第21話 血だらけの体育祭

冬美は気合が入っていた。

一か月前から山の中を走り込み、スタートダッシュの練習などを毎日…。

なぜなら、

中学生最後の体育祭があるからだ。


母春子も、

さゆりちゃんやももちゃんのお母さんたちもお弁当を持って応援に来るので、勉強があまり得意ではない冬美は、何とかいいところを見せたかったのだ。


準備万端で挑んだ体育祭。

もともと得意の100メートル走。


パン!

スタートのピストルの音と共に先頭に立った冬美は、一気に引き離そうとした…が、何かが足に引っかかった。


ズザザッー!!!冬美の体が地面に転がったと同時に、ももちゃんのお母さんらしい悲鳴が聞こえた。


すぐに起き上がって走ろうとした…が、

思い切り膝を擦りむいた為か?走ることができない。


周りから同情のような拍手や、

ガンバレーの声が上がった。

冬美は『やめてー』と心の中で叫びながら足をひきずり、なんとかゴールまでたどりついた。

冬美の手当の為、保健の先生が待っていた。


支えられながら歩いていたら、

一緒に走った別のクラスの子が駆け寄ってきた。

小声で

「柳沼さんの足ひっかけて転ばしたの菜花さんだよ」と言ってきた。


菜花さんは頭もよくかわいい、その上スポーツ万能だ。


『なんでも持ってるじゃん、私は体育祭にかけていたんだ。どうしてこんなひどいことをするんだろう・・・』


冬美は感情が昂っていた。

ケガは結構ひどかった。

両手両足の皮がめくれて血が流れていた。


リレーも含めた他の競技は全てパーになってしまった。

砂も入っていたので消毒液がしみて涙がでた。


保健室からでると彼女が待っていた。

「冬美ちゃんごめんね」


謝ってくれたのだが、無視してしまった。


許すことはできなかった。

心の狭い人間だ・・・自分が嫌いになった冬美だった…。


 

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