第79話 拠点1

「さて、これからのことを教えてください」


 今は、焚火を囲んでいる。

 キャンプの準備ができた。夜間迎撃用の陣地構築も簡単だけど終わった。

 華怜さんに質問してみる。

 とりあえず、目的地には着いたのだけど、ここからが本番なんだ。


「う~ん。神様としては、ここからは翔斗さん次第だそうです」


「はい?」


 どういうことだ? 華怜さんの役目は、ここまで俺を連れて来る?


 ──ピロン


 スマホが鳴った。華怜さんを見るけど、動かない。

 メールを開く……。


『ここまでは、華怜に案内させました。でもここからは考えてください。神様より』


 イラ……。

 握り潰さない程度に、スマホを強く握ってしまった。

 ここまで来させておいて、最も重要なところを俺に考えろと?

 いや、落ち着こう……。

 感情的になって失敗するのは愚かだ。過去を思い出せ、……俺。


 大きくため息を吐いて、状況を整理する。

 目的となる敵は、リッチキング。ただし、倒さなくても良い。

 魔剣を持っており、強奪すればそれで終わりだ。

 それと、リッチキングは、籠城しているとの情報もある。アンデットを生みだしているとも。

 いくら華怜さんが強く一騎当千といっても、攻城戦は無理がある。

 最低、4人くらいいないと、囲まれて終わりだと思う。

 それに、俺のレベルはまだ低い。ステータスの割り振りも決まっていない。


「……俺のレベル上げが最優先だよな」


 独り言が出た。

 華怜さんレベルまで行かなくても、リッチキングの周囲を固めている側近級を引き付けるくらいはしたい。

 そこが最低条件だろう。

 そうすれば、攻め込むことも可能となるはずだ。


 それと、〈雷蛇〉だ。

 今だに覚えられないけど、早めの習得が望ましい。

 俺に必要な技術なのだと思われる。

 今は、近接戦闘のみだけど、中距離攻撃を覚えただけで応用の幅はかなり広がると思う。


 後は、技能石か……。

 華怜さんに回収を任せている。

 有用な物の取得が望ましい。

 クレスの街に着く前は、中身も分からずに取得して、利用方法を考える必要性に迫られた。


「うん……。ここで陣地を築いてレベル上げしましょう」


 華怜さんに提案してみた。


「分かりました。そうですね、レベル500台を目標にしてください」


 レベル500か。それ以上は上がらないんだろうな。

 今のレベルは、214だ。

 まだ、上りが悪いとは感じない。

 十日程度ここで迎撃すれば、それくらいまで上がると思う。


 こうして、最初の方針が決まった。

 リッチキングと対峙するのは、まだ先ということだけだけど。


 華怜さんには、筏を作って貰うことにした。

 この池……というか湖には、魔物は生息していないんだそうだ。

 森に視界を遮られて、大きさを見誤っていたのだけど、かなりの面積を誇っている。

 多分だけど、琵琶湖くらいはありそうだ。

 なので、帰りは筏でショートカットしたい。

 また、対応できない魔物が出てきた場合の逃走用でもある。前に出会った、兎とかだ。

 俺は、灯り用の焚火を用意する。それと、途中で回収した壊れた武器を散乱させておく。

 遺跡の残っている城壁を使い、一方方向からしか入って来れない陣地も構築した。

 すき間は、華怜さんが土魔法で埋めてくれている。

 弓矢などの遠隔攻撃は怖いけど、防御面に関しては魔法で対応かな……。


 できる限りの準備が整った。

 こうして、新しい拠点での初の夜を迎える。





「……凄い数ですね」


 この遺跡の平地をアンデットが、埋め尽くしていた。


「初手から、大群を送り込んで来ましたね。中ボスもいると思ってください」


 俺はとにかくハンマーを振るった。

 陣地を築いたので、なんとか迎撃はできているけど、これは予想外だった。

 それと、アンデット共の動きも桁違いだ。

 異世界転移した場所では、動きが遅かったけど、目の前のスケルトンはかなり素早い。対策されている?

 それと、獲物が槍に変わっている。俺のハンマーよりリーチが長い。

 初日に、この槍兵に囲まれたら終わっていただろう。

 数合の打ち合いの後に、折れた剣を踏んでくれたので、スケルトンのバランスが崩れた。

 その隙を見逃さずに、ハンマーで頭蓋骨を粉砕する。

 だけど、スケルトンはまだ立っている。もう一撃入れてスケルトンを粉々にした。


 その次は、リビングアーマーだ。また槍を持っている。西洋のランスになるのかな?

 とにかくやり辛い。

 現時点で、俺の優位性は失われていた。

 対策を立てられていると考えた方がいいかもしれないな。


 一歩下がる。


「華怜さん。この数の連戦は無理です。

 足止めをお願いします。相手の武器を無効化できれば、一撃で屠れるので」


「分かりました」


 別々に戦っていた、華怜さんが戻って来て魔法を放つ。属性は、土・雷・風・闇みたいだ。

 リビングアーマーが、拘束された。

 俺はハンマーを振り下ろして、リビングアーマーの頭から胴体までを粉砕した。


 厳しい防衛戦になりそうだけど、パワーレベリングは可能かもしれない。

 死ななければ、だが……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る