第3話 にらみ誕生
冬美は、「にらみ」がきく。
別に歌舞伎をやっている訳でもなく、
生まれつき…いや、
生まれた瞬間から睨んでいた・・・
春子を…。
春子は梨が好き。
瑞々しく美味しいが栄養はあまりない。
高齢出産の為か、冬美を授かった時は
つわりがひどかった。
兎に角ひどかった。
梨以外の物は、
まったく受け付けなかった。
安定期に入っても食欲が湧かなかった。
お腹の子の為にも
「栄養のあるものを食べなさい」と
周囲の人に言われてもダメだった。
当然、
栄養はまったく冬美の身体に行き届く訳もなく、
1800グラム、骨と皮だけのガリガリな
超未熟児赤ん坊が生まれてしまった。
その上、
臍の緒が首にぐるぐる巻きついて
酸欠状態、産声を上げない全身紫色の
小さな小さな身体を取り上げた先生はこう言った。
「一刻を争う危険な状態です」と。
その時、赤ん坊は大きな眼を開けて
ギョロギョロと動かし、春子を見て
ジロリとにらみつけた。泣きもせずに…。
冬美と「にらみ」の誕生である。
もはや「にらみ」状態の顔が普通なのである。
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