第2章 入会

時間は、23時。


「明日は、早いからもう寝るから。」


「あ…はい…。」


夜の夫婦生活を義務的に済ませ、パジャマを着て、さっさと旦那は眠りに付く。


佐川陽毬…私もパジャマを着て、うっすら滲んだ汗を流したくて、もう一度シャワーを浴びるために、静かに寝室を出る。


階段を降りながら、まだ中途半端で疼く身体を抱き締め


「はぁ…私がエッチなのかな…。」


お見合い結婚して、一年が過ぎた。


29歳の私より、7歳年上の旦那。


まだまだ、身体的には衰えてない筈なのに、セックスが淡白だ。


中々、出会いが無い私を心配して、親戚の叔母さんが条件が良い人を探してきて、お見合いを勧められた。


誠実そうな人柄、安定した職業、高学歴…申し分ないと思い、少し年は離れていたけど結婚を決意した。


子どもがいなくて、専業主婦が出来る程、暮らしは安定している。


あれこれ煩く言わないし、自由にさせてくれている。


これ以上何か求めるのは、贅沢なのかもしれない…。


子どもが出来たら、ちょっとは変わってくるのかなとも、最近は思う。

シャワーのハンドルを回すと、キュッと鳴る音と共に熱いお湯が、身体に当たり気持ち良い。


「はぁ…。」


旦那とのセックスは、甘い言葉も、丹念な愛撫も特にない…。


これじゃあ、トイレみたいなもんだ。


無意識に胸を触ると、乳首は固くなっていて、指先で擦ると、イってない下半身から、何かが這い上がってくる感覚になる。


「あっ…。」


汗を流すの何て、口実…。


私自身に言い訳するかの様に、シャワーを浴びてるのは、中途半端に疼いてる身体をイカせたかったから。


シャワーの水圧を強くして胸に当て、指先を秘部に運ぶ…


クチュ…クチュ…


シャワーを浴びても、私の下の口が鳴く音は聴こえる。


「はぁ…あ…。」


短い指先を精一杯、奥まで入れて掻き回す。


グチュ…ヌチャ…。


「あっ、あっ…。」


外の突起も、弄らないとイケない。


「あぁぁ!はぁ…。イ…ク…。」


電気が走ったかの様に、小さく震える。


これが、最近の私の日課になっていた。


惨めな夜が明け、その対象たる旦那を笑顔で送り出す。


ゴミを出して、掃除して…今日は特売だから夕方までに、スーパーに行かないと。


こんな毎日を繰り返す。


結構、結婚に憧れていたんだけどな…。


今更、後悔しても遅いよね。


13時になると、昼ドラを観るのも日課だった。


たった30分で、有り得ないストーリー展開になるから、1日見逃すと解らなくなる。


「そんな馬鹿な!」


そう言ってしまう程、まさにドラマ。


でも…どんなに今泣いてても、必ず王子様が現れて助けてくれる。


お茶の間の主婦は、自分には起きないこの夢をドラマで妄想するのよ。


「人生で一瞬でも、こんな事味わってみたかったな。」


それは、今までもこれからも、起こり得ない願望…。


私は携帯のアドレスを開き、親友の名前を探した。


「でぇ~私が選ばれた訳ね。」


「ごめんね…こんな話、佳苗にしか話せなくて。」


「はいはい、嬉しいですよ~。」


郊外のカフェに、お茶に誘い出したのは、短大時代から付き合いがある西岡佳苗である。 


短大の時に付き合ってた同級生と結婚して、子どもも3歳になった。


マロンタルトをつつきながら佳苗は


「もっと、ラブモード上げるにはか…あの旦那じゃ厳しくない?」


結婚式にも参加したから、何となく解るのだろう。


「うん…色々考えたんだけどね…。夜とか余りにも事務的と言うか…。もうちょっと、甘くてもいいのになって。」


「あんたが、頑張るしかないじゃん!必死に振りなよ腰を!」


なんでそんなに、ストレートなの!


「う~ん。一回上に乗って、ヤろうとしたら止めろと言われて…。」


「あっそ~。本当につまんない旦那だね。」


ガックリだよ…本当に。


「で~刺激が欲しいの?浮気とかは、勧めないよ。」


ティーポットから、紅茶を注ぎながら


「浮気は…しないよ。ただ、このままじゃ惨めだし、生きてる意味も解らなくなりそうでさ。」


佳苗は腕を組み


「そこまで!う~ん…習い事とかしてみたら!資格取ったり。箔も尽くし、最近じゃマスターコースって言って、自宅で教室まで開く人もいるみたいだよ!」


携帯から資格サイトを探しだして見せてくれた。 


「私もちょっと考えてるんだよね~。子どもが小さい内は、なるべく一緒にいてあげたいし。」


一緒にサイトを覗くと、色んな体験談とかが掲載されている。


「でも…こうゆうのってお金かかるよね。」


「まあね~!でも、まだ長い人生を陽毬みたいに、灰色にしちゃうよりは、百万くらいだったら安いもんじゃない!」


「百万っ!」


「車だって、それくらいするじゃない。子どもなんて一人立ちするまで、一千万は、かかるんだからね!」


「ひゃ~!そうなんだぁ!」


やはり世の中お金が、付きまとうんだよね。


でも、いい事かもしれない。


視野も広がるだろうし、手に職を身に付けたら自信も湧いてくる。


「うん…ちょっと習い事してみるよ。自分の貯金は手をつけて無いから、結構貯めたし!」


「よっし!スケベな事を悶々と考えるより、健全でしょ!」


「なっ…もう~!」


佳苗にそう言われてしまい、私は顔が真っ赤になるのを感じた。


確かに一人で慰める行為は、惨めになる時がある。


今は、誰からも愛されてないんだって思ってしまうから…。


せめて、生きてきて良かったと、思える人生を送りたい。


もし、同じ思いをしてる人がいるなら、役に立てる日が来るかもしれない!


