第83話 リッチキング3
「それでは、俺は少し休ませて貰います。リッチキングが来るのは、日が暮れてからでしょうし、それまで寝かせてください」
「……リッチキングがここまで来ると?」
「来なければ、明日も要塞の破壊を行います」
華怜さんは、絶句している。
「……翔斗さんは、器用そうなイメージがあったのですが、結構過激な発想をしますね」
「
華怜さんは頭を抱えている。
「問題点があれば教えてください」
「リッチキングの属性は、闇と雷になります……。
ほう……。ナメクジ以上に相性の悪い相手だな。
「確認なのですが、俺が倒さないといけないのですよね?」
「私が倒してしまうと、この後、翔斗さんが困る事態が起きます」
良く分からないけど、華怜さんは手が出せないのか。案内までという縛りがあるのかもしれない。
いや、推測できなくはないな。
多分、称号がなにか付くのかもしれない。
それと、経験値だ。一気にレベルが上がる可能性がある。
華怜さんを見ると、かなり困った表情を浮かべている。
さて……、どうするべきか。
「一度、逃げましょうか」
「えっ?」
◇
今は筏に乗って、対岸まで移動している。
推進力は、華怜さんの風魔法だ。
スマホを見るけど、着信はなかった。
このところ、送金額を見る余裕がなかったので確認すると、先月の平均額より多めの金額が、毎日送られていた。
華怜さんと出会ってからの評価は高いみたいだ。
「この後どうするつもりですか?」
顔を上げて、華怜さんを見る。
「リッチキングが、要塞から出て来るか否かで、対応が変わります。出てくるのであれば、この池の水を利用して弱体化を図るつもりでいます。籠城されたり、要塞を修復するのであれば、また壊しに行くだけですね」
「……
「俺の攻撃は、本来打撃武器による内部破壊ですよ? 魔法は適当に属性を決めてしまったので、あくまでも補助です。まあ、リッチキングを見てから、考えます」
「……翔斗さんは、脳筋なところがありますよね」
「華怜さんがいれば、逃げることは可能でしょう? 相手の得意不得意分野を見分けて、対策を考えるだけですよ」
「……即死しないことが前提での、考え方ですよね」
即死攻撃もあると言っているのか?
そんな話をしていると、対岸に着いた。俺が異世界転移した場所だ。
「翔斗さん。一応先に渡しておきます」
そう言って、華怜さんが魔石を差し出して来た。
「これは……、なんですか? 白い魔石?」
「光属性が宿った魔石になります。使えば、リッチキングは逃げるでしょう」
ほう? そんな魔石もあるのか。
「属性が宿った魔石ですか……。便利な物があるのですね」
「翔斗さんも、色が付いた魔石を取得したはずです。知らなかっただけですよ?」
そういえばそうか。今まで、千個くらい魔石を拾っているけど、色違いの魔石もあった。
でも、白い魔石は見たことなかったな。
魔石に魔力を送ってみる。眩しい光が俺を包んだ。
クレスの街の周辺は、闇属性の魔物が多いのだと推測される。その対策として、光属性なんだろう。
でも、これは保険だな。一応、何時でも発動できるように、服のポケットに入れておく。
「それでは、俺は休ませて貰います。日暮れ前に起こしてください」
「……分かりました。私は、防衛の準備をしておきます」
◇
まどろみの中で考える。リッチキングは、闇属性と雷属性を持っているみたいだ。
池に落とすのが、戦術として最上のはずだ。
水属性の魔石とかあれば、使えたかもしれないけど、俺は雷魔法を使えなくなる可能性がある……。
そして、俺が倒さなければならないという理由……。
相性の悪い相手という情報。
俺の代名詞になっているんだろうけど、メインで使うには扱い辛いのが本音だ。
もう一手、なにか欲しい……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます