5人の令嬢が到着
リナリアは、余裕で島にたどり着いた。自分で船を漕げるから助かったわね。普通の令嬢は無理なんだろうけど。
島に着くと、綺麗な緑豊かな自然が目の前に広がっている。あー空気も美味しいし、外国の島みたいだなと思うリナリア。
なんか楽しくなってきた。何も食料も水もない状態でスタートするなんて無人島で暮らすバラエティ番組の芸人になった気がする。とりあえず、散策してみようと歩き出した。
誰かいないかなーとスキップしながら、島を歩いていた。なんやら男性の人が怯えながらこちらを見ている。何か獣でもいるのかと後ろを振り返ったが、何もいなかった。
(びっくりするじゃない。ライオンとか肉食獣でもいたのかと思ったわよ)
リナリアはその男性たちに話しかけることにした。
「ハロー、ハーワーユー」
リナリアは自分の言葉に驚いた。外国に来た気分だったから、つい姫モードじゃなく、昔の海外旅行した時の日本人になってしまい、カタコト英語で問いかけてしまった。
男性は、鋭い目で震えながらリナリアに尋ねた。
「君は、敵なのか? 俺たちを殺しにきたのか?」
「え?殺すなんて物騒なこと言わないでよ。私ランド王子から婚約破棄されそうになったから逃げてきたのよ」
「あぁ?! ランド王子だと……」
男性は、なぜかその言葉だけ述べ、逃げてしまった。
せっかく見つけた第一村人ならぬ、第一島人を見失うわけにはいかない。
逃げる男性をダッシュで追いかけた。中学時代元陸上部中距離走にて、全国5位なめるなよ。
リナリアはダッシュで追いかけようとしたが、ロングのスカートが邪魔だったので、スカートの裾を引きちぎることにした。
ビリビリ
(よし。これで短くなったから走りやすいわね)
リナリアが走っていくと、すぐにその男性の近くまでにたどり着いた。
男性は、他の島民だろうか?4人の人たちと何やら話し込んでいる。島民たちは、こそこそ話をするように小さな声で話しているが、時たまキャーとかわぁーとか大きな声を出している。
なんの話をしているのだろうか。リナリアはこっそり忍び足で後ろまで話を聞きに行った。夢中に話をしているからだろうか?全くリナリアの存在に気づくことなく話を続けている。
「さっき王子の婚約者というやつに出会った。どうする?殺すか?」
「いや、婚約者ならまずいだろ?」
「でも、殺さなきゃ俺たちが殺されるぞ!」
「なら、殺して海に流してしまえばバレないんじゃないか?」
「あーその手があった。よし、各自、武器を取りに行け」
と島民たちが散らばろうとした時、後ろに仁王立ちで立つリナリアに気づくと、
「わー」
さっきの男性は悲鳴をあげ、尻もちをついた。他の島民たちは、その男性の後ろに隠れている。
「あのーさっきから殺すとか言ってますけど、私そんなに弱くないよ?」
ニヤリと悪代官様のように悪そうに笑ってみた。
「キャー殺される!!」
女性たちは逃げ回る。リナリアは手始めにその女性を捕まえてみた。男性たちは、息を飲みながら様子を伺っている。
だから、リナリアはもうそれはそれは悪役のセリフのように高々に言ってやったのだ。
「この女性の命が惜しければ、私の命令に従いなさい」
「やっぱり……王子の差し金か。俺たちを殺すんだな?」
「だから、違うって言ってんでしょ?ちゃんと話聞けよ。ハゲ」
あーもうこうなってしまったリナリアは止まらない。女性を離し、そのハゲに殴り掛かった。こういう場合は、力がモノを言うのだ。高校時代に付き合っていた総長がいつも言っていた。
リナリアは、思い切り殴りつける。もちろん死なない程度に加減はしたよ。その塩梅を覚えろって総長が言ってたし。リナリアの絶対的な強さを見た、他の島民たちは逃げていった。
「悪かった……言うことを聞くから勘弁してくれ」
「なら、私の指示に従わうわね?」
「あー」
よし、これでリナリアのここでの生活は無事保証された。さて、何をしようかな?昔の夢だったレストランの経営にでもチャレンジしようかしら。
せっかく、誰も知らないところにきたのだから、姫様ではない自分に生まれ変われたようなもんなんだし、自由を楽しまないとね。
1ケ月は、この島でやりたいことリストを作成したり、あのハゲには食料を調達させ、落ちている木や布などでテントを建て、アウトドア気分で楽しんでいた。
けれど、ある時に気づいてしまった。
(あっ、でも私が逃げたことを父様に知られてしまっては、私は殺されてしまうわね)
リナリアは、ランドにだけは連絡しなければと思い、魔法で通信することにしたのだった。
※※※
ランドは突然の耳から声が聞こえ始めるので、驚いて椅子から転び落ちてしまう。
「ハロー、ランド?元気だった?」
「誰だ? どこから喋っている?」
ランドは周囲を見渡したが、誰もいなかった。