何か一気に、ワクワクしてきた!


「有難う佳苗!相談して良かった~!私、頑張るよ!」


「よしっ!頑張れ!」


私たちは、満面の笑みで笑いあった。


スーパーで買い物してから家に帰ると、早速ノートパソコンを開く。


結婚してから、こんなにワクワクしたのは、久し振りな気がする。


『カルチャーセンター』で検索すると、かなりの件数がヒットしていった。


もう少し絞り込む為に、地名や内容とかも入れていく。


多数、目につくのは、お料理教室、英会話、フラワーアレンジ、カラオケ等々…。


「ちょっと、ありきたりだよな…他にマニアックなのも、あったりするのかな…。」


それは、ほんのちょっとの興味。


すると、普段役に立つか解らないようなジャンルがヒットする。


本当に色んな事が調べられて、便利な世の中だと思う。


「あ…こんなのは、どうなんだろう?」


『性生活』『セックス』『夜伽』…そんな言葉を羅列してみると…


「えっ!結構あるんだ。」


やっぱ、彼や旦那と仲良く気持ちよく、なりたいと思うよね…。


ページを進めると、目についた見出し


『東京Love Culture Center』


ページホームページを見てみると、謳い文句に


『これで貴女も旦那や彼氏を虜に出来ます』


一応、他にもありそうな言葉だけど…目を引いたのは、画面に掲載されてる講師の面々。


堂々とイケメン講師が、居並んでいる。


「いいのかな…こんな晒して。」 


サクラだったり。


揃いも揃ってイケメンばかりも、胡散臭いし。


…でも、気になる…。


一人で苦笑しながら、サイト散策をする。

講師は、20歳~50歳まで年齢層の幅が広かった。


流石に10代は居ないんだ。


まあ、若い子にこうゆうレッスン受けるのも微妙だよね。


『レッスン内容は多数…キスから男性が喜ぶテクニックも、貴女が感じ易くなる身体作りまで、懇切丁寧にレクチャーします。』


か…ビデオとか見ながら、解説でもしてくれるのかしら?


『貴女が納得イクまで、好きなだけ受けられます。』


『詳しくはカルチャーセンター是非にて!』


うっ!…スクールの映像はあっても、具体的な説明が少ないな。


でも私は無意識に、問い合わせをしていた。


問い合わせフォームに入力すると、確認と返信が携帯に来る様になっている。


パソコンは家族が共有してたり、個人特定しにくいからかもしれない。


数分後、メールが届く。


『ご本人様確認』


と、来ていた。


添付されてるURLに、更にフォームがあって、携帯番号を入力して送信。


また、数分後に


『今から5分後に、こちらからお電話させて頂きます。』 


レスメールが届いた。


「ひゃっ!どうしよう!こっちから連絡するんじゃないんだ!」


多分、悪戯防止とかも含めて用心深いのかもしれない…どうしよう~大丈夫かな…。


そして、5分後…


トゥルルルル~!


携帯の着信音が、響いた。


「わっ!本当にジャスト5分だっ!」


直ぐに出る勇気が出ない…。


でも…変わりたい!


「はいっ!佐川陽毬ですっ!」



瞬間


『クス…』


え…笑い声…?

やっぱり悪戯?


『あ、失礼しました。こんな勢い良く出られた方は、初めてだったもので。』 


ドッキン!


甘い声と『初めて』と言われた事に、胸の奥が小さく跳ねる。


「す、すみません!本当に連絡くるなんて思わなくて。」


『いえ…本当に失礼致しました。どうかお気を悪くなさらないで下さい。東京Love Culture Centerのヤマネと申します。』


「ヤマネさん…。」


『はい。今回、陽毬様の受け窓口を担当させて頂きたいと思います。』


琴海様なんて…くすぐったいし、とにかく優しく響く甘い声だけで、酔いしれそうになる。


「思います…って、決まりじゃないんですか?」


不思議な言い回し。


『はい…やはり特殊なカルチャーセンターなので、この電話の時点で、止められる方もかなりいらっしゃいますので。出来たら、希望な気持ちで言っておりますが。』


こんな優しく言われたら、希望を叶えてあげたくなる。


「どうすればいいんですか?」


『ご質問、有難うございます。では、最初のご説明から入らせて頂きます…。』


それから20分程、入会の案内をされた。


「はぁ~取り敢えず、そちらに伺って再度詳しく説明を受けるんですね。」


『はい…それから、よくよく考えて頂いた方がいいので、他のお客様との接触をしない様に、説明会は予約制にさせて頂いております。』


凄い…プライバシー保護とか、徹底してるな。


カルチャーセンターの域じゃない気がするんだけど…。


少し怖い気もするけど、それ以上に興味が湧いてきた。


このヤマネさんにも、会えるんだよね…。


「あの…その受付と説明会は、担当はヤマネさんがしてくれるんですか?」


『はい、もし入会されてレッスンの手続き等、陽毬様がご卒業されるまで、窓口は自分が担当になります。』


「本当ですか!凄いシステムですね!」


『お褒め頂き恐縮です。当校は、最後までお客様に責任を持って対応させて頂いております。』


普通、世間の受付が一人の人が一貫してくれるなんて、そうそう無い。


担当が変わっただけで、不安や面倒臭くなる場合もある。


対応が悪ければ、尚更だ!


