第30話    通せんぼ


ある日の放課後、

冬美が帰る準備をしていたら教室がざわつき始めたので、『何かな?』と辺りを見渡した。


教室の出入り口に、上遠野さんとグループの一人が立ち、通れなくなっていたのだ。


目的は私だろうが、

『他の人も巻き込みはじめたのか』

と怒りを覚えた。


上遠野さんは冬美が見ていることに気づき、左手で戸を押さえ「ここから出たかったらお願いしな」と言い放った。


辺りは静まり返り、冬美はどうするのかと固唾を飲んでみていた。


葵ちゃんと椿ちゃんは、冬美の後ろにくっついている。葵ちゃんは半泣きだ。


冬美は一呼吸おいて、

スタスタと歩き上遠野さんの前に立った。


一瞬たじろいだ上遠野さんを横目にひょいっと首を傾け、すぅ~っと抜けた。


左手を上げすぎていた為、引き戸との間がかなり開いていたのだ。


『足でも押さえられていたら危なかったので助かったな』と冬美は思った。


葵ちゃんと椿ちゃんも、冬美の後ろを急いでついてきた。


廊下に出て振り向くと、

上遠野さんは、ぽか~ん•••としていたが我に返って


「な、なに~ムカつく~」と騒いでいた。


最悪、殴り合いも覚悟していたので少しホッとした冬美であった。

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