「ピルカ王国のリナリアだぴょん」
「お前ってそんなキャラだったのか? 王妃らしくねぇぞ!!」
「こっちが本性だよ。でさー今後のこと相談しようと思って」
ランドは突然の申し出に驚きながらも、これはいい兆候だと話を切り出してみた。
「おうーそうだな。契約結婚というのはどうだ?」
「契約結婚? それって結婚したことには変わりじゃないんじゃないの?」
リナリアの指摘が正しくて、ランドは思わず舌打ちをしてしまう。
(チッ、こいつ案外バカじゃなかったのかよ)
「なら仮契約結婚ならどうだ? 噂で聞けばお前も今回婚約破棄されるとまずいんじゃなかったか?」
「……さすがは情報通ね。そうよ。わかったわ。ならその仮契約結婚したことにしましょう。でも、言い出しっぺはランドだよね? 本来結婚していなくちゃならないのに、あなたの都合で契約結婚にするわけなんだから……普通慰謝料とかあるんじゃないの?」
コイツは乱暴なだけで意外にも頭は切れ者だったらしい。放置で問題ないと思ったがそうはいかないらしい。
「……そうだな。あー何が欲しい?」
「この島とこちらで必要な従業員の女性5名、あとは後日また言うよ」
「島は元からお前にやるつもりだったから、問題ないが女性だと?」
「うん。私みたいな不幸な女性とか訳あり女性がいいな」
「……不幸やら訳ありの定義はなんだ?」
「ん~婚約破棄されたとか、不倫とか浮気されちゃった女性とかがいい。女性を幸せにするための島にするから」
ランドは、何を言っているのか理解に苦しんだが、とりあえず用意すると約束すると、先ほどまで聞こえていた耳からの声が聞こえなくなっていた。
「これが噂の魔法というやつの力なのか?」
もしや、ランドは宝のもち腐れを手放してしまったのではないだろうかと今さらながら少し後悔した。
本当の妃にしたら、この国を魔法の力でわが物にして金を作りだしたり、戦力を増強させたり、やりたい放題できたのではないか。
しかし、ランドには好きな女性がいるのだ。だから、本当に結婚するわけにはいかなかったのである。だからこそ、契約結婚なのだ。
その女性がなかなか見つからないのが、苛立つか今は仕方がない。気持ちを切り替え、宰相であるラミレスに女性の用意を命じた。
3日後に準備できたが、こちらからの連絡手段がなかった。ラミレスに船でこの5名を無人島に連れて行くことを命じた。女性たちは、皆顔を隠しながら船へと乗り込んでいく。
ラミレスは船に乗りながら考え込んでいた。
この女性たちを本当に救うことなどできるのだろうか。じゃじゃ馬姫と評判のリナリア姫は今まで見た女性と全く違う。危険な香りと美しい容姿、何よりも暴力的と噂されている部分がドストライクだった。
少し味見してみてもいいだろうか?今回の役割という意味で、夜の指南をしに来たでも言えば問題ないだろうか?
気持ち悪く笑うラミレスに、5人はドン引きしていた。
島に着くと、リナリア姫が男性の尻を叩いていた。
「ハゲ、働けよ!あんた口ばっかで他の人コキ使ってんじゃねぇーよ!」
「はぁ。リナ様すみません。勘弁してください」
「お前、何度言えばわかるんだよ?いてまうぞ?おらぁ!」
女性たちは、そんな乱暴な言葉使いと暴力的な様子に恐怖で固まっていた。
リナリアは、落ち着きを取り戻してひょいと横を見ると、そこには女性5名と1人のキリンのように背が高いひょろい眼鏡の男性を見つけた。
(あっ、あのキリンのっぽさんって王子のお付きだっけ?やばい。見られたかしら)
急におとなしく、ドレスの裾を持ち上げ令嬢風の挨拶する。
「この島へようこそ、私リナリアですわ。今後ともよろしくお願いしますわ」
1人の女性が馬鹿笑いを始めた。
「ギャハハ。あんたっておもろい。全部見てたって」
「黙りなさい。こちらは殿下の奥様でいらっしゃいますよ」
キリンはすぐにその女性を叱咤した。その女性は慌てたように口を抑えながらもまだ話している。
「えぇ!! これが……?」
リナリアはあまりの言われ方に腹が立ったので、関係のないハゲにケリを入れることにした。
「いたっ。俺かんけーねぇーし」
ハゲを蹴飛ばして落ち着きを取り戻したリナリアはその女性たちに告げる。
「まぁ、いいですわ。あなたたちが訳ありの女性ですね? こちらにお願いします」
ラミレスもついていこうとしたが、リナリアに止められてしまう。
「あなたは、帰ってね?きりんさん」
きりんさんとは俺のことだろうかと思うラミレスだったが、さっきの暴言と暴力でもうリナリアラブになってしまっていた。
ドМ変態のラミレスはリナリアに言われたとおりにトラクスへとそのままUターンして帰ることにした。
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