「分かりました!予約お願いします!」


『クス…畏まりました。心よりお待ち申し上げております。』


また、小さく笑われてしまった…。


2日後


今日はいよいよ『東京Love Culture Center』の説明会に行く日。


テンションが自然と、高くなってしまう。


鼻唄混じりに朝食の準備、旦那がリビングに入って来て


「おはようございます!」


元気良く挨拶すると、驚いてる様だ。


「あ…あぁ、おはよう。」


いつもと変わらない、テンションの低い挨拶も、気にもならないわ!


入会前から、こんなに楽しいなんて!


『東京Love Culture Center』


効果抜群かも、しれないなぁ~。


朝食を食べ終わって、旦那を見送る。


「いってらっしゃ~い!」


「行ってくる…。」


バタン…ドアが閉まったら、鍵を掛ける。


最後まで、旦那が怪訝な顔をしていた。


「さてと…準備を始めよう!」 


私はいつもよりも丹念にメイクをして、普段中々着れなかった、淡いピンク色のワンピースをチョイス!


まるで大好きな人との、初デート気分だった。


携帯で調べた地図を見ながら、カルチャーセンターがあるビルを探す。


主要都市に、姉妹校もあるみたいだ。 


「結構人気あるんだ…。」


それくらい、性の問題は大きいんだな。


不妊治療とかにも、役立ったりするのかな?


等と、色々な考えを巡らしたりして。


そして…


「あっ…ここだ。」


表向きは、普通のビルと変わらない。


カルチャーセンターの割には、自社ビルみたいにビルの半分がスクールで占領していた。


ゴクリ…生唾を飲む。


いよいよだ…先ずは説明を受けるだけなのに異様に緊張して来た。


深呼吸して、エレベーターのボタンを押す。


一階に降りてくる時間が、やたら長く感じてしまう。


「はあぁ…ヤバい…。」


本当に、良いのかな?


セックスのカルチャーセンターなんて…。


他のサイトでは、結構エグい事も書いてあった。


一歩足が、下がり掛けた時に…


チーン!と、エレベーターが到着した。


ドアが開く…と、清潔感のあるスーツを着た、超イケメンの男性が降りて来た。


私を見るなり


「カルチャーセンターにお越しですか?」


と、聞かれた。


「あっ…はい…。」


恥ずかしくて俯くと


「そうですか!ようこそ!どうぞお乗り下さい!」


爽やかな笑顔で、エレベーターに導かれたので


「あっ、どうも…。」


釣られてニッコリ笑顔で、乗り込む。


「説明会にいらっしゃいましたか?」


「はい…初めてで。」


「なら、10階になりますね。受付窓口まで、ご案内しますね。」


長身から見下ろす様に、また爽やかに微笑まれる。


この人…ホームページに載ってたかも…現物は、想像以上にカッコいい。


本当にカルチャーセンターなの?


名を語った、新手のホストクラブじゃないかしら?


私の緊張が伝わったのか


「受付担当、誰になりましたか?」


話題を振ってくれた。


「受付担当…えっと、ヤマネさんです。」


「ヤマネですか…なら安心だ。お客様も気さくに話せると思いますよ。」


そう言う優しい声に、安心感が湧いてくる。


「あの…貴方のお名前は…。」


「僕ですか…」


チーン!


エレベーターが受付階に、到着してしまった。


「着きましたね。今、呼びますので、少々お待ち頂けますか。」


「はい…。」


ヤマネさんもそうだけど、みんなこんなに対応が丁寧なんだろうか。


「はい、お待ちになってます…」


やり取りが聞こえてくる…いよいよ何だと思うと心が逸る。


「もうしばらくしたら、ヤマネが参りますので。」


また優しい笑顔で、微笑まれる。


「有難うございます。少し安心しました…ドキドキしてたので。」


私の言葉に彼は


「それなら良かった!下に降りた甲斐が、ありましたね!」


満面の笑顔に胸がトキメいてしまいそうになったが、彼は何処かに行く為に、降りて来たんだと気づき


「あっ…何処かに用事が、あったんじゃ?」


「コンビニに行こうと、しただけですよ。」


「そうでしたか…すみません、付き合わせて。」


謝ると


「とんでもないです。お客様に会えてラッキーでしたから!また、今後も会えたら嬉しく思います…。」


クラリ…目眩がする。


こんな台詞言われた事無いわ!


夢心地なところで、受付に今度は美青年が現れ


「あっ、りきや!有り難う。」


「ヤマネが参りました。では、また…。」


そう一言残して『りきや』と呼ばれた男性は、またエレベーターで降りて行った。


私がエレベーターに、視線を向けたままにしてると


「りきやの事、お気に掛かりますか?」


と、ヤマネさんは、微笑みながら聞いてきた。


「あっ!やっ…まさかいきなり、スクールの人に会うなんて思わなかったので…。」


「そうですか。ご予約頂けた陽毬様で、宜しいでしょうか?」


「はい!佐川陽毬です!」


勢い良く答えると


「クス…間違いないですね…お電話と同じくお元気であられる。」


思い出し、カァ~と顔が熱くなる。


「ようこそいらっしゃいませ。東京Love Culture Centerへ!私、担当のヤマネでございます。」


最敬礼で、お辞儀をされた。


こんな美青年に、頭下げられるなんて、人生始まって以来だわ!


