Ⅱ.ラブ・コメディアンは古都を往く
ラブ・コメディアンは歩いている。
ここは、アドリア海の
明け方の広場に
「ジュ・デーム……ジュ・デーム……」
冬の街は高潮で水浸し。
ラブ・コメディアンの革靴も湿り気を帯びている。
一般のジェントルメンには少々厳しい環境だ。
だが、彼はそれすらも
「ダイゴッコノスリキーレ……」
ところで、ラブ・コメディアンの過去について知りたくはないか。
良いとも。それでは心ゆくまで語り明かそう。
ラブ・コメディアンは108居る
生まれて間もなく上位存在からラブ・コメディアンとしての宿命を拝領し、
元々杖は茶色だったが、そこはラブ・コメディアン。
好みのルージュを
しかし、ラブ・コメディアンの道は過酷だ。
巨大な宇宙ダコが地球に張り付き、人類を吸い上げるがごとく。
けれど、彼はシルクハットを目深に被り、口元のセクシーな笑みを
素晴らしさとは自信から生まれるモノなのだと、教えてくれる。
「助けて!」
悲鳴が上がった方向を見ると、宇宙ダコが少年に
上気した
その横を通り過ぎようとする。
「なんでやねん!」
宇宙ダコに襲われていたはずの少年はそれを
あろうことか、少年は
だが、彼は両手を広げ、彼を迎え入れる。
「あっ……」
腹にナイフの
見上げる形となった少年は彼の素顔を見てしまう。
「どうして……!」
ラブ・コメディアンは腹からナイフを引き抜くと、取り上げると、代わりに一輪の赤い花をプレゼントする。
君に涙はふさわしくないと花は
そして、ダンス・パーティーが始まる。
こうして、少年はラブ・コメディアンの734人目の
宇宙ダコは愛人になれないから、いつかその日が来るまで、地球は壊さないでね。
夕暮れの街に、
ラブ・コメディアンはそれを背中に受け、目の前に広がる海を
腹から
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