第80話 拠点2

 拠点を築いてから、数日が経過した。

 俺は、ハンマーで地面を叩く。

 雷魔法が地面を伝わって行き、10メートル先で地面が爆発した。

 それに巻き込まれて、アンデット共が粉々に吹き飛んで行く。


「大分使いこなせるようになりましたね」


 華怜さんが笑顔で語りかけて来た。


「まだ距離が短いのと、爆発地点が曖昧です。

 使えなくはないのですが、もう少し熟練度を稼ぎたいですね」


 必死に迎撃を行っていたら、いつの間にか〈雷蛇〉が使えるようになっていた。

 魔法と裏当ての融合と言ったところだろう。

 これを見たアンデット共も対応を変えて来た。

 初期は、俺のハンマーより長いリーチの槍で押し寄せて来たけど、今は弓矢と投石た。

 魔法を撃ってくる個体もいる。大きい帽子とローブを着ている。あれがリッチになると思う。

 まあ、前哨戦と言ったところかな。


 近寄って来ないので、俺は〈雷蛇〉を連発していた。防御面は、華怜さんに任せている。

 矢の一本も俺には飛んで来ない。安心して攻撃に専念できる。


「あっ!」


 華怜さんが、何かに反応した。

 その方向を見る。


「……銃? いや、ライフルか?」


 グールっぽいのが、銃口を向けていた。

 反射で、〈空間障壁〉を展開する。


 ──パン、キン


 本当に弾丸が飛んで来た。〈空間障壁〉で弾いてはいるけど。

 火薬とかどうなっているんだ? いや、薬莢を捨てている。

 考える暇もなく、グールが弾を再装填した。

 まずいな、俺の雷蛇の射程外だ。防御するしかない。

 だけど、二発目は来なかった。銃が暴発したのだ。

 グールは、上半身を自ら吹き飛ばして倒れた。


「華怜さん。あの個体はなんですか?」


「転移転生者の成れの果てですね……」


 予想通りの回答が来た。

 まずいな……。迫撃砲とか野戦砲とか持ち込まれると、対応できるとは思えない。

 ここで、矢の雨が酷くなって来た。

 一度、結界術内に避難する。


「……これ、数は減っていますか? 毎日数百体は倒していそうですけど」


「リッチキングが、余らせていた魔力を使い始めましたね。

 でも、ここまで迎撃できていると、要塞は手薄になっているはずです。もう数日頑張りましょう」


 情報があるのは助かるな。

 前を向く。


「やってみるか」


 俺は、特大の魔力をハンマーに纏わせて、目の前の地面を叩いた。


雷鎚トールハンマー!」


 衝撃と雷魔法が地面を伝わって行く。そして、アンデットの集団の中心で雷が発生した。

 大轟音と激しい光……。

 雷が天空へ向けて落ちて行ったのだ。


「すごいです! 今ので1/10くらい倒せましたよ!」


 華怜さんが称賛して来た。

 これが完成形なんだろうな。飛翔生物には、対応できるか分からないけど。裏当ては、届かなくても雷の放電に巻き込めれば、あるいはダメージをあたえられるかもしれないな。

 そのためにも、練度を上げて行きたい。


「まだ、制御が完璧ではないです。落雷が発生する場所もコントロールできないし。

 でも、射程距離が伸びれば、防衛線には向いていますね」


 ここで華怜さんが、ポーションを出して来た。


「上級のマナポーションです。大量に持って来たので使ってください」


「ありがとうございます。でも雑魚戦で使うのは、もったいなくないですか?」


 とりあえず、受け取るが、飲むのを躊躇ってしまう。


「……そうですか? まあ、判断は任せます」


 さて、練習も兼ねて撃ってみるか。

 前を向くと、アンデット共が怯んでいた。矢も止まっている。

 こいつらにも知能があるのか? まあいい。調べる気もないし、やることは変わらない。


 俺は再度、雷鎚トールハンマーを放った。





「今のところ、連続して打てるのは7発ですね。それ以上は、魔力欠乏症になりそうです」


 MPにスキルポイントを全部振ったので、撃てる数が増えた。

 考えを改めて、今撃てる数を確認することにしたのだ。

 俺は、貰ったマナポーションを飲んでみる。かなり楽になった感じだ。

 華怜さんが持って来たマナポーションは、かなりの高品質みたいだ。

 クラウディア様に頂いたマナポーションもあるけど、色が違う。


「指揮官級を倒してしまったみたいですね。

 アンデットは、次の命令を待っているみたいです」


 指揮官がいたのか。それならば、アンデット共の統制の取れた動きにも納得が行く。

 アンデット共を見ると、うろうろとしているだけだ。

 もう俺達に向かっては来ない。遠くから、俺達を監視している感じだ。

 だけど、陣地を出ての迎撃はしたくないな。不意打ちを喰らいそうだ。


 ここで、アンデットに動きがあった。後退し始めたんだ。


「まだ夜が明けていませんが、なにが起きたのですか?」


「……リッチキングの指示ですね。私達を倒すのは困難と判断したのでしょう。

 今日はもう襲撃はなさそうですが、明日からが怖いですね」


 明日から……、か。

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