慌てて、私も最敬礼でお辞儀をする。


「宜しくお願い致します!」


ニッコリ笑って


「では、こちらにお掛け下さい。」


フロントを通り、奥のラウンジの様な場所に案内される。


「今、お茶を用意致します。どちらに致しますか?」


メニューを渡され


「あっ…ホットの紅茶で!」


良くも見ないで、また勢いで答えてしまったが


「畏まりました。どうぞソファーにお掛けになってお待ち下さい。」


ヤマネさんは、お茶の用意をしに奥へ下がって行った。


広いな~。


私一人しか居ないのに、貸切状態だよね、これ。


見慣れない景色に、キョロキョロしてると


「クス…お待たせしました。」


カチャンと、ティーセットがテーブルに置かれ、目の前でカップに紅茶を注いでくれた。


「珍しいですか…こうゆうところ?」


あっ…キョロキョロしちゃったからか


「はは…庶民なんで、ゴージャスな所に慣れてなくて…。」


「クス…陽毬様は、素朴で可愛らしい方ですね。想像通りの方で嬉しいです。」


微笑みながら言われて、余りの眩しさに目を閉じてしまいそうだわ。


それに『可愛らしい』とか『嬉しい』

とか、ポンポン言われて、早くもノックアウトしそう。


さっきのりきやさんは、凛々しさがあったけど、ヤマネさんは洗練された美しさって感じで、女の私の方が恥ずかしくなる。


きっとこのカルチャーセンターの目玉の一つなんだろうな。


「今から当校の説明に入らせて頂きます

ので、お茶を飲みながら聞いてて下さい。」


「はい!お願いします!」


私の返事に、小さく笑ってヤマネさんはパソコンを操作し始めた。


「当校の学ぶものは…ホームページでも記載してますが、『性生活向上』に向けての基本から応用になります。普段の旦那様とだけでは、得られ難い事を当校で身に付けて頂き、家庭円満に結び付けて頂けたらと思っております。」


「はい!」


私の反応に頷いて、次のページに移る。


「コースを最初に決めて頂きます。大抵スタンダードコースを皆様、最初に受けられますが、もっとステップアップをされたい方は、途中でコース変更も可能です。」


私は食い入る様に、パソコン画面を見ていた。


「スタンダードコースでは、コミュニケーション、キステクニック、性感帯開発、旦那様を喜ばせる方法等も含めております。」


「はぁ…。」


リアルに言葉を出されて、もしかしたら自分がやるのかと思うと、気恥ずかしくなる。


ヤマネさんは、笑顔を崩さず説明を続ける。


「講師は当校は、常時80名程待機しております。」


「80名!!」


そんなに、イケメンがいるのが凄い!


「はい…最近需要が増えてますので、増員中です。」


「増員…。」


需要って…別の意味で、増えてるんでは?


「スタンダードコースは、5名専属講師を選べます。」


「5名、選ぶんですか?」


「はい、これから陽毬様のデータと好みを総合して、何名か抜粋致しまして、そこから最終的に選んで頂きます。」


「はぁ…。」


「多すぎず、少なすぎずの人数にしております。5名以上は増やせませんが、減らす事とチェンジは可能です。ただチェンジには、料金が発生いたします。それはまた、後程ご説明します。」


「はい。」


何かもう頭が、いっぱいになりそうだな…。


「独占コースと言って、たった1人だけ、付ききるコースもありますが、料金は割高になります。」


「1人なのに?」


「はい…スケジュール調整を優先にする関係が、ございます。」


なる程…本当に徹底してるのかも。


いったいどんな授業に、なるのかな…。


「スタンダードコースは週三回、プレミアムコースはフリーとなってますが、講師の状況にもよります。」


「因みに…金額は…。」


恐る恐る聞いてみる。 


ホストクラブとかに、何千万とかつぎ込むみたいには、成りたくはないな…。


「やはり、一番はそこですよね。」


画面をまた、スライドさせ


「スタンダードコースで100万、プレミアムはその倍になります。」


「倍…。」


つまり200万。

ぎゃっ!!


「でも…申し込まれる方がいるから…存在してるんですよね?」


「はい!好評を得ております。」


ニッコリ笑われたら、何も反論出来なくなる~。


「まぁ、スタンダードコースも金額が金額なので、今日ミニ体験が出来ますが…試されてみますか?」


『ミニ体験』…かなり心を惹かれる。


ここまで来たら…でも、講師は誰が。


「やってみたいんですが…講師は、選べるんですか?」 


「はい、今空いてる者からになりますが。」


ヤマネさんは、空いてる講師を確認して


「今日来てる者で、この中からになります。」


ドキドキしながら、画面を見ると


「あっ…さっきの。」


「りきやですか?彼が空きなのは、珍しいですね。中々、居ないので。」


『また今度も会えたら嬉しく思います…。』 


さっきの言葉が浮かび、画面を見詰めてしまう。


ヤマネさんは


「りきや…で、お試ししてみましょうか?」


「はい!お願いします!」


勢い余った返事に、クス…と笑い手配を始めた。


ドキドキドキドキ…。


「少々この部屋でお待ち下さい。セイジが参りますので。」


「はい!」


そう…『ミニ体験』をするために部屋に、案内されたのだ。


部屋は、オフィスぽくなく女性が寛げる様な作りで、可愛らしいインテリアも揃っていた。


縫いぐるみまで、あるし!


お花も綺麗だ。


本当に女性の立場に、立ってくれてるのが伝わってくる。


それだけでも、嬉しくなってきた。


ソファーに腰掛けたまま、ジッと待つこと5分…ガチャリとドアが開く。


「きゃ!」


「あっ!先程の!また会えましたね!」


ニッコリ笑う顔が無邪気で、キュン!と、トキメイてしまう。


「は、はい!ミニ体験をしてみようかなって…さっき会ったので、指名しちゃいました。すみません…。」


恥ずかしさから、語尾が口ごもってしまう。


「ははは!照れ屋さんなんだね!指名して貰えて、凄い嬉しいな!」


あれ?さっきと違って、妙にフレンドリーだな。


でも、こっちの方が話し易いかも!


「宜しくお願いします!」


ニコニコ笑顔で、りきやは私の隣に座った。


ドッキン!


きゃあぁあぁ~!


隣に、座った…あっ、お試しなんだから当たり前か…。


な、何が起きるのかな?


一気に色んな妄想が広がって、ギュッとスカートを握ると。


「陽毬さん!ケーキ好き?」


えっ?いきなりチュウとかじゃないんだ!

驚きながら


「はい!大好きです!」


また勢い付いて、返事をしてしまうと


「だよね~。俺も好きなんだ。お奨めとかある?」


キャラ的に、ケーキって感じじゃないけど、また無邪気にニッコリ微笑む、りきやの笑顔の方が甘いですよ。


私はスカートを握ったまま、指をモジモジさせて


「そんな詳しくはないけど、Fulegeってお店に良く行くの。」


「へ~!名前からして美味しそうだね。何が好き?」


りきやは、頬杖を付いて私の顔を覗き込む。


きゃっ!

頬杖さえも、メチャメチャ絵になる!


これくらいで、ドキドキしてる私って本当に、男性に免疫ないんだぁ。


ちょっと俯いて


「マロン…タルトとさくらんぼのショートケーキ…が特に美味しいかな。」


「さくらんぼ…珍しいね。」


更に寄ってきた、りきやの膝が、私の膝にコツンと触れた…。


ドッキン!


いやいや!

お試しだし、これでドキドキしてたら、この先持たないわ! 


「そ、そうでしょ!中々お目にかけないんだけど、甘酸っぱさが生クリームと絶妙なのよ!」


「へぇ~!気になるな!次に陽毬さんが、来た時に用意出来たらいいな。」


ケーキにこんなに食いつくイケメンって!


それに『用意』って?


「用意出来たらって、そんな事までしてくれるの?」


りきやは、膝をくっつけたまま相変わらず笑顔で


「はい!好きなもの食べたら、リラックス出来るしね!ただ来て、身体使って帰るだけってのも寂しいじゃない。一番大事なのは、メンタル面の向上だから。」


ずっと目を合わせて、包み込まれるかの様な穏やかさで、りきやが話す。


本当だ…たった、これだけの会話なのに温かくなって…胸が痛い。


「ははは…私ってば…。」


涙腺が、潤み始めてきた。


「陽毬さん…どうかしました?」


心配してくれる顔が切な気で、グッときてしまう。


「他愛ない会話で…凄く胸が熱くなっちゃって…」


「うん…。」


「旦那とこんな会話…全然してないんだよね…。一生懸命テクニックを覚えるだけじゃダメなんだろうな…。」


りきやの手が、スカートを握ったままの私の手の上に重ねて置かれ


「陽毬さん…。」


「は、はい!」


きゃあぁ~!手が!


「ここのセンターに来るの勇気が必要だったでしょ。」


勢いもあったけど、正直そうだ。


「うん…でも、変わりたくて。」


「そう…ここに来る生徒さんは、切実な思いで来るんだ。」


りきやの手に力が入る。


「大事な人との関係を守りたくて…最後の選択肢がここしか無かったって…そうゆう人たちが、沢山いるんだよ。」


「沢山…。」


私だけじゃないんだ。


「相手と気持ちを通わす…身体も心も…。繋がってるから、両方キラキラに磨いて、旦那さんの身も心も虜にさせていくんだよ。」


思わず虜になってる旦那を頭に、思い浮かべてみる。


「ふふ…想像つかないわ。」


笑ってしまうじゃない。


「出来るよ…陽毬さん、可愛いもん!」


ドッキン!


「か、か、か、可愛い!?」


旦那にも、言われた事ないかも!


「うん…魅力的…だよ。」


りきやの綺麗な瞳に、艶っぽく見詰められ、空いてる手の指は、私の唇を軽くなぞる。


ゾクリッ!!


