第81話 リッチキング1

 目が覚めた。どうやら寝ていたようだ。

 上体を起こして確認する。

 今は結界術の中にいる。それはいい。

 回らない頭を働かせる。


「確か昨晩は、雷鎚トールハンマーを撃てるだけ撃って、マナポーションを飲んだんだよな……。その後、アンデット共が帰って行ったのは覚えている。その後、何もないので座って……、寝てしまったのか?」


「あ! 起きましたね!」


 華怜さんが、少し離れた場所にいた。

 俺達が防衛拠点とした領域から少し離れている場所だ。


「戦利品を回収してくれていたのですか?」


「はい! 今日も大量です!」


 空を見上げると、朝日が昇っていた。


『らしくないな。華怜さんがいるとはいえ、こんな危険な場所で油断して眠ってしまうなど……』


 以前の俺であれば、絶対にありえない行動だった。

 雷鎚トールハンマーにしてもそうだ。魔力切れ寸前まで撃つなどしなかっただろう。

 油断。慢心。気の緩み……。

 父親に空手や柔道を習っていた時に散々に指摘されたことだ。


「気を引き締めないとな……。死んでからでは不満も言えない」


 俺は、立ち上がって、華怜さんの元に向かった。


「すごいです。中級の魔石が一万個を超えました。王都で売り払えば、一生遊んで暮らせますよ!」


 ここが、俺と華怜さんの違いだ。目的を忘れていそうだな。


「……魔剣はなかったのですよね?」


 ここで、華怜さんが頬を膨らませる。

 俺は、この世界の金には興味がないのだけど……。

 少し怒らせてしまったかな?

 だけど、大金持ちになっても、共感はできなんだよな。俺の最終的な目的を達成するのであれば、持ち帰れないのだから。


「もちろん、目的の魔剣はありませんでした。でも、将校が使用していたと思われる武器防具が手に入りました。銀の認識票もです。間違いなく、この先に目的の魔剣があります」


 思案する……。


「リッチキングは、華怜さんと神様の会話も聞いていると思いますか?」


「う~ん。断片的に聞かれていると思います。そうでないと、初日にあれだけの数の襲撃はないはずなので」


 急いだ方が良さそうだな。



「ステータス」


-----------------------------------------------------------------------

名前:ショート・シンドウ

職業:魔導闘士

レベル:516

HP:300

MP:1501(+1000)

STR(筋力):200

DEX(器用さ):160

VIT(防御力):260

AGI(速度):781(+580)

INT(知力):1336(+1000)

スキル:スマホ所持、結界術、生命置換、空間障壁、

    身体強化、隠密、鑑定阻害、警報

ユニークスキル:裏当て、雷鎚トールハンマー

魔法:雷、回復

称号:異世界転移者、大物食いジャイアントキリング

スキルポイント:0(-2580)

-----------------------------------------------------------------------



 俺は、MPとAGI、INTにステータスポイントを割り振った。

 華怜さんは、驚いている。


「相談した方が、良かったですか?」


「いえ……。他人のステータスを見るのは、基本マナー違反なので」


 華怜さんは、〈スキル:鑑定〉があっても見ないんだな。

 いや、〈鑑定阻害〉を取っていた。見れないはずだ。


「それじゃ行きましょうか」


「えっ? 何処へですか?」


「リッチキングの要塞です」





 華怜さんに連れられて、森を南の方向に進んだ。

 距離にして、2キロメートルといったところかな。

 警戒しつつ進み、多少の襲撃があったけど、問題なく辿り着けた。


「それで、何をするのですか?」


「もちろん襲撃ですよ。いや逆襲になるのかな? 反撃? まあ、いつも襲われていたのでやり返すだけです」


 空を見る。運がいいかもしれない。今日は曇り空で、この後は雨が降りそうな天気だ。

 俺は特大の魔力をハンマーに纏わせた。


雷鎚トールハンマー!」


 俺は、ハンマーで地面を叩いた。

 雷魔法が、地面を進んで行く。

 そして、要塞の一番高い塔に雷が発生した。

 轟音と共に要塞が崩れいて行く。


「ちょっと!? 翔斗さん?」


雷鎚トールハンマー!」


 間髪入れずに次を撃つ。

 狙いがズレたのか、一発目とは違う所に雷が発生した。

 続けて、3・4発目も放つ。


「翔斗さん! ちょっと待って!」


 華怜さんを見る。驚愕の表情だ。


「……。……。」


 華怜さんが何か言っているけど、要塞が崩れる音で聞き取れない。

 ここで、アンデット共が出て来た。

 だけど、陽の光に当たるとダメージを受けるみたいだ。

 苦しそうに歩いている。

 動きが遅い。あれならば、楽に討伐できそうだ。また、晴れの日ならば、消滅するのかもしれないな。

 だけど、ここで華怜さんが俺を担いで後退してしまった。


 華怜さんは、森を全速力で疾走している。危険と判断したみたいだ。

 問題があったかな? だけど、事前に相談してリッチキングに情報が漏れるのは避けたかった。

 まあ今晩、要塞を壊されたリッチキングが、どう出るか楽しみだな。

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