうだった。この女あぁ見えても、未来の妃なんだよな?」
「失礼ね! だから、お猿さんは早く自己紹介をどうぞ」
「……ルーミー、26。殿下に婚約破棄された」
「あぁーだから、私がうらやましくてギャーギャー騒いでいたのね。なら仕方ないわ。ご愁傷様」
ルーミーはまた騒ぐのかと思ったが、黙り込んだ。本当に王子のことが好きだったのかもしれない。ルーミーは、金髪ショートカットでボーイッシュな感じだった。
だから、きっと清廉潔白な女性が好きなランドには無理だったのだろう。それにしても、無理なら初めから断ればいいのに。ランドってなんか優柔不断なところがありそうだもんね。
リナリアの婚約話は、何かしらのいつものような陛下からの脅しがあるせいなのか、見合い話からいつのまにか婚約していることになっているという摩訶不思議な現象が起こるのよね。
だから、男性陣も破棄するときは、いつも慰謝料をピルカに取られていたし……ピルカの陛下は恐ろしいって、私の父親なんだけどね……もしかして、傀儡術でも使っていたのかもしれないわね。きっとそうよ。リナリアは自分の長年の謎が解けて少し喜んでいた。
「はいはい、次の暗い人どうぞー」
「……」
「聞こえてる?」
頷く暗い女性。
隣りのルーミーが言った。
「この人、話せないんだ。宰相様が言ってた」
「宰相って誰よ」
「あんたが、キリンって言ってた人だよ」
「あぁ、あの人宰相だったの?見えないわー」
「だから、アタイがかわりに説明する。チェリ、28歳。5年前に夫を亡くした。そのショックで話せなくなったらしい」
「あーそう。わかったわ。でも、話せるのよね? 話してもらわないと困るから。それにここに来たなら、きっといいことあるわよ」
きれいな青色の髪をしていて、人魚のような綺麗な女性だった。黙っていても様になる。
「……」
「はい、ラストの年増のあなた」
「ミーシャ、30歳です。両親が横領の罪で捕まった罪人です」
「あーそういうタイプね。あなた自身は関係ないのに蔑まれちゃうやつね。了解」
ミーシャは、黒髪の日本人の昭和顔だった。どっかのお人形でありそうなおかっぱ頭の顔だった。
以上5名がやって来たのだった。
ひと通りの自己紹介を済ませ、各自の部屋に案内する。
3階建ての建物て1階には大きなリビングルーム、浴室、キッチン、ウェルカムルームという来客対応で使う部屋がある。2階には、6畳の洋室が3部屋、トイレ、3階には、6畳の洋室が3部屋、トイレがある。
リナリアにはシェアハウスみたいで楽しそうだなと思っていた。ここも、あの1カ月の間に、ハゲに色々準備させていたのだ。
ジャンケンで、部屋割りしようとみんなに話したら、ジャンケンを知らなかった。
リナリアは、グーは石ね。チョキはハサミね、パーは紙だよとジェスチャーを交えながら伝える。ハサミで石は切れないからグーが勝ちねと一つずつ説明する。同じなら、アイコと言って、もう1回ね。グーチョキパーもアイコだけど説明が難しいからやめた。ジャンケンの説明は難しいと思いながら、なんとか理解してもらえたようだ。
「ジャンケンポイ」
みんなグーを出す。
「すごい。偶然ね。あいこで……しょっ」
チェリがチョキで勝ったので、無言で3階へと向かう。リナリアは、作っていたネームプレートに名前を記載して、部屋の前に飾るようにと伝えて渡していく。
次に、ルーミーとジェシーが勝った。2人は婚約破棄仲間だからか気が合ったようで、2階を選んだようだ。
残りは、サラとミーシャとリナリア。
次に勝ったのは、ミーシャだ。ミーシャは、静かな方がいいと言い、3階にした。残りはサラとリナリアだった。
サラは、リナリアに聞いた。
「あなたが3階がいいなら、ジャンケンになるけど、どうする?」
「そうね。私も一応婚約破棄組なので、2階にするわ」
「なら決まりね」
こうして、部屋割りが終わった。
夜ご飯の時には、キッチンでまた集まり、洗濯、食事、掃除当番について決めた。6人いるので、2人ずつペアになってもらい、1週間交代で変わることに決めた。
ルーミーとジェシーはすぐペアになる。年上コンビもペアになっていた。残ったのは、リナリアとサラだった。こういうグループ決めの時に、さっとグループ作れる女子、昔からいるよね。ちょっと、懐かしさを感じつつペアも決まり当番も決まった。
明日からは、リナリアの夢だったレストランの準備をすることになっている。
それもキャバクラだった経験を生かして、女性は本人だとわからないくらい化粧で化けさせ、ヘアスタイルも美しくアップスタイルで、接客する。お触りはなしだが、お酌はする。気に入った女性がいた場合は料金上乗せ、15分席に着かすことも可能。キャバクラは高くて多少のお触りは仕方ないが、うちはあくまでレストランが売り。食べに来てくれたお客様に喜んでいただくパフォーマンスとしてのお酌を用意しているだけで強要するつもりもないし、そのことはメニューにかくこともしない。いわゆる常連さんや知る人ぞ知る裏メニューにするつもりである。
こんなレストランやってみたかったんだよね。一応部屋割りする前に説明したときに、みんなは何でもしてくれるって言ってたからよかった。なんか反対したら殺されるとかの声は聞かなかったことにしてあげたけどね。
料理人は、あの時怯えていた4人にしてもらおう。ハゲから一応は説明させていたので、許可はもらっているようだ。
この島は、レストランだけではもったいないくらい綺麗な景色に美味しいものもあるから観光名所にしようと意気込むリナリアだった。
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