第5話 夢は現実?

透明な水の中、

冬美はぷかぷかと浮いている。


周りを見ても何もなく、狭い壁に囲まれている…。


またある時は、広くて水草の生えている薄暗い水の中で、浮いている。

周りには、たくさんの鯉が泳いでいる。


小さい頃から、幾度となく この不思議な夢を見ていた。


もしかして私って人魚姫の生まれ変わりでは?などと、

幼稚園で読んだ童話を思い出して、

ありもしない妄想を繰り広げている冬美だった。


6才の頃だったろうか、

近所の神社に咲いているシダレザクラが満開となり(けっこう有名)

散歩がてら見に行こうと、

父 秋彦、母 春子と三人で出掛けた。


神社の敷地内にあるお城のような作りになっている整骨院にも、

たくさん見物人が訪れていた。


父秋彦は、「他にも有名なものがあるから見に行こう」と言いながら、人の流れに乗ってシダレザクラ、整骨院へと歩いていった。


目の前に敷き詰められた

立派な石畳を見た瞬間、

冬美は

「あれ、ここどこかで見た覚えがあるような…」

などと考え歩いていたら池が現れた!


大きな池の中には

大きさや配色のさまざまな鯉が泳いでいた。

餌をあげている人もいた。


冬美は父に聞いてみた。

「もしかして 私、ここに来たことある?」

父は驚いた表情で冬美を見てこう言った。

「覚えているのか?

まだ小さかったので記憶にないと思っていたが…そうか~

前に鯉を見せたくて連れて来たとき、

突然、冬美いなくっなっちゃって…

慌てて捜したら、

なんと池の中で溺れてて、

あの時はびっくりしたなぁ~」


母も「あ~そんな事あったねぇ?~」

なんて話し始めた。

冬美は、何故小さい私から目を離したのか?

問い詰めようとした時、

突然母から爆弾発言が…。


「そうそう、

溺れたといえば、冬美が歩き始めた頃、

お風呂で溺れちゃった時があったわ。

私が、

洗濯物を干しにベランダへ行った

そのほんのちょっと目を離した隙に…

冬美の長い髪の毛が

水面にワカメのようにゆらゆらしていて

俯せに浮いていたの、あの時はびっくりしたわ~まさか…?と思って怖かったね~」


その話を聞かされていなかった父は、

「なんでそんな大事な事を言わなかった」

のかと、怒り始めてしまった。


ふたりを見つめながら冬美は

『あれは夢じゃなかった実際におきた、私の遠い記憶だったのだ』と、思いを馳せた。


『私っていくつ命があってもたりないわ

これからは

自分の身は自分でまもらねば』、と

固く誓った冬美だったが

自ら生命の危機を招いてしまうとは…。




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