第41話 スリヴァルディの試験戦闘運用(対ゴブリン)
そして、一方、スリヴァルディ二基がミルメコレオと戦っている間。
最後のスリヴァルディは、ミルメコレオの後ろについていたゴブリンの軍勢と戦う事になった。
ゴブリンの数はおよそ10匹ほど。
単騎でゴブリン10匹を相手にするなど危険極まりないが、その程度あのアーデルハイトの地獄の訓練に比べればマシな方である。
スリヴァルディを起動させて走りながらゴブリンの群れへと突っ込んでいく。
そして、そのまま一匹のゴブリンをまるでサッカーのように蹴りを叩き込む。
スリヴァルディの蹴りを叩き込まれたまともに胴体に食らったゴブリンは、まるでボールのように緑色の体液をまき散らしながら吹き飛ばされ、木々に叩きつけられ、全身の骨を砕いて死亡する。
そして、続いてマニピュレーターを握ると、そのままその鋼鉄の拳を他のゴブリンへと叩き付ける。力任せに振るわれたその一撃は、ゴブリンの頭部を容易く粉砕し、消し飛ばす。頭部を失ったゴブリンは、首から多量の緑色の体液を噴出させて、体を震わせながら地面に倒れこむ。
それを見て、他のゴブリンたちも武器を構えて戦闘態勢に入る。
スリヴァルディは土木工事や抑制柱運搬用として開発されたため、戦闘用として設計されていない。つまり、操縦者を守る装甲も武装も現状では存在していないのである。
奇妙な鎧らしい物は身に着けてはいるが、肉体自体を覆っている物ではないと気付いたゴブリンたちは槍を手にして、自分たちより上に存在するスリヴァルディの搭乗者を串刺しにしようと、槍を突き出してくる。
「っとぉ!!」
スリヴァルディの搭乗者は突き出されてくる槍を回避したり、己の腕でガードしたりして、ゴブリンの攻撃を凌いでいる。
やはり、純粋な戦闘用ではなく、全く装甲が存在しないのは、直接攻撃を受ける搭乗者にとっては危険を覚えてしまう。
アーデルハイトにこの部分は進言する必要はあるだろうと考えながらも、スリヴァルディは再度前蹴りをゴブリンへと叩き込んでいく。
強烈な蹴りを叩き込まれたゴブリンは、骨のヘシ折れる嫌な音と共に血反吐を吐きながら吹き飛ばされ、力なく地面に倒れ伏す。
長引かせては、こちらも攻撃を食らいかねないと判断したスリヴァルディは、近くに転がっていた地面に倒れていた巨木を拾い上げ、それを武器代わりにする。
巨木を両手で握り、横に勢いよく振るうだけで、ゴブリンたちはまともに一撃を食らい、叩き潰されていく。
流石に、これはたまらないと残ったゴブリンたちは一斉に逃げていこうとするが、スリヴァルディはそのゴブリンたちに対して手にしていた巨木を投げつけてこちらに再度向かってこないようにする。
「よし、よくやってくれました。それでは撤収作業に移りますわ。」
このように、手持ちに専用の武器がなくとも近くのある物で簡易的な武器にする事ができるというのが、ヒト型の大きな利点である。
これだけを実戦で証明できただけで、アーデルハイトにとっては大きな進歩である。
他にも、やはり防御のための装甲をつけるのは必須である、とアーデルハイトの戦士としての経験があの戦いを見ていて感じ取ったのである。
装甲がなければ、いかに力があろうと、槍の一刺しで重症を負ってしまう可能性がある。だが、防御できる装甲があれば、敵陣の内部で大暴れする事すら可能となる。
まずは、街にまで帰って早急に戦闘用のスリヴァルディの試作案を考えなくてはならないと、アーデルハイトは考えていた。
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