身体の芯をなんとも言えない感覚が貫いていく。


「そんな…。」


「謙遜しなくていいの~。」


と、優しく笑いながら、今度は下唇を押さえる。


「唇とか、小さいけどプクプクしてて…綺麗に艶めいて、さくらんぼみたい。」


りきやの顔が間近に近付いていて、吐息がかかりそうな位置で囁かれる。


「あっ…。」


「頬も…プッくりしてて気持ちいいし。」


頬をくっ付けられて、擦り寄る。


旦那みたいに髭で、チクチクしない。


寧ろスベスベでつい…


「気持ち良い…。」


ポロっと、言ってしまう。


「気持ち良い…俺も…。」


そして、頬にキス。


「ひゃっ!やっ!」


ビックリして、身体を引こうとしたけど瞬間、りきやの腕が背中に回る。


「嫌…?」


甘い声で、鼻がくっ付きそうな位置に、伏し目がちの瞳は恐ろしく色っぽく揺らめき…私は


「い…や…じゃない。」


「していい?」


聞かれた事は多分…『キス』。


まるで、当たり前の様に目を閉じると…りきやの唇が重なった。


「あっ…。」


ドックン…。


どうしよう…本当にしちゃった。


いくらセンターって言っても本当に、身体が触れていくなんて…。


そんな事が一瞬、頭に過るが、そんな道徳心なんて直ぐに掻き消される。


何度も優しく啄む様に、触れていく。


上唇、下唇とそっと食まれ、時たま舌先でなぞられ…


「んんっ…。はぁ…。」


キスだけなのに、触れられる度に身体がビクンッと反応してしまうと、りきやの唇が少し離れ


「陽毬さん…そんなに可愛い反応されると、これだけじゃ済まなくなるよ。」


「ひゃっ!ごめんなさい!」


余りにも凄い色っぽくて、免疫が無さすぎる私は、つい謝ってしまった。


そんな私にりきやは


「はははっ!陽毬さん、可愛いっ!」


大声で笑われながら、ギュッと抱き締められる。


「そんな、笑わなくても~!」


りきやの腕の中で、ジタバタすると


「まだ時間あるからね。続きするよ。」


頭の上から甘い声が、降ってきた。 


「続き…!」


「そう…キスの続き…」


りきやは言いかけながら、私の唇を咥え込む。


「んっ!」


さっきの啄むのとは、違って今度は激しい。


すっぽりりきやの口に包み込まれ、クチュっと吸い上げられる。


「はぁ…。」


少し隙間が開き息を吸い込むと、そこから柔らかなモノが入り込む。


「あっ…。」


舌…りきやの舌が、私の中に入ってきた。 


ディープなんて、学生時代に少し付き合ってた人とした以来だ。


久々過ぎて、どうしよう!


「り…きや…さ…んふ…。」


クチュクチュ…絡められる音がやたら響いて、恥ずかしくて、身体が熱くなる。


無意識に腕をりきやの背中に回し、しがみ付く。


「うふ…んん…。」


りきやの舌であちこちなぞられ、口の中がこんなに感じるんだと、知らされる。


特に反応してしまう、部分は執拗に攻めてくる。 


クチュ…クチュ…。


「んん!ん~!」


あっ…これだけで、下腹部がジンジン、疼いてきてしまう。


濡れちゃう…。


知ってか知らずか、りきやのキス攻めは、もうしばらく続いた。


私も次第にりきやのリズムに、合わせていた。


クチュクチュと絡み合う音が、安心感さえ誘う。


「はぁ…あふ…。」


唇を少し離しては、顔の向きを変えて、また深く絡め合う。


時たま舌先で、くすぐり合ってみたりする。


これが『ミニ体験』なら、センターに入会したら、どうなってしまうんだろう…。


そう考えただけで、下腹部がまたキュッとなる。


何だか胸先も、くすぐったく感じる。


私が少し、モゾモゾし始めたのを察してか、りきやはチュッと鳴らして唇を離す。


「陽毬さん…どうしたの?」


優しく聞かれたが、恥ずかしくて本当の事は言えない。


「あっ…こんな素敵なキス…久々で、ドキドキしちゃって。」


そう言った私の顔をりきやは、ジッと見詰めて


「本当に?それだけ…。」


「ひゃっ!」


見透かされた事と、りきやの手が私の太股を撫でたので、驚いてしまう。


「本当は…ミニ体験じゃ、まだやっちゃダメだけど、陽毬さんには、少しおまけね。」


「おまけ…ですか。」


「うん…嫌だったら言ってね。」


「は、はい!」


りきやは、優しく微笑むとまたキスをして…太股を伝ってスカートの中に手を入れてキタ。


「ふっ!!」


きゃっ!声に出したくても、口はまだ塞がっている。


スカートの中で、りきやの手は太股を優しく撫でていく。


これが…おまけなのかな?


太股だけでも、ゾクゾクするわ。


旦那以外の男性に、触れられてる不道徳感からか…それとも、りきやだから?


唇を離し、私をソファーに楽な姿勢になる様に、寄りかからせてくれながら


「感じるままに…素直になればいいから…。」


「え…素直?」


どうゆう事かな…意味が理解出来てなかったけど、それは直ぐに解らせられる。


りきやの手がスカートの中の、濡れてる所を刺激し始めた。


「あっ!嫌っ…!」


恥ずかしい…だって、凄い濡れてるのが自分でも解ってたから。 


そこをりきやに今、触れられてるかと思うと、逃げ出したくなった。


「嫌?本当に…こんなに感じてたんでしょ…。」


パンストの上からだけど、優しく確実に私を弄ってくる。


「あぁっ!あっ!!」


「うん…もっと、鳴いていいよ。」


りきやは囁いて、指の動きを強くしてきた。


「ひゃっ!やっ…。」


「ストッキングの上からだけど…感じちゃう?」


「あっ…う…うん…。」


そう…直接触れられていないのに、自分でも情けないくらい、感じていた。


だって…結婚してから、キスだって愛撫だって、旦那は殆どしてくれない。


私の身体は、性欲で飢えてたのかもしれない…。


「本当は…ミニ体験は、キスまでだから…これは内緒にしててね。」


「あっ…な…内緒…?」


指の動きは、止まらなくて下腹部がキュッとしてしまう。


理性でダメだと引き止めるけど、身体は正直だ。


色々考えてなんか、いられないわ…。


「そ…二人だけの秘密…だよ。」


そう言うとりきやは、ゾクリとする程色っぽく微笑み、またキスをした。


『秘密』…それだけで甘美で仕方ない。


どれだけ私、渇れてたのかな?


絡められる舌の甘さと、下から揺さぶられる快感で、頭の思考はショートしそう。


「んっ…んんっ…。はぁっ!」


唇が離されると、薄く笑い今度は服の上から、胸を長い指で揉み始める。


「あぁっ!りきやさん!」


「これも、おまけだから…さっきの約束出来る?」


「あっ…ああっ…!は、はいっ!約束するわ!」


私は、もっと触れてもらいたくて、りきやと密約を交わした。


甘い甘い…『二人だけの秘密』


「陽毬さん、大丈夫?」


「うん…もう、仕度出来たわ。」


あれから10分間くらい、りきやは私を気持ち良くさせてくれた。


服と髪が乱れたから、身だしなみを整える。


「じゃあ…またヤマネから説明あるけど…身体、疲れてないかな?」


ちょっと、脱力感はあったが、りきやが無理のない程度にしてくれたから、そこまでの疲れはない。


「うん…大丈夫よ…。」


まだ、下腹部は少しジンジンしてるけど。


「良かった…また、会えたらいいね…。」


りきやは肩を抱き寄せて、こめかみにキスをしてきた。


なんか、ホストみたいね。


「うん…頑張ってみようかな…。」 


かなり恥ずかしかったけど…りきやには、また会いたいかも。


これって浮気に、なっちゃうのかな?


ちょっと俯いて、考えて込んでしうと


「陽毬さん…ここで学んでった人、みんな最後は綺麗に明るくなって、卒業して行くから…きっと貴女も大丈夫ですよ。」


「本当?」


見上げたら、りきやの優しい笑顔があった。


「うん…自分に自信付けて、旦那さんとも仲睦まじくするために、頑張ろうと思ってる事を後ろめたく思う事はないよ!」 


ズキン…。


「りきやさん…。」


色んな人たちを相手に、してきたんだろう。


まるで、見透かされたみたい…。


でも…この痛みは、別な気がした。


「うん…私…頑張って、夫婦円満になりたい。子どもも欲しいし!」


ズキンズキン…。


「そうだよ。陽毬さんなら、きっと出来るよ。」


りきやは、微笑みながら頭を撫でた。


あぁ…そうよね…仕事だもの…励まして生徒増やさないとだよね。


おまけだって、みんなにしてあげてるのよ…きっと…。


でも、騙されたと思ってでも、変わりたいし…りきやに会いたいな。


「うん!私、多分入会すると思う。」


「本当に!良かった~!」


りきやは、嬉しそうだった。


ノルマとかも、あるのかな?


「陽毬さん…実は俺、ミニ体験を担当するの初めてだったんだ~。嫌な思いさせたらどうしようかと思った~!」


「えっ…初めて…。」


今度は、ドッキンと心臓が跳ねたみたい。


「うん…だから、おまけは絶対内緒だよ。」


「う、うん!!」


ウィンクして人差し指を唇に当てるりきやが、可愛らしく見えてしまった。


さっき説明を受けたラウンジまで、戻るとヤマネさんが色々準備して待っていた。


「陽毬様、お疲れ様でした。ミニ体験は、いかがでしたか?」


「はい…楽しかったです。りきやさんが凄く…優しかったし。」


思い出すだけで、また感じてきてしまいそう。


「そうですか…お手続きは、いかが致しましょうか?」


ドキン…。


クーリングオフは、流石に利かないよね…。


でも、決めたの。


りきやと約束もしたもの!


後は、女は度胸!


「入会…します!」


また、勢い良く答えた私に


「クス…畏まりました。ご決断、大変嬉しく思います。」


栗毛色の柔らかい髪の間から、優しく微笑んだ瞳が美しく見えた。


「では、これからお手続きに入らせて頂きます。その際に旦那様のデータも頂きます。」


「旦那も?」


「はい、旦那様の性格や性癖、体質もこれからのレッスンデータに使わせて頂きます。目的は『旦那様を虜』にする事ですから。」


凄い笑顔だが、それであの堅物の旦那を虜にと、言われても変な感じだわ。


「解りました…。」


それから、旦那について思い付くだけの事を全て書き出し、手続きに移っていった。


カタカタカタカタ…。


ヤマネさんが、データを打ち込む間に、私は書類に目を通す。


しばらくして、パソコン画面をスクリーンに写し出し


「旦那さんに体格が似てる者とか、年齢が近い者とか、色んな角度から選びまして30名程に絞られました。先程もご説明致しましたが、5名までならお選び頂けます。」


「30名中の5名…。」


スクリーンに、一人一人を映し出す。


どうしよう…りきや入ってるのかな。


聞いた方が、早いのかな。


でも、さっきのさっきだから、あからさまかな…。


私は黙って、一人一人のデータを確認していった。


25名目…


「あっ!」


りきやだ!


