京崎直生の憂鬱
ラーメン屋を出ると、直生はすでにお腹いっぱいだった。
自分以外の三人はとても食欲旺盛で、ラーメン以外にも、チャーハンや餃子などサイドメニューもぺろりと平らげていた。しかし、直生はそれほど胃袋が大きくなかったので、目当てのだけ味噌ラーメンだけで十分だった。
帰る方向が違う耀と陸とは早々に別れ、仁と一緒に駅に向かう。
そして、彼とも電車を降りて別れると、一気に憂鬱な気持ちが襲ってきた。それもそうだ。また、あの窮屈な家に帰らなければならないのだから。
でも、と直生はふと今日の出来事に思案を巡らせた。
自分は今回浄化した夢主のマキのように、自分の気持ちを誰かにぶつけたことはあっただろうか。
いや、恐らく一度もなかったはずだ。それはもちろん、母親に対してもだ。
それなら、自分の考えを何も言わないでいる自分が、あの母親に腹を立てる権利は果たしてあるのだろうか…。
その疑問を抱いたとき、直生は一つの答えに辿り着いた。
やっぱり、自分の気持ちを素直に伝えてみよう。
マキは、あれほど嫉妬していた友人であるホノカとも、結局仲直りしていた。それを見て、直生は正直うらやましいと思ったのだった。
直生だって、本当は母親とうまくやることを望んでいるのだ。
(よし。やっぱり僕、医者にはなりたくないってこと、勇気を出して母さんに言ってみよう)
直生はそう決心すると、一部壊れてしまっていた心が、またもとの場所に戻ってくるように一瞬感じられたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます