ブロークンハートドラゴン(3)
「マキ先輩! 大丈夫ですか!」
「う~ん……。あれ、ここは…?」
耀が声をかけると、マキは辺りをきょろきょろした。どうやら自分が巨大ドラゴンになっていたことは記憶にないらしい。
「ちょっといろいろあって……今はドラゴンの上にいます」
「ええっ!」
マキはがばっと身を起こすと、眼下に広がる景色を見て「きゃあ!」と小さく悲鳴を上げた。
だが、すぐに安心したように、クッションに居直った。
夕日にかかっていた雲が晴れ、町が朱色に染まった。なんとも平穏な夕暮れの景色だ。
ドラゴンは直生の指示で、ゆっくりと飛行を続ける。
「あたし、やっぱりホノカに謝って、仲直りするよ」
ミキは落ち着いた声でぽつりとそう言った。
四人は驚いて彼女を振り返った。さっきまであんなに暴れていたというのに、どういう風の吹き回しだろう。
だが、耀はそういうことかと閃いた。
おそらく、彼女の負の感情は悪夢の核と一緒に浄化されたのだ。だから今、彼女はこれれほどすっきりした顔をしているのだろう。
「私ね。どうしても、先輩がホノカといるところを見ると嫉妬しちゃって、そんな自分が嫌いで、情けなくて、悔しくて、どうにもできなかったんだ。でも、今なら大丈夫な気がする。なんか、そういう嫌な気持ちが全部、なくなった感じがするの。ようやく自分の本心に気がついたよ。あんなひどいこと言っちゃったけど、やっぱりあたし、ホノカと友達でいたい!」
マキはそう力強く呟くと、耀たちに礼を言った。
「ありがとう。あなたたちが私を助けてくれたんだよね? おかげで目が覚めた。あたし、ホノカともう一度もとの関係に戻れるように、頑張ってみる!」
彼女の顔に、もう迷いはなかった。
決意に満ちた彼女の背筋はピンと伸び、とても美しかった。彼女はホノカよりも容姿が優れないことをコンプレックスに感じていたようだが、耀からすればマキも十分素敵に見えた。
「はい! マキ先輩なら、きっとうまくいきますよ!」
耀は彼女を勇気づけるように、笑顔でそう答えた。
「頑張ってください! 僕らも応援してますから!」
直生の意見に、仁も無言でコクコクと頷く。
「俺は別に、あんたが謝る必要はないと思うけどな。ま、好きにすればいいんじゃねぇの」
陸はぶっきらぼうにそう言うと、マキは少しくすりと笑った。そしてもう一度、
「ありがとう!」
と太陽みたいな笑顔を残し、耀たち以外の全ての景色とともに消えた。
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