第77話 さらに進行1

 とりあえず、池の南側に移動することにした。

 華怜さんが言うには、西側を回った方がいいんだそうだ。

 情報がないので、俺に反対意見はない。

 だけど、正直大きな池だ。

 対岸は見えるけど、全周は何キロメートルあるのかも分からない。池と呼んでいたけど、もしかしたら湖と呼んだ方がいいかもしれないな。

 感覚では、徒歩で数日はかかりそうな気がする。

 暇だし聞いてみるか。


「華怜さん。あの遺跡は何時頃作られたか分かりますか?」


「え? ……200年前くらいですね。 人族以外が建てました。名前は……、"聖光神殿”になるのかな」


 人族以外ね……。それが、南に住んでいる種族なのかな。


「池の水が毒になる魔物がいる理由は、分かりますか?」


「闇属性の有無ですね。

 持っている魔物だと、基本恐れて近づきません。

 それと、私は闇魔法を取っているので、ちょっとだけ毒になります」


 さっき、遊泳しようとしなかった?

 いや、泳げないとか言わなかったかな……。

 余計な思考が横切ったけど、話を進めよう。


「リッチキングでしたっけ? 池の水は効きますよね?」


「アンデット系には、基本効きます。

 知能のある個体であれば、近寄ろうともしません」


「兎の魔物は?」


「あの魔物は無属性です。効きません。

 でも、泳げないので溺れるかもしれません。池の中心まで放り投げれば、溺れるかもしれませんね。

 でもそれだと、経験値にならないんですよね……。 翔斗さんは、まだレベルが低いし、正攻法で倒して欲しいと言うのもあります」


 覚えておこうか。

 それと、あの兎と正面からやり合う気はないですよ?


 その後、色々と情報を貰いながら、移動することにした。





 そろそろ、日が暮れる。 野営の準備をしなければならない。

 まず焚火を作って視界を確保するために、俺は薪になる枯れ枝を集めた。

 まだ手を付けていない水筒は、華怜さんに渡しておく。

 それと、華怜さんの食事だ。

 やはり一日三食、食べたいとのこと。

 我慢してくれていたんだな。今のうちに、食事を摂って貰う。


 本当であれば、迎撃の準備として地面にトラップを仕掛けておきたかったけど、資材がなかった。

 しょうがないので、幹の太い倒木を二本持って来て、防ラインの印とした 最後に結界術を発動させておく。


「ごちそうさまでした」


 華怜さんの食事が終わったようだ。


「注意点とかありますか? もしくは、不備などあれば、教えてください」


「この辺は、オーガが掃除してくれているので比較的安全です。

 東側だと、アンデットと兎が出ますね。今の翔斗さんでは危ないかもしれません」


「ステータスの割り振りが、悪いと思いますか?」


「う~ん。パーティーを組んで、魔法攻撃力特化で伸ばして欲しいとは思います。

 でも、やはり防御面で不安がありますね……」


「……池の南側でキャンプ地ができ上がったら考えます」


「普通の人は、即座に割り振るものですよ?

 まあ、それで失敗して死亡する人も多いのですけどね。

 余りにも平均的に上げ過ぎて、ユニークスキルが発現しない人も出ています」


「俺は慎重すぎるのかな?」


「生き抜いているし、今は余裕があるので悪いとは思いません。

 でもそうですね。雷魔法の遠隔攻撃を早目に覚えて欲しいかな」


「魔法が地面を伝って行く技術ですね。技の名前とかありますか?」


「技なんてほどのものじゃないですよ? でもそうですね……、雷蛇らいじゃとか言う人もいました」


 基本的な技術なのか。


 ──ピク


 ここで、俺の〈スキル:警報〉に反応があった。

 そちらを向く。


「……ナメクジか。初っ端から嫌なのが出て来たな」


 少しだけ、ハンマーに魔力を纏わせてナメクジに一撃を見舞わせた。

 裏当てがナメクジの体の中心を襲う。そうすると、ナメクジが弾け飛んだ。


「あれ?」


 ナメクジが塵になり、魔石が残る。


「うふふ。一ヵ月前とは大分違うみたいですね?」


 そうか、俺は強くなっているんだな。


「今日は俺が攻撃を担当しますね。補助をお願いします」


「分かりました」


 さて、レベル上げと行こうか。

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