りきやも候補に入ってる。


それだけで、胸がドキドキし始めると 


「りきや…ですか。入ってましたね。あくまでもコンピューターが抜粋するので、仕掛けてはないですよ。」


ヤマネさんは、意味深に言ってくるから、顔が一気に熱くなってしまった。


「あっ…いえ…少し慣れてる人が、居ると安心するかなと…。」


「そうですね…じゃあ、りきやは担当に、入れさせて頂きますね。」


優しくヤマネさんは、微笑んだが、その薄茶色の瞳は私の気持ちを見透かしているようだった。


後4人…でも、そんな色んな人と体験していくのもどうかしら?


確かに男性経験は、学生時代付き合ってた人と、社会人になってから1人と、その後は、見合いの旦那だけ…経験が少ない

から、旦那を満足させてあげられないのかも。


でも…


「因みに…独占コースも…今から可能ですか?」


「可能ですが…少々お待ち下さい。」


カタカタ…と、またパソコンを打ち

出した。


「りきやでしたら…2ヶ月待ちして頂ければ、独占コース入れますね。」


「えっ!2ヶ月待ちっ!」


「申し訳ないです。りきやのスケジュール

が、かなり詰まっていて…ご予約して頂ければ、2ヶ月後には独占コースに設定出来ますが…。」


「はぁ…人気あるんですね…。」


そりゃそうか…忙しいから今日のミニ体験も、本当にたまたまだったんだろう。


そう思うと、ラッキーなのかアンラッキーなのか…。


「色んな者から、学ぶのもかなり勉強になりますよ。お客様の大半は、スタンダードコースですから。」


ヤマネさんは、励ます様に言ってくれた。


「予約のキャンセルも…出来ますか?」


「はい…2週間前に申し出て下されば。特にキャンセル料等は、発生致しません。」


「分かりました…2ヶ月後、りきやさんを独占コースで予約お願いします!」


「…畏まりました。」


いいんだ…きっと、エレベーターでりきやに会った時から、何かが動き始めたんだ!


私は、スカートをギュット握りしめた。


独占コースまでの2ヶ月間は、スタンダードコースで対応が出来るとの事と、折角だから他の人も経験してみるのもありと、ヤマネさんの勧めで…選んだ残り4名


あゆむ:23歳

なぎさ:29歳

かおる:35歳

たくみ:40歳



年上で旦那と同じ歳くらいは解るが、若い子も勧められ


「案外面白いと、思いますよ。」


「そうです…何か恥ずかしいですが…。」


若い子に、私なんかどう思われるんだろうか…。


因みに、りきやは31歳だった。


「お支払は、分割でも一括でも、色々設定出来ますがいかがいたしますか?」


よし…頑張る決意を表して…。


「現金一括で、支払います!」


ヤマネさんも、流石に一瞬目を見開いた。


「現金一括…畏まりました。では、初回レッスンの時までに、ご用意頂けますか?」


「分かりました!」


「クスクス…本当に琴海様は、素晴らしいですね…。」


へっ…!どいゆう意味かな?


「最後に、禁止事をお伝えさせて頂きます。」


「禁止事…。」


何だろう…ちょっと緊張が走る。



緊張が伝わったのか、ヤマネさんは柔らかい声で


「大丈夫ですよ…難しい事ではありません。本当に基本的な事ですから。」


「はい…。」


私が頷くと、微笑みながら続けて


「まず…一つは、担当と個人的に連絡先を交換しない事。」


「はい…。」


「二つ目は、センター以外で個人的に会わない事。」


「はい!」


なんだ~基本的な事だから、大丈夫だよね。


「三つ目…恋愛感情を持たない事…」


ドキン…。


当たり前な事なのに、何故か動揺してしまった。


「は…い。やっぱり…あるんですか、そうゆう事…。」


「はい…身体が触れ合うし悩みを相談している内に、恋愛感情に変わってしまう事は無くはないですね…。」


ドッキン…ドッキン…。


違う…りきやは気安いだけよ。


「そうなってしまった…場合は?」


ヤマネさんは、笑わず真っ直ぐ見詰めて


「お客様は退会…講師は追放して、お客様と二度と…絶対会わせない様に致します。」


「二度と…絶対…。」


それって…どうゆう事になるの!?


私の質問にヤマネさんは、ニッコリ笑った。


「敢えて今知る必要はないかと…。陽毬様は…そうならないと信じてますよ。」


ドキン…。


何か牽制されたみたい…。


「はい…主人の為にも、頑張って卒業します…。」


白々しい台詞に、語尾が小さくなってしまう。


「はい!一緒に頑張りましょう!では、次回レッスンの予約をしておきますね。」


ヤマネさんは何事もなかった様に、キーボードを叩き始める。


私は胸の奥に、モヤモヤしたものが残った。


これはきっと、未知の世界への不安感だ…そう…。


でも、早くこの広がり始めた曇りを取り除けば良かった…。


元より…東京Love Culture Centerに来なければ良かった…。


そんな後悔なんて、正に後の祭りだった。





ねえ…『貴方』は、私の何処を好きでいてくれたのかしら…?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る