京崎直生の憂鬱

 ラーメン屋を出ると、直生はすでにお腹いっぱいだった。

 自分以外の三人はとても食欲旺盛で、ラーメン以外にも、チャーハンや餃子などサイドメニューもぺろりと平らげていた。しかし、直生はそれほど胃袋が大きくなかったので、目当てのだけ味噌ラーメンだけで十分だった。

 帰る方向が違う耀と陸とは早々に別れ、仁と一緒に駅に向かう。

 そして、彼とも電車を降りて別れると、一気に憂鬱な気持ちが襲ってきた。それもそうだ。また、あの窮屈な家に帰らなければならないのだから。

 でも、と直生はふと今日の出来事に思案を巡らせた。

 自分は今回浄化した夢主のマキのように、自分の気持ちを誰かにぶつけたことはあっただろうか。

 いや、恐らく一度もなかったはずだ。それはもちろん、母親に対してもだ。

 それなら、自分の考えを何も言わないでいる自分が、あの母親に腹を立てる権利は果たしてあるのだろうか…。

 その疑問を抱いたとき、直生は一つの答えに辿り着いた。

 やっぱり、自分の気持ちを素直に伝えてみよう。

 マキは、あれほど嫉妬していた友人であるホノカとも、結局仲直りしていた。それを見て、直生は正直うらやましいと思ったのだった。

 直生だって、本当は母親とうまくやることを望んでいるのだ。

(よし。やっぱり僕、医者にはなりたくないってこと、勇気を出して母さんに言ってみよう)

 直生はそう決心すると、一部壊れてしまっていた心が、またもとの場所に戻ってくるように一瞬感じられたのだった。

 


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