第69話 進行2

 徹夜で魔物の迎撃を行ったけど、そのまま森を疾走する。

 この森は、陽が出ていると魔物の襲撃が少ない。

 俺達は、今までのタイムスケジュールを変えて強行突破することにした。


 華怜さんが先行して、魔物の排除を行ってくれている。

 今のところ、俺は走るだけだ。

 華怜さんは、まるで道を知っているかのように森を疾走している。

 この辺も神託者と関係があるのかな……。


 ここで、華怜さんが立ち止まった。

 俺もその場に止まる。


「なにかありました?」


「……技能石が落ちていますね」


 地面を見る。しかし、森の中の地面に落ちた石をどうやって見分けるのかな?


「俺には見えません。回収するんですか?」


「まず確認です。翔斗さんが倒した魔物ですよね?」


「道が合っているのであれば、俺が倒したんだと思います。

 大きな袋三個分の魔石をソリで曳いて、この森を抜けました。

 取りこぼしも多かったと思います」


 華怜さんが、数歩進んで何かを拾った。

 それを見る。確かに技能石だ。


「良く見えますね」


「〈スキル:鑑定〉と〈スキル:暗視〉の組み合わせです。

 クレスの街に帰ったら、翔斗さんも少しスキルを増やしましょうね」


 いや……、技能石を分けて欲しいと言ったら、『焦りすぎ』と言われたのだけど。

 その後、ギルドで自費購入もしましたよ?

 突っ込みたいが、置いておこう。


「何の技能石か分かりますか?」


「……〈スキル:結界術〉ですね」


「多分ですが、リビングアーマーかな? 動く鎧が落とすのだと思います。

 鎧を砕いた時に、中身に魔力の塊が見えました。

 俺は、雷魔法と組み合わせて異なる使い方をしていますけどね」


「……なるほど。闇魔法と組み合わせると、色々と便利なのですよね」


「使うのですか?」


「いえ……、持ち帰りましょう」


 華怜さんは、何かを考えている。


「この地に何かありますか? 技能石を集めるのであれば、手伝います」


「……ざっと見た感じでは、ここには私達に有用な物はなさそうです。先を急ぎましょう」


 そう言うと、華怜さんが走り出してしまった。

 俺はその後を付いて行く。

 走りながら、先ほどの華怜さんの言動の意味を考える。


『多分だけど、華怜さんは何かしらの技能石を求めているんだろうな。それが、今回の華怜さんの目的になる』


 ここで思ってしまう。"任意の魔法が取得できる技能石"だ。

 華怜さんが俺に同行するのには、あの技能石を求めている可能性……。





「あ、見えました」


 雑魚を屠りながら、華怜さんが呟いた。

 ちなみに雑魚は、デカい蛇です。俺は近づかない。

 蛇の魔物は、首を切られても動いていた。頭のない胴体もビクンビクンと動いている。

 俺は、遠巻きにその場をスルーした。


 蛇の魔物が塵となり、技能石と何かしらのドロップアイテムが残っている。

 それを華怜さんが回収した。


「これも違うな……」


 華怜さんが、ポツリと呟いた。


「何かの技能石を求めているのですか?」


 とりあえず聞いてみる。


「未確認の技能石があるみたいなんですが、明確ではないのです。

 希望としては、"転移系"が手に入ればいいかなと思っています。

 まあ、〈スキル:鑑定〉で分からない物があれば、それを持ち帰りたいというのが本音ですね」


 転移系? それが目的か……。俺の知識にはない魔物が落とすんだな。


「華怜さんにも目的があったのですね」


「魔剣の回収が第一ですが、クラウディア様にもう一つくらい功績を上げて貰いたくて。

 まあ、手に入ればいいかな程度で」


 クラウディア様の功績? 俺の知らないところで何かが動いているみたいだ。

 まあ、俺はクラウディア様の陣営には参加していない。知らなくてもいいだろう。


「とりあえず、もうすぐ陽も暮れますし、塹壕跡まで行きましょう」


「そうですね。蛇のお肉も手に入ったし、また焼いてください。魔物の肉の中では美味しい部類に入りますよ」


 嬉しそうな、華怜さん。

 今日は、蛇を焼いて食べるのか……。

 いや、ウナギみたいに調理して外見だけでも工夫してごまかそう。

 そんなこんなで、塹壕跡まで辿り着いた。

 もう、24時間動いていることになる。とりあえず、食べて休もうか。

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