第21話 (11/26修正)貴族の令嬢たちに本を売り込め!
ドワーフたちに活版印刷機の作成を頼んだエルネスティーネは、自室で腕を組んでうんうんと考え込んでいた。
「さて、活版印刷機も紙もできた……。となれば、後は本を作るだけですが……。
問題は私にとっての最大の敵、識字率なんですよねぇ……。」
識字率。これは今のエルネスティーネにとっての最大の敵と言っても過言ではない。
いかに本を作ったと言っても、その本を買って読んでもらう人間がいなくては本はただの置物になってしまう。
読めない本をわざわざ買うほどの物好きはそうそういない。
だが、ここは識字率ほぼ100%の日本と異なり、市民や農民たちには文盲の人々も非常に多い。これらの人に文字を教えるためには、教育が必要になるのだが、領地、いや、国の人々に幅広く教育を施すのはいかに辺境伯であろうと手が余る。
それこそ、国家事業になってしまうため、国王や王妃に働きかけを願うしかない。
「うーん。とりあえず市民たちに本を普及させるのは簡単にいきそうにありませんので一旦置いておきましょう。と、なれば、本が読める人々の所に普及を行うしかないですね。となれば……。やはり貴族の令嬢たちに売り込みを行うのが一番でしょうか……。」
貴族の令嬢たちは、常に物語に飢えている。
スマホやゲームなどないこの時代、貴族の令嬢や奥方たちは常に暇を持て余していた。しかも文字を読む事も出来て、金払いもいい。
エルネスティーネにとって本を売り込む格好のメインターゲットである。
ターゲットを決めた後は、マーケティングを行わなくてはならない。
つまりは、貴族の令嬢や奥方にウケる本の内容を探る事である。
「とは言っても、私に令嬢の友人とかいませんし……。大姉様に聞いてみますか。」
ち、違うし。別にぼっちとかじゃねーし。
そう心の中で誰に言い聞かせる訳でもなく言い訳しながらも、エルネスティーネは、紅茶を入れてアーデルハイトの執務室へと向かった。
「……。貴族の令嬢が好む物語?」
「そうですね……。やはりお約束としては恋愛、ロマンス物ですわね。
騎士との不倫物も根強い人気もあるようですが……。
個人的に言わせれば、不倫物はどうか、と思いますわ。」
まあ、私もそんなに詳しくは知らないのだけれど、とアーデルハイトは口に出す。
とはいうものの、やはり古今東西女性は恋愛物には弱いらしい。
特に令嬢たちは政略結婚で結ばれていくのが普通であるため、素敵な自由恋愛に惹かれ、奥方たちは素敵な騎士たちとのロマンス物に惹かれる傾向がある。
やはり、こちらも商売でやっている以上、売れなければ意味がない。その客層には、そこにあった作品を提供する必要がある。
だが、あまり非道徳的な作品を堂々と売るのには、問題がある。
この世界には表現の自由などはない。国王たちに目をつけられれば一発でアウトである。マルキ・ド・サドのような非道徳的な作品を公表して、精神病院に一生入れられるなどという事は御免である。(そこまで過激な作品を作る気はないが)
「なるほど。ありがとうございます。参考にさせていただきます。」
〇11月26日、書き直しを行いました。
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