透明少年

もしできることなら、透明になりたいと思っていたはずだった。

 でも、透明になっていくあの夢主の彼女を見たとき、陸は自分はあんな風にはなりたくないと思った。

 それで気がついた。

 本当は透明になんかなりたくなかったのだと。

 自分はミウと同じくらいの年齢の時、彼女と同じように、純粋に友達が欲しかったのだ。そしてそれは、今も変わらない。ただ、傷つくのが怖くてその自分の本心と向き合うのをやめていただけだ。

『私にもお兄さんたちみたいに仲良しな友達、できるかな?』

 彼女の投げかけた質問に対する耀の答えに、不覚にも心が動かされてしまった。

『大丈夫だよ』

 耀の声が頭の中でこだまする。

 自転車に乗り、周りは車の音や信号の音でうるさいはずなのに、不思議と彼の声が聞こえた気がした。

 彼なら、自分と友達になってくれるかもしれない。

 一つの希望が、孤独だった陸の心に芽生えた。

 どこの誰とも知れない夢主に、あそこまで必死で助けようと夢中になれる人間だ。なら、信じてみてもいいかもしれない。

 陸がひそかに立てた過去の誓いは、透明になって消えた。


 

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